You Can't Hurry Love
恋はあせらず
02

登場人物: ナルセ/マック
場所:ステージ終了後のシックスティーズ楽屋

7月4日




ナルセ「はい、居残り反省会」

マック「今日のステージは、すみませんでした……」

ナルセ「本当に反省してるのか? もうお前はさ、恋を焦り過ぎなんだよ」
マック「そーゆー、ウマい事言ってやった的に俺を責めるなよ」
ナルセ「だって、そうじゃないか。恋は焦らずばっかり弾きだしてな」
マック「違うよ、偶然なんだよ! 狙ったわけじゃなくて、単純に順序を間違えたんだ!
    偶然、思い違いをしてた曲が恋は焦らずだっただけで、他意はないんだって」
ナルセ「続けて二回もか? 二回目はうっかりじゃ済まないよな」

マック「だからすみませんでした……」
ナルセ「どうしたんだ、いったい。今日のはワザとのボケじゃないよな?
    こんな調子なら、もうレイジはセブンレイジィのヘルプには呼べない。
    お前がそんなに舞い上がってしまうなら、一緒でのステージは無理だろ」
マック「だからごめんて。そんなつもりはなかったんだけど……。
    レイジが出るのってすごく久しぶりだったから、なんだかちょっと緊張しちまって……」
ナルセ「緊張した? まさか。ありえないな。本当にプロなのか、お前?」

マック「うッ……。プロ意識の強いナルセさんに云われると、物凄く応えます」
ナルセ「応えるように言ってんだよ、もちろん。ステージを死守しろ。
    演奏をトチって曲をやり直すのは、愚の骨頂のお粗末さだ。
    計算とか、たまになら赦すが、プロである以上、一度に二度以上はダメだ。以上」
マック「わかりました……。ごめんなさい。
    今後、気をつけます。セットリストの順番は死んでも覚えます。赦して下さい」

ナルセ「分かったならいい。卑屈に言うなよ、嫌なヤツだな。今からレイジと会うのか?」

マック「会わない。物凄く呆れた目で俺を見てた気がするから、暫く会いたくねぇよ。
    レイジに今、何か言われたら、俺の素麺のような繊細な心が折れる気がする」
ナルセ「俺の今の指導じゃ、折れなかったのか? まだ云い足りなかったかな……」
マック「いいえ! プライドは十分に折れましたから、もう心までは折らないで欲しいです。
    これ以上、再起不能にされたら、いくら俺でも復活できなくなる」
ナルセ「小心者だな」

マック「そうだよ。俺は小心者なんだ。ねちねち苛めないでくれ」
ナルセ「だったら、もっと鍛える必要があるよな。
    レイジはこの頃、マックを甘やかし過ぎなんじゃないのか?」
マック「お前に言われるとすっごく理不尽な気がするのは何故だろう……」

ナルセ「俺は豪と同じステージに立っていても、一切ミスはしたことなんかないぜ」
マック「そりゃナルセと豪は長いこと一緒に立ってたから、そんなことないだろうさ」
ナルセ「そう、安心して背中を預けてた。緊張とか、ドキドキするなんてない。初期でもあるまいし。
    ……まさか未だに初期気分なのか? 付き合いだして何年だっけ?」
マック「俺には皆に邪魔されて、空白期間ありーの、復活ありーの、それでの苦節三年目なんだよ。
    気分は今始まったばかりのハッピーバースデー・シックスティーン♪なんだつーの」
ナルセ「うわードン退く……。マジで退くな、ソレ」

マック「うるさい。確かに認めるよ。俺はこのとこ、浮かれてたよ。
    浮かれすぎてたと思うよ。それでまさかのステージでの失態だ。ミスはミスでも、
    いつもの失態とはわけが違うって分かってる。ちゃんと反省してる。
    自戒を込めて、暫くレイジには会わないようにする。ケジメだ」
ナルセ「そこまで言ってないだろ。会うことに反対はしてない。
    プライベートでレイジに頻繁に会ってた間も、レイジが店に客として来てた時も、
    お前はちゃんと、演奏できていただろ。むしろ、良くなってたと思うぜ?
    ただ今回は横で、レイジがステージに立った途端、マックのリズムが壊れただけだ」
マック「プロならどんな状況でも、ちゃんとできるべきだろ。自分が信じられねぇよ。ったく。
    自己嫌悪だ……。最悪だ、もう……消えたい……泡になりたい」

ナルセ「珍しく自己嫌悪なのか?」
マック「珍しくない。俺だって、自己嫌悪にはなります。
    しかもよくなります。だから反省だってしますよ」
ナルセ「そうなのか? 知らなかったよ」
マック「ああもう、レイジに会えない……無理……。一生、無理なのかも」
ナルセ「そうか。だったら、今からちょっと俺に付き合えよ。
    豪と会うんだ、今から。一緒に俺と来てくれ」

マック「俺はお邪魔じゃないのか?」
ナルセ「豪がマックに会いたがってるんだよ」
マック「俺に? 好きな相手と一緒にステージに立つ心構えを教えて貰えるかな」
ナルセ「そんなこと豪は教えないと思うけど、でもレイジの話をしたいらしいよ、豪は」
マック「レイジのこと? ……俺、また殴られないよな?」



photo/真琴さま

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参照:咲子の妄想ライブ日記2014-07-06