Heat☆Wave


03
マックのマンション近隣
深夜近く

登場人物:リン/サワ




リ ン「うっわ!! サミィー!! 立春も過ぎたのに真冬かよ!! シャーベットになるわ!!
    う”〜〜。なんでこんなに寒い中、わざわざコンビニにビール買いに行けって、鬼かアイツは!!
    自分で行きゃいいだろ?! なんだっつーんだよ……。ナルセさまか。ナルセさまなのか?
    あ、ひょっとしてこれからレイジが来るから、俺を厄介払いしたのか?
    クソー、だったらぜったい死んでも戻ってやるからなッ!! 待ってろ、色ボケカップルめ!」

サ ワ「お前な、夜中にひとりごと云って怒鳴ってるって、ヤバイだろ」

リ ン「あ。うるさくしてすいませーん。僕、この上のマンションに住んでるクソ野郎ベース奏者の川野って云いまーす。
    おいらバカなんで、苦情はどんどん云ってきて下さーい。……って。え……サ、サワ!?」
サ ワ「何をマックに濡れ衣を押し付けてんだよ、リン。器がちっせぇな。爽やかドラマーが聞いて呆れるぜ」
リ ン「おおお、お、お前、なんだってこんなとこをうろついてるんだ?
    もしかしてまだマックを狙ってるのか?! いやいやダメだぜ、マックはもう上手く行ってんだから。
    いらんチョッカイをだすなよな。ややこしくなるだろ! シッシッ!!」
サ ワ「ちげーよ。マックはもういいんだよ。
    お前に、話があるんだよ。リン。……ちょっと、いいかよ?」
リ ン「俺に? いったい、なんだよ。悪いけど俺、ビールの買い出しを頼まれてんだ。ナルセ級のマックさんにな。
    コンビニまで歩きながらで良いなら聴くけど? けど、マックのとこには絶対連れて行かないからな!!」
サ ワ「だからしつけーな。違うって云ってるだろ」
リ ン「じゃあ、もうマックは本当に本気でマジで諦めたのか?」
サ ワ「そうだよ。もう全然、関係ねーよ。何回も云わせんなよ。寝ボケてんのか」

リ ン「あ、そっ。まぁ、サワさまは振られ慣れてないだろうからショックはショックだったろうけどな。
    でもどうせもう次のオトコはできたんだろ? 茅野さんともやっちゃったそうだしな。
    顏が良ければ誰でも落とせるんだなー。ホント、ないわー。あちこち食い漁るのも、いい加減にしとけよ」
サ ワ「軽蔑してるんなら、そういえよ? リンらしくねぇだろ」
リ ン「はぁ? 誰もンなこと言ってねーだろ。まったくお前って呆れるわーって云ってるだけじゃん」
サ ワ「あんなことされても懲りねぇバカだなって、つきあいきれねぇって思ってるんだろ」
リ ン「……それはいいだろ。あれは違うだろ。お前は被害者だ。いつまでも気にしてんなよ、バカ」
サ ワ「違わねェよな? いつまでも誰にでもケツ振ってるから、ああいう目に合うんだって、
    お前、実際、本当に思ってるんだろ? だからオレのこと、正面から見ないんだろ?!
    リン! オレの方、ちゃんと見ろよ! 目ぇみて、話してくれねぇのかよ!!」
リ ン「!」

サ ワ「……ちゃんと、オレのこと見て、罵倒するなら正面きって言って云ってくれよ……。
    オレにはもう見る価値も、ないのかよ?」

リ ン「サワ。俺に、触ったか?」

サ ワ「え? あ……、悪ィ。ちょっと思わず興奮して胸倉、掴んじまった。
    ……なんだよ。放したいんだけど。お前がオレの手首つかんでるからできねぇんだけど。
    殴ったりしねぇから、放せよ。ケンカしたいわけじゃない」
リ ン「うん。いいんだ。放さなくていい。久しぶりだよな。こんな感覚。この距離感。
    お前に胸倉掴まれるなんて、久しぶりだ」

