Hope


02
3月20日翌日(3/21) AM.02:30

登場人物:サワ/マック
場 所:クラブアルーシャ付近の居酒屋





サ ワ「今日はお疲れさん、マック!」

マック「おう、おつかれ……」
サ ワ「どうしたんだよ、元気ないな?」
マック「そんなことないけど? フツーだ。サワが元気すぎるんじゃねぇの。
    今、世間では夜中だからな。俺たち仕事が終わったばかりだけど、
    世間一般的には、今は夜中だから。仕事後ってすごく疲れるし……」
サ ワ「? いつものことじゃん。仕事のあとの一杯、やっぱ良いよな。
    今日もヘルプ、来てくれてサンキューな、マック。助かるよ。
    マックが出ると、何だかお客もスタッフも、女の子たちが喜ぶ。
    なんかさ、マックのシャツのボタンの外し具合がウケてるようだぜ」
マック「へぇ、ホント? 女どもめ、ついにマックさまのセクスィアピールに参ったか。
    次回はボタン全開でいこう。いやもう裸にするとか?」
サ ワ「裸は困るな。俺は喜ぶけどね。マックは着やせするほうだよな」
マック「じろじろ見ないでください。訴えますよ。
    毎回、こっちこそ呼んでくれてアリガトだよな。
    やっぱ音楽から離れてると感覚を忘れるからさ。アルーシャなら助かるよ。
    店長同士が仲良いし、三浦さんて、いいひとだよな」

サ ワ「三浦さん、実はマックを引き抜くつもりかもしれないぜ?」
マック「俺を引き抜く利点はないだろ。あっはっは」
サ ワ「そんなことないさ。マックは良いベーシストだよ。本当だ」
マック「もっと言ってくれ。鼻が高くなる。背も伸びるかも」

サ ワ「ハハハ。ところで……マックはさ、もう俺には会ってくれないんだと思ってたよ」
マック「……なんで?」
サ ワ「だって、そうだろ? 俺のこと振っておいて、また顔を合わせにくい」

マック「プライベートと仕事は別だろ。呼ばれたらステージには出るよ。
    公私混同はしませんよ、おいら」
サ ワ「でも仕事が終わっても、俺の酒の誘いを断らなかっただろ。
    なんでだよ。これは仕事上のおつきあいか?」
マック「……別に。サワは友達だ。今日は少し飲みたかったし、なんか……
    その、つまり、サワには、俺、すごく悪いことをしたような気がしてたからだ」
サ ワ「バカだな、マックは。すごく優しいんだな……。
    罪悪感なんて、俺なんかに感じることはないのに。
    俺はいつもケツが軽いだけだからな。リンから聞いてるだろ、そんなの?
    別に振られたって、全然応えてない。気にしなくていいんだぜ」
マック「それでも、やっぱり悪いとは思うよな。俺のこと、好きだって言ってくれたんだからさ」

サ ワ「そっか……。なぁ。レイジさん、来てたな、今日、店に」
マック「そう?」
サ ワ「おいおい、まさか気が付いてないなんて言わないよな?
    キョウヤさんとフロントのテーブルにいた。あれだけ目立つ二人はいないだろ」
マック「ふーん、見えなかった」

サ ワ「嘘だ。機嫌が悪くて酒を飲みたい原因は、それなんだろ?」
マック「……」
サ ワ「マックって機嫌が悪くなると、無口になるタイプなのか。
    だったら、あっちにも見せつけてやれば良かったよな。
    ステージで俺と絡んで、愉しそうにしてやれば良かったんだ」

マック「それに何の意味があるんだよ」
サ ワ「だって、あっちにも嫉妬させればいいだろ?」
マック「にも?」
サ ワ「キョウヤさんが一緒に居たから、マックは妬いてるんだろ?」

マック「俺がそういうことをやっても、不利になるだけだ。
    逆効果だ。俺はレイジとつきあってるわけじゃないから、正妻とは張りあえない」

サ ワ「どういうこと? つまり、マックはあくまでも浮気相手でミストレスと云うわけなんだ」
マック「ミストレスとかいう洒落たもんでもないですけどね。二番煎じだよ、二番のひとな」
サ ワ「そうか。つまり愛人だったんだ。ちょっと納得だよな。変だと思ってたんだ」
マック「何がへん? 俺がセレブとつりあわないってこと?」
サ ワ「はっきり言うけど、正解だ」

マック「はっきり言うんだな」
サ ワ「だって、マックとレイジさんだぜ? 想像できないよ」
マック「想像して欲しくもないけどな。
    一応、云っとくけどサワにこれを話したのは、このことが公だからじゃないからな。
    そこんとこ理解して、近親者には黙っててくれよな。
    くれぐれも三浦店長には云うなよ。絶対だからな。頼みます」
サ ワ「俺の口を封じたいわけ? へぇ。賄賂も寄こさずにか?」

マック「うわ、サワに強請られた!!」
サ ワ「冗談だよ。いや、本当は少し本気、かな」
マック「お金はもってませんよ、ボク」
サ ワ「は、シックスティーズは高級取りだろ。俺らの二倍は貰ってるって噂だぜ」
マック「まさかー。それはないでしょ。都市伝説だ」
サ ワ「だってリンからそう聞いてる」
マック「そうなの? リンさんはきっと、たくさん貰ってるんですよ。
    俺らシックスティーズのサラリーマンみたいなもんだから、
    リンは課長さんとか、部長さんなんじゃないの。ナルセは会長かもね」

