You're Only Lonely


先月9月21日 AM03:30
マックのマンション 自宅部屋

登場人物:マック/レイジ




マック「運転手は、茅野じゃなかったんだな。
    それはそうと、おれんちで一緒に降りて、良かったのか?」

レイジ「鏡夜はそんな雑用はしない。おれがどこで降りようと、運転手は気にしないし、
    誰に言いふらすこともない。まぁ、鏡夜には報告が行くからバレるだろうけどな。
    まさか、鏡夜に会いたかったのか?」
マック「冗談。その逆だよ。どうも茅野が、おれによそよそしい気がするんだ」
レイジ「それは気のせいだ。おまえが気にし過ぎるから、そう思うんだ。
    鏡夜は、お客様を差別したりしない。常にポーカーフェイスの冷静な男さ」
マック「そうかな……。確かにそうなのかもしれないけど。あんたは茅野を信用してるんだな。
    でもなんか、やり辛いんだよな。ピアノマンにも行きにくいしさ」
レイジ「なら、来るなよ。来る必要もないだろ。やりたくなったら、おれが行く。
    おまえがそんなに神経が細かいとはな。いや……そうだったな。
    小心者のノミの心臓だから、当然といえば当然かな」

マック「あんたが、中途半端だからだよ。おれはなんだか肩身がせまいんだ」
レイジ「どうしろって云うんだ。さっさとどちらか選べって?」
マック「……ヘミにもバレない様にするのは苦痛なんだ。なんだか夏休暇の8月以降、
    ヘミとあんたと三人なんかで話すのは、めちゃめちゃ緊張する。針のムシロだ。
    今日はリンがいてくれて、本当に良かった。ヘミは気づいてないよな」
レイジ「よく言うよ。今日の、あれは良かったのか?」
マック「今日のあれって?」
レイジ「おれをステージから指さして、告白した」

マック「! ち、違う、違うよ!! あれは、そうじゃないって。
    好きさX3のリクエストで、あのセリフの時に指さしてくれってことだったんだよ。
    誕生日のお客さんがいて、ただのサービスだよ。おれはお客を指さした。ヘミだって分かってる。
    そしたら偶然、あんたが近くに居たからさ。偶然だよ。マジでびっくりした。
    シックスティーズに来るならそう言っといてくれたらいいのに」
レイジ「そうなのか? おれは劇的な告白をされたと思ったけどな?」
マック「……それは間違いじゃないですけど、無意識で狙ったわけじゃありません。
    確かに三回目くらいには、ちょっとはアンタを指したかもしれないけど……」

レイジ「やっぱり、そうなんじゃないか。だがベタ過ぎて特に感激もしなかったけどな。
    それにしても、おまえのさっきの飲み態度は酷いものだよな。
    普通に演技もできないのか? あれじゃ、ヘミが変に思う。
    もっと自然に振る舞えないのかよ? 上手にやらないと、女王さまにおれとの仲がバレるぞ」
マック「もうバレたほうが、気が楽だよ。あんたはヘミを口説きっぱなしで何だかムカつくし、
    でもナルセがヘミにはバレないようにしろって言うし、もう余計にイライラしてテンパった」
レイジ「おまえ、ヘミに妬いてるのか? いい度胸だな。呆れるね。ヘミはおれの特別なんだ。
    そんなにイラつくなら言えば? もう色々な方面にバレてるみたいだから、いいんじゃないのか?」

マック「あんたは、ヘミにまでバレてもいいのか?」
レイジ「おれ? そりゃ、何かと面倒だから、できれば知らないでいてくれた方がいいよ?
    ヘミから、突っ込まれるのはどんな気分? とか上から目線で聞かれても困るしな。
    ま、そういうのもヘミ相手なら、ちょっと興奮するけど。
    でも号泣されて、おれと結婚したいとか言い出したら、さすがに断れないし……」
マック「いや、それはねぇよ」
レイジ「それよりも、おまえとはもうすぐ終わるかもしれないわけだしな」
マック「……そうだよな。だったら、言うのは意味ないよな」