サ ワ「あ……」

リ ン「お前、ずっとあれから長いこと、俺に触ってこなかっただろ。
    目も合わせないし、ぜんぜん腕にも肩にも触れてこないし、パンチも喰らわないし、ケツも蹴って来ないし、
    サワだけには今まで俺のプリケツも触らせてやってたのに……すごく寂しかったよネ」
サ ワ「いや、オレが痴漢みたいに言うなよ? お前のケツなんか触ってねぇし!
    ……リン。頼むから、離れてくれよ。今、この距離感で云う冗談じゃないだろ、それ」
リ ン「そうだよな。サワさまは俺なんか相手にしねぇよな?」
サ ワ「や、そうだけど、いや、そうじゃなくて、リン、ちょっと顏、近い……。ちょ、な、んだよ?
    胸倉つかんでデコくっつけるほどってお前はアメリカ人かよ。どんだけファイト持て余してんだよ?
    もしかして久々で感激しすぎて殴って欲しいのか、てめぇ……」

リ ン「うん。近い、な。サワが近い。ほっとするな。良かったよ。また二人で会えてさ。
    すごく久しぶりだから、ちょっとだけこうしてていいか?」
サ ワ「……はァ?! おかしいだろ、何血迷ってんだよ?!」
リ ン「サワの匂い、懐かしいわー。お前ってホント、良い匂いするなー。女の子みたいに良い匂いだ」
サ ワ「! お前の天然、時々、無性にハラタツな……。クソ……!
    オレ、女じゃねぇよ! 禁欲しすぎておかしくなったのか!? 間違えんなよ!!」

リ ン「そうだな。お前は、女の子じゃねぇよな。男だって知ってる。間違うはずがない。
    貌はキレイだけど男だよな。柔らかい胸もないし細見だけど筋肉だって、固いしな」
サ ワ「そうだよ。オレはしっかり男だよ。トランスジェンダーでも女寄りのゲイでもじゃなくて、誰が見ても男だよ。
    お前の毛嫌いしてる固いケツと、足の間には多分、お前のより立派なナニも生えてるさ」
リ ン「なんだと、見比べてたのか俺のと!? いやいや俺の方が絶対、でかい。いやどうだったかな……。
    お前のはホテルで手当したときに一応、見たけど、すっかり萎えてたしなぁ……」
サ ワ「ヤメロ。食いつくとこ違うっつーんだよ。サイズなんか今、どうでもいいだろが。張り合うなよ、中坊か」
リ ン「……あのな、俺さ。正直にいうけど、もうサワと、友達でいるのは無理だなと、思ってるんだよな……」
サ ワ「えっ」
リ ン「なんつーか、こういうこと、こんなタイミングで云うべきことじゃないけどな」

サ ワ「……つまり、もう金輪際、近寄るなってことかよ。そんなにオレが気持ち悪いのかよ?」
リ ン「うん。気持ち悪いんだ。どうも耐えられないレベルなんだ。良く考えた末の答えだよ。
    サワの友達として存在することが、もうしっくりこっくり来ねぇんだよな。そういうの、気持ちワルイ」
サ ワ「……そうかよ。わかった。気持ち悪いなら、とっとと離れてくれねぇかな?
    お前にあんなところを見られたのは、確かにオレにとっても相当、気持ち悪い屈辱なことだったよ」
リ ン「いや、そんなのは気にすんなよ。俺は気にしてねぇから。怪我がすっかり良くなって良かったよなー」
サ ワ「アァ?? じゃ、気持ち悪いって、なんだよ?!」
リ ン「サワと俺がこれからも、友達でいることだよ」
サ ワ「だから、オレがもうイヤなんだろ? 何を言ってんだよ?」

