Hope


08
4月1日翌日(4/2) AM.02:20


登場人物:レイジ/マック
場 所:眠らない街の一角






マック「……いったい、どこへ行くんだよ」

レイジ「ただの散歩だ。おまえは無駄に歩くの好きだろ。目的地はない。
    ここでも、いい。少し、話しがしたい。そろそろ気候もいいしな。
    こんな電飾の桜じゃなく、本物の桜もじき見ごろになるな」
マック「そうだな。花見に良い時期になるよな。桜、か。
    今年は花見、できるかな。一緒にさ……」
レイジ「おれと一緒に花見をしたいなら、はっきりさせておくことがあるんじゃないか」
マック「……この前の、電話のことを怒ってるんだよな。レイジ」

レイジ「それについて、言い訳したいことはあるのか?」
マック「あれはエイプリルフールの冗談だって言ったら、信じてくれるか?」
レイジ「笑えないな。エイプリルフールは、今日だ。
    すでに日付は変わってるから、もう昨日だな。
    だいたいおまえがあの電話を寄こしたのは、3月21日だ。どこの時差だ」
マック「今日、タネあかしをして嘘のサプライズでしたって言うのは?」

レイジ「ふざけるな。もう終ってる」
マック「だよな……」

レイジ「はっきりしようぜ。またおまえの暴走だ。今に始まったことじゃない。
    おれとの関係を終わりたいということで、いいのか?」
マック「待ってくれ、サワと寝たのは、嘘なんだ。信じられないかもしれないけど」
レイジ「そんなことは関係ない。そんなのは、どうでもいい。
    おまえがあんな、ふざけた態度をとることが問題だ」
マック「ふざけたわけじゃない」
レイジ「……ふざけてない? だったら、もっと問題だな。どういうつもりだ。
    おれは、待てと云ったよな? まだ待ってくれと頼んだ。
    問題は鏡夜じゃないことも、おれは言ったはずだ」
マック「そう、だな。聞いた」

レイジ「聞いただけか。それで待つと言っておきながら、結局、おまえは待てないんだよな。
    おまえは結局、何も理解してない。理解する気がないんだろ。何回めのステイだ。
    もう、うんざりだ。おれは楽で賢い犬を飼いたい。駄犬にもほどがある」
マック「……すいません」

レイジ「何を謝る? 何をおまえは謝ってるんだ? おまえの焦り過ぎる希望はなんだ?
    正直に言えよ。待てないなら、正直に待てないと言えよ。気遣いは不要だ。
    おれが好きでも、自分の嫌なことはもう限界で、続けられないんだろ?」
マック「そう、いうことかもしれない……」
レイジ「そうか。待つと言ったのは、嘘だったんだな?」
マック「嘘じゃないけど、なんだか、その……本音をいうと、なんというか……」
レイジ「おまえの本心の希望は、あの電話の内容の通りなのか。
    おれがおまえを愛人から昇格させないなら、サワと付き合いたいってか?」
マック「それは、違うんだ」
レイジ「違う? それも嘘なのか。おまえの何を、本当だと思えばいい」
マック「レイジはどう思ったんだ。俺の要求が本当だとして、どう思ったんだよ」

レイジ「そうかと思った」

マック「そうって? そうなんだなってことか?
    それで俺の言ったことを鵜呑みにして、それに従うってことなのか。
    茅野とは別れられないから、おれと関係を切るってことか。
    俺って本当に、レイジにとって、それだけの存在なのかよ?」
レイジ「従うとは言ってない。おまえのやることが理解できないだけだ。
    おまえが今、サワと寝たのは嘘だと言うから、それならどこからどこまでが本当なのか、
    事実を知りたいだけだ。話せよ。サワとホテルに行ったのか?」
マック「サワと寝たのは、だから嘘だよ。寝てない。何もしてない。
    全部ちゃんと話すと、ホテルに行ったのは……本当だ。
    別にサワに嵌められたわけじゃなくて、俺の意志で行った。でもしなかった。
    だから、何もなかったけど、確かにサワが傍にいたのは本当」