レイジ「そんなにしょげるなよ。本当にメンタル弱いな、おまえは。
    セックスの時と全然態度が違うな。どんな切り替えスイッチなんだよ。
    そんなにしょげてて、今からできるのか? もちろん、するんだろ?」
マック「……あんた、そのつもりでここに来たのか?」
レイジ「当たり前だろ。おれがおまえを送って、お茶でも飲むのか?
    どこでやる? 寝室? 簡単にソファーでもいいぜ? あまり時間もないし。
    なぁ、サマーバカンスぶりなんだぜ。あれから約一か月、会ってもいない。
    おれがどれだけ待ったと思ってるんだ……」
マック「あんたが来るなって云うからだろ……。おれのスイッチはあんたの出方次第だよ」

レイジ「来なかった? じゃ、ピアノマンで時々待ち伏せしてたのは、おまえじゃない?」
マック「……顏だけでも見たかったんだから、しょうがないだろ。
    つーか、待ち伏せっておれが行ってたの知ってたのか。いや、茅野が報告したんだな、どうせ。
    じゃ、茅野からおれの伝言、聴いた? そんなの言うわけないかな。
    もし聴いてても、あんたは、結局はおれんちに来なかったわけだよな」
レイジ「おまえの伝言は、聴いた。鏡夜は、公私混同はしない」

マック「伝言は伝わるのに、おれの気持ちは伝わらないんだ」
レイジ「よく鏡夜に伝言なんかできたな? おれに伝わるかどうか、試したのか?
    鏡夜がやきもちを焼いて、おれに伝えないとでも思ったか?」
マック「さぁ。そうかも。どれくらいまで正確に伝わるのか、不安だったからな。
    別に茅野は意地悪して、あんたに嘘を伝えたわけでもないよな?」
レイジ「なんて伝えたんだよ?」
マック「なんて、聴いた?」

レイジ「何だったかな。確か……『あの夏は、最高だった』……かな?」
マック「ぷはッ。何だよそれ。どこの二流映画のセリフだよ? そんな伝言、云ってねぇよ。
    茅野は随分、面白い嫌がらせをするんだな? あんたを失望させる最強の手か?」
レイジ「言ってない? そうか。じゃ、それは別の男からの伝言だったのかな。
    それともそれは、おれからの返信の方だったかな」
マック「おれのセンスをどうこう言うわりに、あんただって、似たようなもんだろ。
    そんなことを伝言するわけねぇし、おれはそんな伝言も貰ってないよ。
    あんたホント、ふざけた野郎だな。そうやって面白いわけか?」
レイジ「じゃ、おれからの伝言は、聴かなかったんだな?」

マック「あんたからの伝言……? ああ、『君の瞳に乾杯』、だったかな?」
レイジ「有名映画の名セリフを引用するとは、卑怯なヤツだ。
    最もセンスがなくて、自分の言葉で口説けないなら、それが無難か。
    そうだな、ボギー。おれの深い藍色の瞳を、もっと近くに来て見つめてみれば?」
マック「おれはシンプルな一言しか、あんたに伝えることはないよ。
    会いたいとか、抱きたいとか、そういう単純なこと。洒落たセリフも持ってない」
レイジ「相変わらず単純な小僧だな。後者はまぁ、同意しなくもない」

マック「おれに、抱かれたいって思うってこと?」
レイジ「ただセックスしたいってことだよ。そのために、こんな時間なのに来たんだろ。
    なのにまだ喋る気なのか? いい加減にしたらどうだよ。
    終了後の会話が難しいから、先に喋ることにしたのか? まだその気にならない?
    それともおれの誘い方が悪い? どうしたら、いいんだ? 焦らすなよ……」
マック「質問を全部終わらせる答は、一つ、かな」
レイジ「キスして。忘れないようなキスを。これが最後だと思うようなキスを?」