リ ン「バカ違うよ、イヤじゃねぇんだよ……、なんて云ったらいいかなぁ。違うんだって、サワ。
    俺、ゲイじゃないけどゲイの友達は何ら問題ないんだよ。それは分かるよな? 人の恋愛は自由だ。
    でも、そういう、なんつーの? 男同士で、ヤル行為とか? 生理的な理解が追いつかないんだよ。
    自分を当てはめられない。正直ちょっと難解だ。そういうの考えるだけで、フリーズ状態なんだ。今はさ」
サ ワ「だから何だよ。俺がゲイなのはいいんだろ? 何でわざわざ自分を当てはめるんだよ」
リ ン「もちろん、ぜんぜん構わねェよ? サワが男と寝るのは自由だけど、想像はちょっとしたくないかも」
サ ワ「これからも絶対、お前のケツに興味は湧かないから安心しろって云えばいいのか?」
リ ン「違うんだよ、サワとは、勿論、そういうことはしたくねぇと思ってるんだけど、ただ……。
    サワとはもう、友達以上の関係になりたい心境なんじゃないかと、思うんだよな、俺って」
サ ワ「意味がまったく不明だけど。頭の悪いオレがキレる前に、ちゃんと分かるように言えよな?
    レイジさんいわく、オレはバカらしいからな」
リ ン「いつもレイジは真実を見抜くよなぁ。だからさ……。
    友達以上、恋人未満、的な感じを希望してるって云ったらお前、キモイ? 怒る?」

サ ワ「! な、なに、言ってんだよ? 恋人未満て、何だよ。オレとお前が? どういう意味だ?」
リ ン「うん。でもここが大事なとこなんだけど、俺さ、正直、サワとえっちするのは、絶対に無理と思うんだわー。
    いや、お前が魅力ないんじゃなくて、俺側の生理的な問題でだよ? 相手はお前に限らずさ、
    なんつーか、どの男の裸体を前にしても、生殖機能的には、ぜったい無理かなっていう……」
サ ワ「イヤイヤ、オレ、お前とヤルなんて言ってねェし!!」
リ ン「いや解ってるよ。そうだよな。サワはなんだかんだ言っても、モテるしさ。
    俺なんかダメだよな。それにお前はセックス依存症だし……」
サ ワ「ハァ?! おいおい、人のこと勝手に依存症にするなって。オレはセックス依存症なんかじゃねーぞ!!」
リ ン「え、違うのか? ええー、てっきりそうかと……」
サ ワ「なんだよ、それ。オレが男ひっかえとっかえしてるのを、病気だって批判してんのか?」
リ ン「違うって。冷静に考えろよ。お前を批判できる立場でもないだろ俺。俺だって同じだったんだから」
サ ワ「だよな。人のこと言える品行じゃねぇよな? お前だって似たようなもんだろ、リン。相手が女だってだけだ。
    だた最近は……なんかこう、大人しくしてるらしいじゃねぇか? もうグルーピーとの火遊びはやめたのかよ?」
リ ン「俺、ファンの子と火遊びなんかしてねぇし。ただ一方的に振られまくってただけじゃん」
サ ワ「じゃ、誰か真剣で大事な、彼女でもついに出来たのかよ……」

リ ン「え。なんで? なんでそんな話になるんだ? さっきの俺の話、マジ聴いてなかった? 無視か?」
サ ワ「だって鏡夜さんと、誰かへのクリスマスプレゼント、買いに行ったんだろ?
    それとも鏡夜さんに、プレゼントしたのかよ? おまえ、鏡夜さんも一応、男だぜ?」
リ ン「ゲッ!? 何でそれを知ってるんだ?! 茅野さんには買い物につきあって貰っただけだよ!
    誰だよ、そんなこと言ったの?? あ、そうか、レイジか!! レイジが適当なこと言ったんだな?!」
サ ワ「違うよ。オレのファンの友達の子が、リンを見たんだ。ショップでアクセサリーを買ってたって」
リ ン「あー、そーか。そこを見られてたのか。そっか……。そうなのか。まいったな。
    これもこういうタイミングは、なんか違うような気もするけど、それが見たいなら、ホイ。
    ……これだよ。その茅野さんにつきあって貰って、購入したプレゼントってのは、さ」
サ ワ「え。なんで持ち歩いてるんだよ。クリスマスも終わったのに、その子に渡しそびれたのか?
    それともやっぱ振られたのか。あれ。これって、オレの好きなブランドじゃん……?」
リ ン「それ、サワに買ったんだ。サワに渡すための贈り物だ」
サ ワ「え……? オレに?」

