海外ドラマ・スラッシュ グ/リ/ム
.。. .。.:*・゜・*:月夜の秘密
注※この話はニックが記憶喪失のジュリエットと別居してから
モンローの家に居候の設定を長引かせています
作品台詞モチーフ:Season2 #16 #20
2
昨夜
ニック 「モンロー? ちょっといいか?」
モンロー「ニック? どうしたんだ? もう、寝たんじゃないのか?」
ニック 「ああ、そうなんだけど。……こんな時間まで何をしてるんだ?」
モンロー「おれか? ええと、そうだな。シャツを、畳んでる」
ニック 「シャツを? そういえば、おれの靴下を……知らないかな」
モンロー「……これか?」
ニック 「そう、それだ! 良かった。片方が無くて、探してたんだ。どこにあった?」
モンロー「おれの洗濯物の中に、紛れ込んでたよ。前にもこんなこと、あったよな。
いつの間にか、おれはおまえの、靴下管理係だ」
ニック 「だな。すまない。あれから気をつけてたのに、どこで混ざったのかな」
モンロー「しょうがないさ。一緒に住んでるんだから、洗濯物だって混ざるさ。
まぁ、パンツじゃなくて良かったってとこだよな。そんなことをいちいち気にするな」
ニック 「なぁ、モンロー」
モンロー「なんだ? まだ何か紛れてるものがあるのか? 次は何の管理係だ?」
ニック 「おれがいつまでも居候していて、迷惑じゃないかな」
モンロー「いいや? ぜんぜん? 迷惑なもんか。毎日、おれは楽しいぞ。
そうだな、例えば一緒に朝食を食べて、ニックの淹れてくれたコーヒーを飲んで、
夕食を食べ、食後の団らん……は、そんなにはないけど。あとは寝るまで語り合う。
だって、おれたちは、その、友達……だからな」
ニック 「友達なのか?」
モンロー「えっ、いや、友達、だった、のかな? 去年のクリスマスまでは……」
ニック 「クリスマスの朝は、もう、ただの友達じゃなかったはずだよな」
モンロー「はははは早いもんだよな!! もうじき、ハロウィンだからな!!」
ニック 「モンロー。今更だけど、本当は、あの時のことを、後悔してるのか?」
モンロー「えッ?! どの時のこと? どのことか、解らないよな、だって、
あれからもう一年近いからな! だって、この一年、何にもないんだからな!!
ニック、おまえはすごく傷ついていたんだ、それで、なんたってXmasで、ムードもあったし、
おれも、ちょっと、調子に乗るようなことを云ったし、だから―――」
ニック 「だからただの……過ちだった。そういうことか?
あのクリスマスに起こったことは、感傷で流された、過ちだったと、思うんだな?」
モンロー「だって、あれから何もないんだ。ニック。何もない。何もなかったように、何もない。
いくら鈍いおれでも、ああ、あれは間違ったんだなって、思うよな?」
ニック 「それはモンローが、この一年近く、何もしかけて来なかったからだ。
……いや、違うな。おまえだけじゃないよな。おれだって、そうだった。
お互いに忙しかったし、二人の時間を、意識的に避けてたこともあった。
ジュリエットのことも、おれはやっぱり気がかりだし……」
モンロー「そうだよな。おまえには、ジュリエットがいるんだ。今はすっかり忘れてるとはいえ、
いずれ彼女の記憶が戻ったら、おまえのことをまた昔みたいに愛してくれるはずだ。
そのために、みんなで努力してるしな。おまえもジュリエットをやっぱり、愛してる。
なのにもし記憶が戻った時にだ、おれが、おれがそんな奇怪な立場にいたら、みんなが困る」
ニック 「……だから、あれは無かったことにするってことなのか」
モンロー「その方が、お互いの為だよな? そうだろ? 大人の結論だ。事故だ。
ちょっとした、Xmasムードのロマンチックな事故だと思えばいい。
いや、ロマンチックはマズイかな。でも、良くあることだ。そんなには、ないけどな」
ニック 「分かった。そうだな。きっとその方がお互いに良いってことだな。
この一年、そうして暮らせたんだし、おれたちは、まだ友達のままだ」
モンロー「そうさ、友達だ。このまま、親友だよな、ニック」
ニック 「ああ。親友だ。大丈夫だ。それでいこう。
ところで、そのシャツの山は、いったいどうするんだ?