レイジ「バカ正直にどうも。おまえは本当に、何でも正直に話すんだな。誠実なつもりか?
    おまえの横に誰かがいたのは、電話越しでも気配で分かった。
    だからそれに関して嘘をつかなかったのは賢明だな。上出来だ。
    寝なかったことが実は嘘でも、真実味はでるからな。嘘に事実を混ぜる。ペテンの基本だ。
    おれの話、バカでもそれなりには聴いてたんだな。やるじゃないか」
マック「そういうつもりじゃない! 嘘じゃないんだって! 全部、真実だ。
    レイジが訊くから、正直に答えてるんだ。
    でも本当に、寝てないんだって。信じがたいのは解るけど、できなかったんだ」
レイジ「そうか。本当は寝る気満々だったけど、体の問題で、できなかっただけか。
    サワは、おまえを元気にさせる技もなかったのか? 噂とは違うんだな」

マック「……寝る気でもなかったよ。俺、本当はサワを抱ける気分じゃなかった」
レイジ「サワを抱きたくなかったって?」
マック「そうだよ。本当だって。サワがシャワーをしてる間に冷静になれた。
    何をやってるんだって、反省した。サワにも迷惑かけたと思ってる。
    ただちょっとだけ自棄になって、つい勢いで……。直情的なので、俺……」
レイジ「自棄になったのか。どうしていきなり自棄になるんだ?
    今まで散々、自分の扱われ方には、我慢してきたくせにな。
    これまでの努力が全部、無駄だ。サワに何か、変な話でも聞いたのか?
    自暴自棄になるきっかけがあったなら、それを言えよ。話せ」
マック「……それは、あの。それに関しては、言えないです」
レイジ「ダメだ。言え」
マック「今は云いません。云わない。絶対」

レイジ「黙秘か。そうか。わかった。だったら言わなくていい。
    イカサマペテンの正直者だよ、おまえは。エトーにも劣らない苛立ち加減だ。
    もういい。分かった。話は終わりだ。帰っていい」
マック「待ってくれ! レイジ、相当、怒ってるのか? ……ゴメン。軽率だったよ」
レイジ「何が軽率? なぁ。いったい、おれが何を怒ってると思ってるんだ?
    もしかしておまえに浮気されて、腹を立ててると思われてるのか?」
マック「え、いや。まさか……ええ? 違う、よな?」

レイジ「もちろん違うに決まってる。当たり前だ。そんな筈ないだろ。
    誰と寝たって構わないと言ってある。おれの知ったことじゃない。
    ……いや、ダメだ。変更だ。それは撤回する」
マック「撤回する? レイジ以外とは、セックスするなってこと?」

レイジ「気持ち悪い言い方をするなよ。心情的な問題じゃないぞ。身体的な問題だ。
    おまえがどこにでも野良犬みたいに棹入れして、傍若無人に腰を振ってばかりだと、
    挙句、おれに病気がうつる可能性がある。そんなのは冗談じゃないからな。
    おれだってそういうことに一応気を遣ってるから、おまえとしかしてないんだ。
    そうだ。だから、鏡夜ともしてないんだ。簡単な答えだ」
マック「俺、コンドウさんは使ってるけど。レイジとする時だって一応、そうしてるだろ……」
レイジ「そうか。だったらサワとするのにも、使ったんだよな?」
マック「だから。習慣の話だよ。サワとはしてないって。しつこいな。あ、ゴメン」


レイジ「―――おれは、何を怒ってるんだ?」

マック「いや、俺に聞かれましても……。レイジの怒ってる理由?」
レイジ「理由なんか、ない。腹立たしいと、……思っただけだ。畜生……」
マック「……何に? レイジ……、どうして怒ったのか教えてくれよ」
レイジ「黙れ。言っとくが、おまえがサワと寝たことじゃないぜ。全然違う。
    またおれに選べと銃でも突きつけるような、無礼な態度をおまえがとったからだ。
    おれがまだ選択できない理由は、おまえに話した筈だ。
    去年の夏に話した指輪のことで、伝わったと思ってたが、おれの思い込みだったな。
    おれの言ったことを、全然おまえは、結局、まるきり理解してなかったんだ」