リ ン「クリスマスのプレゼントにする筈だったけど、ずっと会えなかったからさ。
    結局、今まで渡しそびれちまってさ。機会があったら渡そうと思ってて、持ち歩いてた。
    なんかバレンタインデーも近いし、もう名目、むしろそっちでもいいよな」
サ ワ「バレンタイン?」
リ ン「うん。箱はちょっとくたびれたけど、中身は大丈夫だぜ?
    はーやーくー、サワさま、プレゼント開けてみて♪ 開けてみてー♪」

サ ワ「え、あ、ああ。いやお前はオレのファンかよ。でも、何で、オレに?」
リ ン「びっくりするものだから」
サ ワ「? ……あ!! これ、オレが数年前に何処かで失くした、完全限定品のブレスじゃん!!」
リ ン「じゃーん! サプラ〜〜〜イズ!!」
サ ワ「てめぇ、リン!! 犯人はお前だったのか?! 何が買っただよ、今さら返されたってなぁ〜!!」
リ ン「待って待って!! おーい、よく視ろ。人を泥棒扱いする前によく品物をじっくり視てくれ。
    それはお前の失くした古いものじゃなくて、新品だろ。そして似てるけど、ものは違うよ。
    あれに似たやつだって」
サ ワ「いや、これは限定品だよ。似たヤツじゃなくて本物だ。間違いない。
    ここ見ろ、この刻印、この年のそのシーズンのものしか入ってない刻印なんだ」

リ ン「……えええッ?! なんでッ?!」
サ ワ「お前がびっくりしてどうするんだよ? だけど確かにこれは新品だ。オレのじゃない。
    新品を普通のショップで買ったなんて、そんなのありえねェよ」
リ ン「でも本当に買ったんだって。ファンの子も俺をその店で見たんだろ?」
サ ワ「これってさ、この刻印の年だけの数量限定生産で、完全予約販売なんだ。超レアものだよ。
    ヴィンテージのショップでもあまり出回ってなくて、今さら買える品物じゃねぇ。
    特にこの年のは特別記念もので、もうほとんど入手不可能の幻のブレスだ」
リ ン「じゃあ、偽物か?」
サ ワ「このブランドは安いものも多いけど数が少ないし、中古品やオークションでは値が張るからなかなか入手できねぇんだよ。
    だから新品なんて、ありえない。でも偽物……でもなさそうだけど。……どうなのかな。目利きじゃないしな」

リ ン「でも、ちゃんとした店で買ったんだぜ? 正式に正規品を扱ってる店で、うさんくさい店じゃなかったよ?
    やっぱり偽物は無いと思うけどなー絶対。だって茅野さんの紹介だしさ。茅野さん、その道のプロじゃん」
サ ワ「なんで鏡夜さんにつきあって貰ったんだよ」
リ ン「それがさー。茅野さんに、欲しいのは以前の限定品だから、それと似たものを置いてる店はないかなって、
    相談したら、ちょっと考えてから、良い店があるから一緒に行きますよって。
    それで、サワが持ってたのと少し似たやつを選んで提示したら、茅野さんが店のオーナーに耳打ちしてさ。
    暫くしたら奥から、マジでお前が失くした言ってたのと、もっと近いやつを持って来たんだよ。
    俺はだから、そっくりなのがあって良かったな〜って思ったんだけど……本物? マジで?」