マック「……カサブランカ。あの映画はハッピーエンドなのかな」
レイジ「観てない。映画にある気障なセリフを覚えただけ。
    酒場で口説く時には、ちょうどいいだろ? 幸せな終わりってどんなだよ?
    そんなものが、この世にあるのか。おれは知らないね」
マック「分からない。でも、おれは、最後がどうなっても、
    あんたが笑ってるなら、幸せなエンディングだと思う」
レイジ「――――。なんだよ、それ」

マック「レイジ。あれから、何だか苦しいんだよ、おれ。夏の、別荘での旅行から。
    想いが通じなくて辛いのは前からだけど、三日間、あんたと密に居てついにおかしくなった。
    刹那主義になろうとしたのに、時間が経てば経つほど、あんたを失うことが辛い。
    あんたの身体を好きにできるだけ、知ってる分だけ、辛くて怖い」
レイジ「それでも今を満喫するんじゃなかったのか? おれが飽きるまでと云ってたよな?
    やれやれ、また意見を変えるわけか。本当におまえの脳内は忙しないことだな。
    お手上げだ。本当に今度こそついていけなくなる。焦り過ぎなんだ。
    いいか、ボウヤ。こういう関係を始めてから、まだ一年も経ってないんだぜ?」
マック「もうじき一年も、経つんだよ。じきにクリスマスだ。あれから……早いよな。
    あんたの誕生日って、5月だったんだな。そんなことさえ、全然知らなかった。
    聴かないおれも悪いよな。そういうの、気が付かないんだおれ。もう一年だっていうのにさ」

レイジ「まだ、と、もう、の違いに正解はないな。時間の価値観が違うのは、どうしようもない。
    別に寝てるだけなら、誕生日なんか聴く必要もないし、知る必要もないだろ。それが何だよ」
マック「あんたの何にも知らないのに、だからって全て聴くことも怖いくせに、
    おれは日々、あんたが欲しくて欲しくて、もうどうしようもないんだ、レイジ」
レイジ「……またその話か。もう、うんざりなんだよ。セックスしないんだったら、帰るぜ。
    そんな話をしに来たんじゃないからな」
マック「待てよ、もう少しだけ聴いてくれよ。もう今後は二度と言わないからさ」
レイジ「本当か?」

マック「バンドも仕事も生活も、どうでもいいと思わないのに、おれには何も捨てられないのに、
    リアルにこの先も、やっぱりあんたが、おれの目の届く範囲で居てくれたらいいって思うんだ。
    ずうずうし事この上ないけど、でも、そう思うんだからしょうがないよな?」
レイジ「何が云いたいんだ。はっきり言えばどうなんだ?」

マック「おれの立場は、どんな呼称でも構わないかもしれないって思うんだよ。
    つまりはさ、それを叶えるには、身体が知ってる以前の知人に、戻ればいいのかなって。
    そしたら、あんたを永遠に失わずに済むよな? また声もかけて貰えるだろ?」
レイジ「もどかしくてイライラするな。今の関係をやめるってことか。
    要するにおまえは、自分から降りるってのか? おれの答えを待ちきれずに?
    もっとも、おれたちは初めから付き合ってもないんだから、別れるって話もないし、
    ただ寝るのをやめるって、そういう取り決めの簡単な話だな? わかった」
マック「……そうだけど、そういう意味だけじゃないんだ。最後まで聴けよ」

レイジ「それ以外に、どういう意味があるんだよ?」
マック「あるだろ。気持ちの意味だよ。感情の問題だ」
レイジ「感情? 所詮、おまえは自分が可愛いだけなんだろ?
    こんなのは自分が惨めで可哀想だから、不安定なこの関係を、もうやめたいってだけだ。
    自分が大事だからだ。そうだろ。正解だよな。
    別に他に恋人だって、愛人だって、おれに断りなく勝手に好きに作れるってのに、
    それは自分のポリシーに反するからしない、でもおれの気持ちが欲しいってわけだ?」
マック「……そうかもな」
レイジ「だったら、勝手にすればいい。おれに何も断ることはないさ。
    もう望みがないなら辛いから寝ないって宣言すれば、ちゃんと了承してやるよ。
    今後もちゃんと社交辞令で、笑って挨拶もしてやるさ。それで満足なんだろ?
    大事な自分を守れて良かったな」