マック「悪かったよ。違うんだ。ちゃんと分かってる。理解してるよ。
    あのときは、すごく嬉しかったし、だから俺はいつまでも待てる筈だった。
    それなのに、屈辱的な選択を迫ったのは、本当に悪かったよ」
レイジ「本当に悪かったと思ってるのか?」
マック「思ってるよ。ごめん。悪かったと思ってる。本当に。
    俺は、レイジを試したんだ。最低だよな。でもあんたを困らせたかった。
    わざとそういう選択肢を出したんだ。俺は、それでも選んで欲しかった。
    レイジがそんな屈辱を受け入れても、選ぶかどうかを、知りたかったんだ。
    だけど、それは間違ってたよ。正しい方法じゃない。試すなんて最低なことだ。
    毎回毎回、間違い続けて今さらなんだけど」

レイジ「……そうだな。おまえはいつも間違いばかりだ。おれを引っかき回して困惑させる。
    眩暈がするくらい、間違ってる。まったく正しくない。人間として最低だ。
    だけど、それはおれも同じで、最低らしい。
    ナルセに、レイジはマックに酷いことをしてる自覚がないのかと責められた。
    豪に至っては、おれは今、眠っているらしいからな。人を夢遊病人扱いだ」

マック「……ナルセに? 眠ってるって何?」

レイジ「それでおれも、今回は、少し反省した。
    おまえばかりを、悪人にするのはやめた」
マック「は、反省した? レイジが?」

レイジ「飼い犬に手を噛まれて、改め直す。……こうしないか。マック。
    一旦、愛人関係は解除しよう。おまえとは、愛人関係をやめる」
マック「え。な……。別れるって、ことか? そんな展開になるのか?!
    ここまでずっと、頑張ってきたのに? 待ってくれ、レイジ、俺は……」
レイジ「実を言うと、おれはナルセの面倒を見なきゃいけないんだ、これから」
マック「……何? どういう意味だよ?」

レイジ「豪がまたアメリカに行くらしい。最愛のナルセを置いてな。
    だからナルセが浮気しないように、おれは豪から見張り役を云い付けられた。
    これからはナルセに密着して、アイツのケツの見張り番をしなきゃならない。
    大変だよな。おれは何もかも解除して、ナルセの傍にいないといけないんだよ。
    つまりは、おまえと寝てる暇なんか、もうない」
マック「はぁぁぁ?! そんなバカな話があるかよ?
    なんだって? 見張り番? ケツの心配?! 知るかよ、そんなこと!
    豪がそんなこと頼んだっていうのか? あのエセ荒野の野郎、冗談じゃねぇぞ! 正気か?
    あいつ、自分の恋人の責任くらい、自分で持てよな!! レイジに甘えすぎだろ!
    あんたがそんなことする必要ねぇだろ?! そんなの断れよ!」
レイジ「断ったら、今までの関係を続けなきゃいけないだろ」

マック「なんでだ。何でだよ……。意味不明になってきた……。俺がイヤなのか?
    俺と、別れる? 別れたいって、そういうんだな? 本気で?
    いや、元は俺のせいだけど……でも……待ってくれ、そんなの……」
レイジ「そうだ。おまえとの愛人契約は終りだ。もちろん、キョウとも別れるけどな」

マック「―――え。今、なんて? 茅野とも、別れるって云った?」

レイジ「だからキョウとも恋人関係を解除して、おれはナルセ命に戻るんだよ。
    何を聞いてるんだ。おれはナルセを誰よりも愛してるからな。
    豪が居なくなれば、チャンスはおれに回ってくる。今後が楽しみだよな。
    キョウにはまだ話してないが、ナルセが相手ならあいつはYESと承諾するしかない」   

マック「……待ってくれ。それって、俺を選ぶというよりは、角が立たないな?」
レイジ「そうだろうな。おまえを選ぶことになったら、キョウはおれから去るかもしれないが、
    ナルセを選ぶなら、小姑のような文句は言っても、そのままここに居るだろうな。
    ま、別におれは、間違ってもおまえを選んだりはしないけどな」