サ ワ「鏡夜さんの、知ってるショップ?」
リ ン「ああ、そう。きっとリンさんの欲しいものなら、この店がいいと思うって案内してくれた。
    勿論、店のオーナーが出て来て、わざわざ挨拶してたし、きっと顔見知りか、お得様だ」
サ ワ「オレに渡すって、鏡夜さんに云ってたのか?」
リ ン「まさか、言ってない!! 言えるワケねぇよ。んな、コッパズカシイ……。
    なんかさー、茅野さんて、やっぱりスゲーな。コワイわー」
サ ワ「こんなの、あり得ねぇだろ……」
リ ン「だなー? どんなカラクリかな? 魔法使いか?」
サ ワ「本当にユーズドではなさそうだ。嘘だろ、すげぇな……」

リ ン「つけてみたら?」
サ ワ「え。……でも、なんで、お前そんなの覚えてたんだ? それに何故、オレにくれるんだよ」
リ ン「だってお前、うっかり失くしてあの時にすごく悔しがってただろ。だから、喜ぶかなと思ってさ……」
サ ワ「そりゃ、喜ぶさ……。でも、もう友達でいられないオレに何でだよ? 別れの記念品なのか?」
リ ン「違うって。だから、さっきから言ってるだろ。なんでちゃんと聴いてねぇの? わざとか?
    恋人未満って、サワは冗談だと思ってるのかもしれねぇけど、俺、本気だからな。
    サワとこれからは友達以上の関係で、今後はつきあいたいんだよ。わかった?」
サ ワ「以上の関係? わかんねぇな。未満の意味も不明だし。もっと、分かるように説明してくれねぇと」
リ ン「うーー、ものわかりの悪いヤツだな。だから清く正しい、おつきあいを望んでるっていうかだな」
サ ワ「はぁ?」
リ ン「お前の性的欲望を満たすことは俺には無理だけど、それでもお前が良かったら、許してくれるなら、
    俺の希望する関係で、いっかい試してみないかって、ことなんだよ。ゆーあー、あんだーすたんど?」
サ ワ「お前の希望する関係? どんな関係?」

リ ン「サワのことが、好きなんだよ、俺」

サ ワ「……どういう意味でだよ。ぜんぜんわかんねぇよ。さっきから言うこと、混乱しまくりだよ。
    前からそれ、お前は言うよな? サワのことはダチとして好きだけどって。
    お前がオレを好きなことは知ってるよ。オレだってお前のことはダチとして好きだよ。
    でも今回はダチは無理だけどって、前置きだよな。そんなややこしいこと言われても、わかんねぇよ」
リ ン「そうだよな。悪リィ。まだ言うことがまとまってなかったのに、お前に急に会ったからさ。
    神様の采配かなと思ってさ。ちょっと上手く説明できないんだけどさ。はっきり云うと、サワに性欲はない。
    でも、お前と恋人みたいにつきあいたいんだ。俺とそんなふうにつきあって貰えるかな?っていう、
    交際申し込みのつもり。なんだけど。どうだよ? ダメ?」

サ ワ「……はぁ? やっぱり意味がわかんねぇんだけど。からかってるのか?
    恋人みたいにつきあいたいけど、セックスはしませんて、そんなのあるか?」
リ ン「冗談言ってるわけじゃねぇよ! 何で解らないかなぁ。まぁ、解らないのも分かるけどな。
    セックスしない恋人同士も、ありじゃねぇのかな? 最近、レスなのも流行じゃん。
    そういう男女のカップルも近年じゃ、少なくはないと思うぜ? だからさ。そういう感じだよ。
    もちろん、それはお前も良ければだけど? お前の気持ちもまだ聴いてねェし。サワだからやっぱり無理か?」
サ ワ「サワだから無理って何だよそれ。オレは依存症じゃないとは言ったけど、セックスはかなり好きな方だよ」
リ ン「だよなー。知ってる。それは充分、知ってるよ。1人だけではもの足りないことも、十分、知ってる。
    多数の恋人が欲しいんだよな? だからそれは悩んでることのひとつでは、あるんだけどなー。やっぱ無理かー」