マック「もちろん大事だよ、自分が! おれは自分が大事だよ!!
    おれは自分を粗末にしたことなんか、今まで生きてて、一度もないからな!」
レイジ「へぇ。たまげた。そりゃ珍しいくらい幸せな人生だったんだな。
    羨ましいよ。自殺なんかしたいと思ったことも一度もないんだったかな?」
マック「そうだよ。ないね。幸せかどうかなんて、関係ない。
    でも自分が大事じゃなくて、どうしてレイジを好きになれるんだよ?
    自分を蔑ろにして、あんたのことをどうやって責任持てるんだ? 護れるんだよ?
    おれは自分が大事で、それ以上にレイジが大事なんだよ!!」

レイジ「なんだって? 冗談だろ。責任? 護るだと? ふざけるのも大概にしろ。
    おまえなんかに責任を持たれて、護って貰う立場にないぜ、おれは」
マック「そりゃそうだよな。信頼できる茅野が傍にいれば、万が一本当にヤバい、
    暗黒組織の連中に狙撃されそうになっても、絶対に安心だろうけどな」
レイジ「あのな。そんな状況になることは、まずない。別荘で脅し過ぎたのか?
    悪かったよ。おまえの反応が大げさだから、面白くてつい調子に乗ったんだ」
マック「関係ない。これは、ものの例えだよ。本当に狙われてたら大変だけど。
    例えば茅野はあんたを好きだから、命がけでレイジの弾除けになるだろうさ。
    でもそれであんたが死ななくて済んでも、結果は茅野が死んじまうんだ。
    そしてレイジを、またひとりぼっちにさせるんだ」
レイジ「 ! 」

マック「おれは、あんたの弾除けにはならない。ヘタレだからじゃないぜ? ……半分はそうでもさ。
    おれは、レイジよりあとで死ぬよ。レイジをひとり、この世に残して、置いてはいかない。
    心配なんだ。死ぬなら、おれは後だ。もしくは二人して生き残る方法を考える方が先。
    あんたの男はレイジを勝手に置いてって、言葉通り死ぬほどあんたを孤独にしたんだからな」
レイジ「――――もう、いい。やめろ。殴り倒すぞ」

マック「おれ、勝手なことを云ってるよな。分かってるよ。ごめん。
    悪く云ったけど、きっと死にたくて死んだわけじゃねぇよな、その男だって。
    あんたを残して逝ったことは、辛かっただろうし、あの世ですごく後悔してるだろうな。
    今云ったこともう謝るけど、おれが今、思ってることだから言うんだ」
レイジ「おまえは……。どうしてそんなに直情的なんだ? 思ったら、すぐ口に出すのか?
    本当に云っていいことと、悪いことの区別はつかないのか? もっと考えろよ。
    おれを心底怒らせて、本当にそれでおれが好きなのかよ? なんで、そうなんだ。
    なんで……。なんで、そんなに、乱暴に人の懐で無神経に暴れるんだ……。失神しそうだ。
    もっとキレイで賢い別れ方、人生で習ってこなかったのか、呆れて胸が詰まる……」

マック「大丈夫か? また倒れないでくれよな。
    もし倒れたら、ちゃんと病院に連れて行くから安心していいけど。
    でもレイジは、おれが欲しい答えなんか、出さない気だったんだろ?
    挟まった小石が邪魔になる頃合いを、待ってたんじゃないのか?
    おれが好きじゃなくても、嫌いになれる時期を、見計らってたんだ。
    もしくは、おれがレイジのことを諦める算段を、始めようとしてた。
    だから、会いたいって伝言も、茅野は伝えたのに、見なかった振りをしてた」
レイジ「……そう、かもな」