これから畳む洗濯物なのか? 大変そうだが、手伝おうか?」
モンロー「いや、これは違うんだ。実はニックに合うシャツが確かあったよなーと思って、
探してたんだ。古いものだけど、お祖母ちゃんが大人になったら着てねって、
昔に買ってくれたやつで、でも大きくなったおれには、ちょっと、……合わなかった」
ニック 「デザインが?」
モンロー「そう、デザイン。と、……サイズが、な」
ニック 「ああ、なるほど」
モンロー「ニックなら、おれよりはまだ細いからな、きっと入るんじゃないかと思って、
思い出して、古い箱をいくつも引っかき回して、探してたんだよ」
ニック 「そうか。ありがとう。じゃ、おれも探すよ。気に入るやつを、探せばいい?」
モンロー「いや、基本的には、おれのシャツだからな。もしも気に入っても、
それがお祖母ちゃんのくれたシャツだとは限らないぞ。どうしてもって云うなら、考えるがな」
ニック 「これじゃないか? この変な模様のヤツ」
モンロー「その変な模様のシャツは、おれのお気に入りのやつだ」
ニック 「あ、そうなのか。ごめん」
☆☆☆
モンロー「ふう。なかなか見つからないな。やっぱ、捨てちまったのかな。悪いな、夜中に巻き込んで」
ニック 「いいよ。そうだ、今更だけど、どんなシャツなんだ? まだ訊いてなかった」
モンロー「そうだったか? からし色の……、お月さんみたいな、シャツだよ。
ちょうど今頃、10月の月がきれいに見えるこの季節によく似合う、ネルのシャツだ。
今日の満月は、あいにくの曇り月夜だけどな。残念だ」
ニック 「ネルか。着心地は良さそうだ。でもからし色のシャツは、どこにもなさそうだよな……。
ところで、からし色のシャツっておれに似合うのか?」
モンロー「似合わないか? そうかな」
ニック 「どうだろう。自分で買ったことはないけど。どっちかといえば、おまえの方が似合いそうだけど。
モンロー「おれに? そうかな。もしかしたら、記憶違いでちょっと色のイメージが違うのかもしれない。
きっと、おまえの方が似合うイメージなんだ」
ニック 「そうか。そんなにおまえが言うなら、きっと似合うだろうな。
おれのことは、おまえが一番知ってるからな」
モンロー「ああ、多分、ニックには、すごく似合うと思うんだけどな」
ニック 「これは、どう? このシャツはネルだ……でも深い緑だ。モンローの、匂いがするな……」
モンロー「えっ。そりゃそうだろうな。ここにあるのは、全部、おれのシャツだからな」
ニック 「うん。そうだな。この匂いに囲まれてると、安心するよ、なんだか」
モンロー「そうなのか? ニックおまえ、ペットに犬を飼ってたんじゃないのか?
ブルットバッドの匂いは、狼や犬にちょっと似てるかも……。ちょっとだけどな」
ニック 「犬の匂いじゃないよ。モンローの匂いだよ……。なんだか懐かしいな。
なぁ、モンロー、本当にこのまま、何もないままでいいのか? おれたち……」
モンロー「な、何もないままって?」
ニック 「かれこれ一緒に暮らしだして、一年経つけど、あのクリスマスの朝に起こったことを、
無かったことにして、それでお互いいいのかってことだよ」
モンロー「ああ、ニック。ニック……。どうして、おまえはそんなことを云いだすんだ?」
ニック 「どうしてって、いいのかなって思ったからだけど?」
モンロー「今さら、混ぜ返すなよ。その話はさっき終わったんだ!
頼むよ、ニック、……おれは我慢してるんだ。なのに……畜生ッ!」
ニック 「我慢してる? どうしてだ」
モンロー「どうして? いい加減にしてくれ。忘れられる筈がない! はずがないんだよ、ニック!」
ニック 「モンロー? 急にどうしたんだ、落ち着けよ」
モンロー「もう落ち着けるかよ! この、天然グリムめッ!! いや、おまえはサドグリムだ!
そんなにヴェッセン苛めが愉しいか!? 遺伝子なのか? グリムは歴代ドSだよな?
そうだよ、去年、クリスマスの前日に、ナニしたよな、おれたち? そうだったよな?」
ニック 「……ああ、そうだよ。忘れてたわけじゃ、無かったんだな」
モンロー「この際、もう赤裸々に言うけどな、その、人間のアレが、ナニが、……睾丸のタマタマが、
ヴェッセンにそんなに効くとは、あれほどとは、思ってなかったんだ!!」
ニック 「えっ?」
モンロー「ただの噂だと思ってた。干して粉末にしたモノでも凄いって話だ。それの生だからな。
生きたままの睾丸だ。新鮮な精巣だ。生のタマタマだったからなのか、凄かった……。
舐めてしゃぶっただけで、あれほどの効果が出るなんてな……!!」
ニック 「モンロー、ストップ。待ってくれ、ちょっと……それは、かなりキワドイ台詞だ」
モンロー「だって本当に凄かった。みんなが欲しがるわけだよ。殺し合ってでも、奪い合う代物だ。
あんなに凄いものだとは、思ってもいなかった……。麻薬以上だ。非常に危険なモノだ。
常用したら、正気を失う。あ、いや、おれには別に、人間のソレが効いたわけじゃないと思うがな?
元々がそんなもの必要ないし。まぁ、だけど、多少の補いくらい、にはなった感じ、かな?」
ニック 「……それ、どう解釈したらいいんだ? 正気じゃなかった?