サ ワ「お前はオレと寝たくはないけど、まさかの恋人ごっこをしたいってことなのか?」
リ ン「そう、それそれ! でもごっこじゃねぇよ? 本気、だけど俺。サワが好きなんだよ。本当に。
    今さらとか思うかもしんないけど、この気持ちがやっぱり友達以上だって自覚もあるんだ。
    友達じゃ、嫌なんだよ」
サ ワ「いつからだよ? そんなの……」
リ ン「きっかけは、やっぱりあの時、あのホテルで、サワとキスしたことだよな。
    お前は何も感じなかった? 俺はさ、あの時の感覚が忘れられないんだよ……。
    サワは友達だから、あんなことは二度とやらないって思ったのに、未だにまだ思い出すんだよ。
    女の子と寝てみても、脳裏から離れないんだよ。もういっかい、してみたいって。サワとキスしたい。
    お前さー、よっぽどキス、うまいの? 今まで淫乱色魔とかバカにしてて悪かったよ。
    サワはやっぱ、エロいよ。友達の俺さえ虜にするほど、激テクだよ。キスに関してはだけど」
サ ワ「あのな。今さら何いってんだよ。恥ずかしいだろ。褒めるならもっと前に褒めてろボケ。
    ……それ、お前の申し出、キスはセックスの内に入ってないのかよ? キスだけがありなのかよ?」
リ ン「勿論、ありに決まってるだろ! キスはおやつのうちでーす。俺の区別では、ごはんとは別のものです。
    むしろ、キスがしたい。サワとキスしたいのはどういうわけか? で、この結論にたどり着いたんだ」

サ ワ「ものすごく誠意が感じられねぇんだけど? セックスじゃないキスをしたいだけだろ」
リ ン「キスはセックスの内だってサワが言うなら、仮にそれを肯定するなら、キスはしたいわけだから、
    セックスの第一段階は踏むことになるよな? そしたら、先にも勧める可能性もゼロとは言えない。
    今は自信ないし、現状、無理だけどな。頑張ってもなんか、ちょっと、できる気がしない」
サ ワ「ったく。キスくらい。お前がそんなにして欲しいなら、恋人としてつきあわなくっても、
    特別にしてやるよ……バカじゃねぇのか。何を云いだすんだかな」

リ ン「だってリンくんとはキスするのヤダってお前、言ってたじゃんか。爽やか菌がうつるって」
サ ワ「ノリだろ、ノリ。オレと恋人としてつきあったらキスできると思って、マジでそんなことを云ってるのか?
    は。バカバカしい。ほんとにバカ正直な好青年気取りだな、お前って。責任は取ります的な流れか?」
リ ン「キスするならつきあう関係だろ? 真剣ならちゃんと告白してするべきだって思ったんだよ。
    リンくんはマジメな純交際を望んでる爽やか好青年なんでーす」
サ ワ「どうだろな。もういっかいキスしてみたら、そんな一時の感覚は冷めるかもしれないぜ?
    このオレを相手に真面目な交際って、よく言う気になったな? 正気かよ?」

リ ン「それはちょっと、確かに考えたよ。相手はサワだしな。笑い飛ばされて終わりかとも思ったけど、
    でもちゃんと正直に言わないと、始められないだろ。順序は告白してから振られる。
    あ、いや、振られたくはないけどさ。俺って、いつもそういう男じゃん。失恋キングじゃん」
サ ワ「オレが衝撃的な襲われ方されてる現場なんか目撃して、その手当で痛みを和らげる実験でキスして、
    色々いっぺんに初体験をしちまって、リンは未知の世界に興奮しただけなんだろ。きっとそうだよ。
    相手は別にオレじゃなくても良いんじゃねェか。吊り橋のなんとかってのが、あるよな。
    早まってるんじゃないのか、リンは。もう一度、確認してからでも遅くはないぜ?
    ……キス、してみるかよ? いいぜ、オレは。もう一回くらいな」