マック「俺さ、愛人関係って契約を、交わした覚えはないよな。
    あんたの都合で、勝手に俺をレイジは愛人にしただけだろ?
    俺の気持ちは、何も変わらない。レイジを好きだし、俺はレイジを抱きたい。
    いつでもだ。だって、ひとの気持は自由だよな?」
レイジ「そういう勝手な解釈は、おまえの得意技だな。
    おまえの自由だ。別に何にも縛られることはないよな。勝手にすればいい」

マック「勝手に?」

レイジ「そう。おまえの好きにしたらいい。お互い自由の身だ。
    お互い元から自由だけどな。話は終わりだ。おやすみ、マック」

マック「話は終わりって……。このまま、帰るのか? ひとりで?
    俺の部屋に、寄って帰るよな、レイジ?
    愛人関係をやめたら、レイジは俺の部屋の鍵を返すのか?」

レイジ「―――。マック。
    おれは、腹を立ててるんだ。どうしてだか相当だ。眩暈がするくらい。
    表面を取り繕うことができないくらいだ。昔の不機嫌な自分に戻ったみたいに不愉快だ。
    どうしてなんだ? 何故そんなにムカつくことがある?
    おれが心底怒っていることを、分かってるのか、おまえは?」

マック「うん。分かってる……。ゴメン。反省してるよ。レイジ、ごめん。
    改めて言うけど、二度とレイジ以外とホテルに行ったりしません。
    あんたを傷つけたんだな、俺。自分に必死で、レイジのことを考えなかった。
    だいたい、ホテルに行ったことなんかバカ正直に話すことなかったんだ。
    嘘をつかない正直者なのが、良いことだとは限らないよな。考え無しでした。
    俺、ホントに鈍感ですいません……本気で謝ります」

レイジ「うるさい。意味不明だ。おまえは本当に厄介で、気に障る小石だ。
    腹立たしくて迷惑で、イライラするうっとうしい邪魔な石ころだ」

マック「でも、俺のことを好きだよな?」

レイジ「ふざけるな。そんな単純な結論に持って行くな。何でおれが……。
    何でこんなことを云わなきゃならない。どうかしてる。
    いいか……。今度、同じことをやったら、鍵、返すからな」





そう呟くように文句をいいながら、
レイジは忌々しげに唇を噛みしめて、
余計なことを云ったというふうに黙り込んだ。

想いが、溢れてきそうだ。
鍵は返すって、どんだけ可愛いんだよ!!
自覚がないにもほどがある。

ただ妬いたんだって。そうだろ、絶対。

レイジは戦っている。
無意識の心と、戦っている。
自尊心と、戦っている。
いろいろ、なんだか戦ってる。
きっと。

散歩するほど待てなかった俺は、
タクシーを拾って部屋に帰り、レイジと待ちわびたキスをした。
熱を帯びた唇。おれを離さない舌と両腕。
官能小説は読まないから、表現が陳腐ですいません。

レイジは、いきなりおれのジーンズを引き下げて、
反応し始めている中心部分に舌を這わせた。


何デスカーー!!
イキナリ!!
愕いた。驚愕。

ちょっと待って、いきなりか?
そんなに焦ってる?
何のサービス?
そんなに、俺が欲しい? (悶絶!!)

当惑する俺をよそに、
有無を言わさぬ構えでゆっくりと、唇は上下する。
そして深く、飲みこまれる。
優しい舌使いで、絡み取られる。
熱くて火傷しそうな舌に翻弄される。
官能小説は読まないから、以下同文。

久しぶりだったから、すぐに高ぶって、
俺はわずか数秒で、もうレイジに入れそうになった。
サワとの時、起たなかったのが嘘みたいだ。
メンタルってこんなに差がでるんだね。
びっくりだ。

もう大丈夫と言うと、レイジはまだだと言って、
さらに俺のものを、深く飲みこみスピードを上げた。
俺から、情けないうめき声が出た。

どうしよう。
まさか。
助けてくれ。

サービスなんかじゃない。
俺が欲しいんじゃない。
レイジの、ささやかな復讐だ。
まさか、このままイカされる……!?





マック「……ッ、うう、レイジ……。ダメだ、ヤバい。ヤバいって……
    もう、イキそう……、は、離してくれ……も、絶対ヤバイ!!」

レイジ「いいぜ。このまま、出せよ」

マック「えっ・・・?! ……ッ !!」


photo/R



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