忘れられないのは、人間の睾丸のせいで、すごくセックスが良かったからってことなのか?」
モンロー「そんなこと言ってない! おれはそんな、俗物じゃないぞ。
だいたいグリムのソレで、あの効果が得られたのかどうかは、解らないよな?」
ニック 「効果はあったんだろ? 今、恥ずかしげもなく、大層にそう語ったよな?
グリムのナニだからこそ、それだけ、おまえの言う効果があったのかもしれないよな」
モンロー「だったら、おまえは、どうだったんだ?」
ニック 「え、おれ? ……言うのか?」
モンロー「言えよ、言ってくれ。おまえのタマから得た、おれの百万倍の精力で、どうだったんだ?」
ニック 「分かったから、もうタマタマ云わないでくれよ。恥ずかしいだろ」
モンロー「すまん。でも良かったのか? 悪かったのか? 今更だけど教えてくれ、ニック」
ニック 「それは……」
モンロー「そ、それは?」
ニック 「良かったよ……。もちろん。おまえの目が尋常じゃなくて、
アソコを食いちぎられるんじゃないかって、ちょっとした恐怖もあったけど、
それを粉砕するくらいの、快楽の凄さは、あったよ。でも、だけど、それは」
モンロー「だけど、おれが凄く良かったのは、おまえが人間だからでも、グリムだからでもじゃない。
本当は、タマタマの威力なんかじゃない。いや、もちろん、その威力もあったかもしれないが。
だけど、ただ、それは、おまえがニックだったからだ、ニック。
おれには、ニックだから、そうだったんだ。わかるか? 分かってるか?」
ニック 「どういう意味だよ。わからない。はっきり言ってくれ」
モンロー「言えってか? わかった。言うぞ。言うけど、退くなよ?」
ニック 「退くならもう、とっくにタマタマで退いてる」
モンロー「それもそうだな。……つまりだ。なんだ。
おれは、相手がニックだったから、あんなに欲情したし、頑張ったんだよ。
おまえは? おまえは、どうだったのか知りたいんだ、ニック…… 答えてくれ、正直に」
ニック 「それは、おれだって、あんなに良かったのは、おまえがモンローだったからだよ。
分かってないのか、おれがこの一年、どんな気持ちでいたかをな」
モンロー「ニック……、本当か? その方向で、本当にいいのか? 後悔しないか?」
ニック 「モンロー、さっきから、おれの心臓が飛び出しそうな程、興奮してる。
ちょっと煽り過ぎだし、今夜はずっと胸がざわついて、仕方がなかったんだ……。
どうしても眠れなかった。それでおまえの部屋に来たら、おまえはシャツに夢中だ。
おれはいったい、どうすればいいんだ? って思うよな?」
モンロー「ちょっと待てよ、そりゃないだろ、ニック。
知ってるか? 今夜の月は、さっきも言ったが曇り月夜だ。
こんな月夜に胸がざわつくなんてのは、おれのセリフのはずだよな?
グリムも満月の夜にざわつくなんて、聴いたことないぞ。
いや、もしかしてそんな周期が、グリムにあるのか?」
ニック 「わからない。このざわつきに月が関係しているかなんて。だけど、モンロー、おれは」
モンロー「待てよ。言うなよ、ニック。月の夜、雄叫びが似合うのは、おれだ。
あと、言っておくけどシャツフェチでもないぞ。あのシャツはだな、お祖母ちゃんがおれの……」
ニック 「モンロー。分かってるよ、シャツの話はわかったから。なんだか喋りすぎじゃないか?」
モンロー「そうか。悪い。つまりだ、こんな妖しい月の光を浴びちゃ、もう誰もおれを止められない。
いや、別にタマタマ……いや、あの威力が欲しいから言ってるんじゃないからな?
それは解ってくれてるよな? そりゃ、少しはその力も借りると思うけど、
基本的には、おれにはそんなもの必要ないから、つまりだな……」
ニック 「ストップ。もう黙れよ。わかったよ。睾丸の話はもういいよ。色気があるとは思えない。
そんなに饒舌なのは、おれにその唇を閉じさせて欲しいからか?
だいたいがいつも、喋り過ぎなんだよ、おまえって」
モンロー「わかってる。だけど、その、なんだ、喋ってないと、どうにかなりそうなんだよ。
第一、奪うってフレーズも、おれのものだからな。そうさ、
月から逃げたウサギちゃんを、追いかけるのは、どこの世界も狼の役割に決まってるんだ」
ニック 「そうだな。野生だよな、おまえって。すごくワイルドだ……」
モンロー「なんだって? ブルットバットを舐めるなよ。野生だと?
そんなの野生、以上だ―――」
ニック 「モンロー、おまえってその気になるのに、すごく時間がかかり過ぎるよ。
そこがいいとこなんだけど……もう少し、早くならないか?」
モンロー「わかった。……努力する。さて、どれくらい早くする?」
ニック 「早くするのは、始める前だよ。始まったらもっと、ゆっくりでいいんだ。
わかるよな? じっくり、味わってくれ……。グリムの味をな」
モンロー「!! ニ、ニック―――」
photo/ako