リ ン「なぁ、ただキスするのは簡単なんだよ。冗談でだって、酔っぱらった言い訳だとでも、言えるんだ。
    だけど、もう一回キスしたとして、俺がそれで満足できなかったら?
    まだやっぱりしたいって思ったら? お前はそんなに根気よく、それだけを要求する俺に、
    何回も何回もつきあってくれるわけか? 友達はもう無理だって本気で言う俺に?」
サ ワ「それは、なんていうか、ふざけんなってことになるだろうな……」
リ ン「だろ? あとは……えっちが大好きなサワの性的欲求を、俺は現状拒む身分なんだし、浮気というか、
    サワが他の多数の彼氏とえっちするのは、俺はもちろん我慢しなきゃいけないとは考えてるんだ。
    そこまで俺も、さすがにマックほどずうずうしくはないしな。いくら嫌でもするななんて、言えないよな。
    あー、まさか俺が豪ちゃんの気持ちを、追体験することになるなんて、人生とは奇妙だなぁ。
    マジこんなことになるんて思わなかったよな〜〜。トホホだよー」
サ ワ「なにも……浮気するともいってないだろ。オレ、鏡夜さんと寝たあとは、誰ともやってねぇし」
リ ン「え、本当に? なんで?」

サ ワ「何でって、それは……。したいと思わなかったからだよ。お前と似たような感じだよ……。
    なんか、ちょっと、あれからお前とのことが気にかかって、お前も会ったらよそよそしいし、
    完全に冗談抜きでもうリンに嫌われたかもしれないって、そればっかずっと考えてたよ。
    お前、オレの態度を確信してるから、そんなことを提案してるんだろ? 分かって言ってんだよな?」
リ ン「いやいや? 俺、拒否られるかもしれないとは、もちろん想定しても告ってるぜ?
    サワの方こそ俺のこと避けてるから、俺はもしかしたら自分の独りよがりかもしれないとも考えてた」
サ ワ「お前の要求に対してはちょっと、どう応えていいかわかんねぇ。そんなこと言われたの初めてだし」
リ ン「俺だってそんな赤裸々な要求で告白したのは、初めてだよ。
    女子にそんなこと言わねェもん。むしろそれはありきだもん。えっちはしたいもん、女子となら。
    俺、ひどいこと言ってるか? 言ってるよな。酷いのは分かってるケド、ここは正直に言っときたいんだ。
    もしもそういう展開になって、お前を拒否して、傷つけるのは嫌だから」
サ ワ「だけど――――。オキシトシン効果の実験は、つきあってみてもいい。と思ってるよ。
    もしかしたらリンは、その実験がしてみたいだけかもしれないと疑ってもいるけどな……」
リ ン「おお、ハッピーホルモンな。スキンシップで愛が生まれるのかな。ま、納得できないなら、
    当面、そう思ってくれてもいいぜ。 ―――だったら今、してもいい? 待ち焦がれた」

サ ワ「何を? キス? 早急だな。ここ、外だぜ。お前、そんなキャラだっけ?」
リ ン「じゃあ、ゆっくり、家でするか? 俺んち、今から来たら? 来いよ。
    どうせマックはレイジを待ってるんだろうから、俺はビールも放ったらかしで今から帰れる」
サ ワ「家は……ダメだ。もしもキスしてて、オレが、リンに、欲情とか……したら、お前もイヤだろ。
    それにそれこそ拒否られたら、そういう約束でもやっぱハズイし、オレ自信が落ち込むからな……。
    さすがに迫って、二人目の拒否者を出すのは、もうつらいよな」
リ ン「ああ、マックね。あれはしょうがないよな。お前、迫って拒否られたのマックだけなのか? すげぇな。
    だけど欲情なんて、サワが俺にするかな? だって俺だぜ? しないんじゃねぇの」
サ ワ「オレはゲイなんだ。相手が……今のリンなら、するだろ。クソ、こっぱズカシイんだよッ!
    お前、オレがこの二年ほど、どんな気持ちでいたのか、知らねェだろ!? ひょうひょうと云いやがって!
    オレは軽蔑されて避けられてるんだと思って、もうずっと地獄だったっつーんだよッ! 責任とれ!!」
リ ン「サワって……。可愛いな。ごめんな、何かモヤモヤさせて。責任とるからさ。本当の恋って目から鱗が落ちるのな。
    それともサワの騙しのテクニックについに俺もハマっていってるのかな。キャー、なんだかこぇぇー」
サ ワ「それはこっちのセリフだっての。騙されてると思うのは、オレの方だろ。酔ってんのか、リン。
    って、考えたら酔ってるよな? お前? 思い返せばホテルで手当てしてキスした時も、お前は酔っ払いだった。
    酔いが醒めたら、いま言ったこと全部忘れてるんじゃないだろな? 心配になってきた……。
    大丈夫なのか、こんな展開になって? こんなこと、酒の失敗じゃ、シャレになんねぇぞ」

