Hope


09
4月1日翌日(4/2) AM.03:25


登場人物:レイジ/マック
場 所:マックのマンション部屋






マック「……の、飲んだ、? レイジ」

レイジ「ふざけろ。飲むわけないだろ。吐きだしたに決まってる」
マック「なんだ。そうなんだ……」
レイジ「まさか飲んで欲しいのか? AVじゃあるまいし、何のガッカリだ。
    呑む意味が不明だ」
マック「俺はあるけど。レイジのを少し呑んだことある。
    甘くはないけど、愛しい味がした……なんちゃって」

レイジ「バカ。ハラ壊すぞ」


マック「なぁ。レイジ。これ、復讐か?」
レイジ「復讐なんてする理由がない。ただの確認だ。
    起たなかったと言ったから、心配してやったんだ。今後のこともあるしな。
    サワにはできなくても、おれには出来るかと思ってな」
マック「もちろん、あんたには出来るよ。
    むしろ、あんたにしかできないんだけどな、レイジ……」

レイジ「おまえは、バカだよな」
マック「うん。そうだよな」

レイジ「……だが、センスは悪くない」
マック「セックスの?」
レイジ「ベースだ。音楽だよ。
    アルーシャに見に行ったが、普段聴かない曲も弾いてたな。
    おれが聴いてやってもいいレベルには、ギリギリ入った。
    けど、まだまだ精進が必要だぜ、エロミュージシャン。もっと練習しろ。
    オールディーズはスタンダードだからって、怠惰な演奏をすれば客にはバレる」
マック「分かってるよ。俺はプロだぜ。誰にだって聴きに来た客には感激して帰ってもらう。
    たとえ、恋敵を連れた憎たらしい最愛の相手にでもな」
レイジ「鏡夜が行きたがったんだ。刺激になっただろ? なり過ぎたのかもしれないがな。
    ステージのない日々でも、目が醒めたはずだ。
    アルーシャに出なくて済むように、早くシックスティーズの店が仕上がるといいな」
マック「ああ。そうだな。やっぱり俺はシックスティーズで演奏したいよな。
    アルーシャも楽曲が新鮮だったけど、歌はナルセのが良いよ」

レイジ「勿論だ。歌はサワの誓いより、ナルセの誓いの方が断然、良かった」
マック「ナルセが、店以外でまさか歌うなんて、奇跡だったな」
レイジ「あの曲は、おれに捧ぐ歌だよ。豪がいない間に、親密な関係を進めよう」
マック「そうかもしれないけど、本当は可哀想なヒカルへの慰めサービスだよ。
    言っとくけど俺、ナルセ相手に嫉妬しないからな。前にも言ったけど」

レイジ「しないのか?」
マック「レイジさんは、俺に嫉妬して欲しいんですか?」
レイジ「おれは礼儀正しいからな。お返しはきっちりするタイプなんだ」
マック「それ、レイジは嫉妬したって意味にとっていいのかな」
レイジ「そんなこと言ってない」
マック「はいはい。そんなこと言ってませんよね。
    なぁ、もう昨日になったけど、エイプリルフール・ライブの話、聴く?
    本当にもう少し早く来れば良かったのに。ニノが遊びに、本気で怒っててさ。
    色々思惑通りには行かなかったけど、めっちゃ面白かったんだよな」
レイジ「話せよ。退屈で寝るかもしれないが、子守唄代わりに聴いてやるよ」

マック「うん……」
レイジ「どうした? 寝てない。おれは、ちゃんと聴いてる」

マック「レイジに背中向けられて、無言で煙草を吸われてた頃を思い出した」
レイジ「そうか。おまえはあの頃から、おれに告白してきたよな。フライングばっかりだ。
    厄介な小僧を相手にしたと思った。今もだけどな―――」
マック「……キスしていいかって聴いて、怒られた。今はもう断らない」

レイジ「――――そう、だな……」
マック「ライブのこと、話そうと思ったけど、やめた。あとにするよ。な?」
レイジ「……あとに、する、か? マック……」

マック「そう。たぶん、持て余してスッキリしてないあんたの躰の、手伝いをしてからだ。
    きっと話ほど退屈はさせないぜ。俺は、全然まだ足りないよ、レイジ―――。
    あんたといて、俺が一回しかイカなかったこと、あったか?
    俺は、レイジだけに入りたい――――」


今まで、何回も何十回も云ったけど、
俺は心底、レイジが愛おしい。レイジが好きだ。

バカみたいに、あの日から、
興奮がずっとそのまま持続してる。
好きな想いの刺激で痙攣し続ける、脳みそ。
パンチドランカー並み。

気持ちが、ヒートアップするばかりだ。
脳内にヤバイ物質が溢れかえる。
自家製の興奮剤。
ハーブどころの騒ぎじゃないよな。
少し落ち着こう。


言葉は、なくても。

伝わる。

音楽のような感覚。


表情や、声の調子、そして伝わる肌の温度から。

レイジは言葉よりも、もっと俺に伝えてくれるものがある。
時として、言葉よりもわかりやすい。
言葉が必要だなんて、思う必要はなかったのに。
何度も思うのに、繰り返す失態。

答えを、欲しがる必要なんかないのに。
どうしてこんなにバカ過ぎるんだろう、俺って。
泣きたくなってきた。


でも、できれば言葉もやっぱり少しは、欲しいんだ。
人間って、ちょっとしたことで誤解して、
すぐ心を疑うような愚かな動物だから。
感覚だけで全てを信じていけるようになるには、
一生、未熟な俺には無理なのかも。

だから言葉は、感覚の確信を補う、
簡単だけど、重要で出すのが難しい大事な音でもある。
出すのが難しい音って、あるよな。


きっと、レイジは今回、
微かにでも、自分の奥底にある、俺への音に気がついた筈だ。
容易には出せない、難解で厄介な音に。


長い長い、真夜中の静かな長距離ドライブのような気分で、
フロントガラスに映し出される夜の景色を流し見ながら、
いくつかの希望を持って、夜が明けるのを待つ。
隣で眠っているレイジの寝息を感じながら。
脳内麻薬なんか垂れ流してたら、運転ができない。

ひたすら前を見据えて、走って走って、
隣のシートの温度を常に気にしながら、夜明けの希望を待つのだ―――。




Hope
https://www.youtube.com/watch?v=2LyW4XPjmX4
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photo/真琴さま


◆END◆


次作Just the two of us