サ ワ「そんな役職、聞いたことないな」
マック「まぁ、良いじゃん。お給料の話なんて、無粋だ」
サ ワ「そうだな。じゃ、もっと粋な話をしようか。粋で艶っぽい話とか」
マック「……もう俺を、誘惑しないでくれるか」

サ ワ「誘惑? 俺に誘惑されると思うんだ、マックは」
マック「けっこう自惚れが強いんだ、俺」
サ ワ「俺さ、さっき、振られたって全然応えてないって言ったけど、
    それは嘘だ。本当はすごく堪えた。久しぶりに痛い大失恋をしたと思ったよ」
マック「失恋? 俺に? でもそこまでは思ってないんだろ? 遊び感覚だろ?
    俺のこと落として、俺が本気になったらあとでポイする気だったんじゃないの」
サ ワ「はぁ? 誰だよ、そんなこと言ったの。リンだな。あの野郎……」
マック「でも俺は、ホントかなってちょっと思った」
サ ワ「えっ」
マック「サワは本当に……と思ったら、正直嬉しかった。
    俺、田舎者だからすぐ騙されるんだけど」

サ ワ「騙してない! いや、最初はちょっと気になったくらいの軽い気持ちだったけど、
    俺……、マックのこと、胸がジリジリするくらい、好きになってたよ」
マック「―――待った。酔って告白なんかしないでくれよな」
サ ワ「どうして? 酔ってないよ、俺。やっぱり迷惑なのか?」

マック「そう、迷惑だよ。いや、そうじゃなくて。サワに対して、迷惑なんだ。
    揺らぐ。俺、迷ってるヤバいときに揺らされるとすぐ気持ちがぐらぐらするんだ。
    そういうこと言われ慣れてないから……」
サ ワ「レイジさんは云わない? もしかして、云われたことないんじゃないか」

マック「……それは、サワに関係ない」
サ ワ「俺に関係ない? 揺らぐのに? 俺のことを少しくらい、好きなんだろ?」
マック「それは友達としてなら少しはね」
サ ワ「そうか? 友情なんかいらないだろ。少しは欲情しない? 俺はダメ?
    少し寝てみても良いくらいには、好きになってるんじゃないの」

マック「そんなことない。迫らないでください、奥さん。ち、近い……」
サ ワ「なぁ、キスくらいしてくれてもいいんじゃないか……? な……マック……」

マック「いや、……サワ、俺……」
サ ワ「マック、好きなんだ。…………ん。」


マック「……うわ、イヤ、イヤイヤイヤ、ないない!!
    やめろ! やめろって! ちょ、バカ! サワ!!
    うわぁーッ 唇泥棒!!」
サ ワ「ハイ、ごちそうさん♪ 相変わらず守りが弱いね、マックは。
    酔うと面白いくらいガードが緩むよな。気をつけないと酒で失敗するぜ。
    すでにもうしてるけどな。酔ってキスするのは、初めてじゃないだろ、俺たち」

マック「わぁ! 強請られる!! 強姦されるぅー!!」
サ ワ「こらこら。個室といえど、居酒屋で強姦はないな。これからホテルへ行くならアリだ。
    でも俺、マックになら抱かれてみたいけどな?」
マック「抱か……やけに赤裸々なことをおっしゃいますね!?」

サ ワ「本気なんだよ。俺は。試してみるべきだよ。一回くらい良いだろ?
    きっとレイジさんはマックが誰と寝たって文句なんか云わないぜ。
    どうせマックは結局、ずっと愛人役なんだ。あのキョウヤさんに普通のマックは敵わない」
マック「なんか前に誰かに言われたようなセリフだ」
サ ワ「今だから言うけど、俺、あのひとに裏取引を持ちかけられたことがあるんだぜ」
マック「……だれに、何だって?」

サ ワ「今日来てた、茅野鏡夜さんだよ。ピアノマンのバーテンダーで、レイジさんの秘書で恋人だろ。
    彼に誘惑されたんだ。条件つきで。俺がマックを落とせたら、ご褒美をくれるって云われた」
マック「! ご褒美って……。ね、寝たのか? あいつと? 茅野と?」

サ ワ「ああ。マックは落とせなかったけど、抱かせてくれたよ」
マック「マジか……嘘だろ。だから、サワは、俺を口説いたのか?」

サ ワ「いや、それは違うよ。誤解しないで欲しいけど、
    俺の想い人がマックだったことを、あの人は御見通しだったんだ。
    その時はまさかマックの想い人が、レイジさんだとは俺、思わなかったしさ。    
    だから俺を、あの人は利用しようとしたんだよ。俺とマックがデキれば自分の地位は安泰だ。
    悪魔みたいに怖い人だよ。マックはあの悪魔に勝てるつもりか?」
マック「あいつ……。そこまでするのかよ……」
サ ワ「そうだよ。ちょっと普通じゃないと思った。空気が、俺らなんかとは違うんだ。
    手段を選ばない。諦めろよ、マック。レイジさんもそういう異質な世界の人だと思うぜ。
    バンドマンくらいの俺たちに相手は無理だ。あんまりしつこいと、本当に殺られるかもしれないぜ?」

マック「サワ」

サ ワ「なに?」

マック「……ホテル。行く?」



photo/R

参考:咲子の妄想ライブ日記2015-03-23付 2015-03-29付

NEXT(3)