リ ン「今、俺が酔ってるのは不可抗力だもん。俺が酔ってるときにやってくるお前のせいだもん。
    酔ってはいるけど、正気になっても考えが揺るがないから、俺はこういう告白をしてるんだよ。
    俺とサワ、ずっとそんな関係じゃなかったし、むしろ、拒否しあってたし。でも違うと思ってたのがそうじゃなかったんだ。
    改めて恋愛感情で、お前が好きだなんて言うのは、相当、勇気いるだろ。わかれよ、そこは」
サ ワ「……まぁ、そうだわな」
リ ン「だから言うのに時間、かかったんだ。許せよな……。不安にさせたよな。
    サワ。俺と友達以上で、キスはありだけどセックスは無しで、恋人としてつきあってくれませんか?」
サ ワ「……分かった。その条件で、とりあえず、つきあってもいい」
リ ン「やった! じゃ、キスしよう!」
サ ワ「ハァ?! やっぱりここでかよ?」
リ ン「そうだよ。今、ここでだよ。成立したのにしない手はないだろ。酔っ払い最強なんだよ、サワ……」
サ ワ「いや、ちょっとそんなに急ぐなよ?! 待てよ! あの角を曲がった死角くらいなら……って、リン!?
    ちょっと、待てって、焦るなッ…… ン、ッ……! んん…… リ、ン、…… 」




リ ン「サワ……。やっぱり、次もお前とキス、したい。お前がいい。
    この一回だけじゃなくてさ……。俺、お前を、こういう好きなんだよ。これってマジでさ。なんか、やっと解った」

サ ワ「……リン」
リ ン「うん……?」

サ ワ「お前はショックかもしれねぇけど。
    たいてい覚えのある感覚が、オレの股間に、当ってるんだけどな……」
リ ン「えー、俺のマイボーイ? 嘘だろ!? わぁ、ホントだ!! ウソーー!? やだー! 恥ずかしいー。
    でもカラダの準備はできてても、心の準備はできてないんだよぅー。だって男の子なんだもん!
    次の展開、どうしたらいいかわからないし。だからって逆ギレして俺のこと襲わないでネ。
    一応はさー、もしもこの先、ひょっとして変化があったら、サワに入れる方だって一応、決めてるんだから。
    ……ウッ、ちょっとイレルとか想像したら萎えたかも……マジ、無理……ゴメン。ほんと、ゴメンな」

サ ワ「〜〜〜あァ〜そォ〜う、かよッ(ーー゛〆) お前はタチの悪いホモフォヴィアか!」
リ ン「あ。やっぱり、俺の言動ってそういう差別的な発言? でもサワのことは愛してるんだよー」
サ ワ「マジ、ムカつくんだけどな、リン!! やっぱ所詮お前なんかとは、ぜったい甘い関係なんか、無理だわ!
    だいたい、男の経験もないくせに入れたいとかナマ言ってんじゃねぇぞ!? 何様だよ?
    その時が来たら、先に掘られるのは、お前の方だからな! 初体験でヒーヒー鳴かせてやるからな!!」

リ ン「イヤーー!! 掘られるとか、やめて! セクハラ反対だから!」





photo/R

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