マック「なぁ。あんたがいつか、おれが傍にいないことに寂しくなったら、
    あんたがひとりになって、ついに耐えきれなくなったときには、
    その時は、おれの名前を呼んでくれよ。おれの名前は、マックだよ」
レイジ「……そんなことは知ってるよ。本名だって、知ってる。誕生日だってな」
マック「おれの本名、知ってるのか? 誕生日まで?
    そうか……。ナルセの愛人データ調べは完璧だって云ってたよな」
レイジ「そうだよ。別に知ってて得する情報なんかないけどな」
マック「じゃ、合ってるか照合しようぜ? おれの本名は、マサツグ。だからマック。
    小僧じゃなくて、ボウヤじゃなくて、あんたの隙間に挟まる小石じゃなくてさ。
    いつかあんたに絶対必要なものになったら、ちゃんと名前を呼んでくれよ。
    本名でも通称でも、どっちでもいいから。おれはすぐ近くでスタンバってるから。
    呼んでくれたら、飛んで行くから。ステージ投げ捨ててでも、レイジのとこに行くからさ。
    ……いや最終が終わってからなるべくすぐ行くよ。やっぱナルセ、怖いしな」
レイジ「ナルセ以下なんか、ゴメンなんだよ。最後までふざけた野郎だ。
    第一、そんな日なんか絶対来るわけねぇんだよ。バカなのか。自惚れるな」

マック「そうかもしれないけど、おれの勝手な願いだよ。第一希望の求人応募だ」
レイジ「そんな求人、おれは出してない。人材不足の職安にでも行け」
マック「勝手に応募したっていいだろ。そんなのおれの自由意志なんだよ。
    ホコリ被った履歴書がいつか出て来たら、ひょっとしたら見るかも知れないだろ。
    だからそんな時が来たら、もし来たら、奇跡がまれに起こって来たらさ」
レイジ「くどい」
マック「そしたらおれがレイジから聴きたかった、ずっと待ってたセリフを、おれに伝えてくれよ。
    おれの名前を呼んで、そう云ってくれよ。セリフは、分かるよな?
    それまでおれは、今からもう、以前は身体が知ってた知人、になるからさ」

レイジ「後悔しないだろうな? 本当によく考えたのか?
    また取り消すなんてのは今度は無理だぜ? おまえが言い出したんだからな。
    過去形にするってことは、もう二度とおれに触れることはできないんだぜ」
マック「ああ、そうだよな。分かってる」
レイジ「おまえは今後、おれを部屋に誘って、手を繋ぐことも、キスするこも、首筋に舌を這わせることも、
    どんな体位のセックスも、熱を帯びたおれの中におまえを挿入することも、激しく突きまくることも、
    身体が繋がることは、全て、二度と、これから先は、一切できないんだからな。それでもいいのか?
    おれがおまえにしがみついてイク声だって、もう聴けないんだ。いいのか? それで?
    抱き合う温度さえ、おれの身体の手触りさえ、手から身体から、おまえから消え失せる。
    それでいいんだな? その覚悟は、おまえにあるのか?」
マック「……分かってる。それもしっかりイメージしてみた。覚悟は、ある。
    そんなリアルに念を押されると、ちょっと揺らぐけど、もう決めたんだ。
    でも、みんなと一緒に喋るとか、話すとか、メールくらいはしてもいいよな?
    電話は……やめとくけど。今や電話って特別な空間だよな。声だけ聴くって切ない」

レイジ「性的な関係だけをやめたいってのか? は、呆れるくらい都合のいい話だな。
    さっきでもヘミの前では十分挙動不審だったのに、今後、普通に接することなんて出来るのかよ?
    おれはできるぜ。微笑んでもみせる。ぜんぜん何もなかったように、完全にできるからな」
マック「努力するよ。だって、おれがセブンレイジィロードに所属している間は、しょうがないだろ。
    おれは、シックスティーズを逃げ出したりしない。生活かかってるからな。
    シックスティーズとあんたは、切っても切れない関係だろ? そしたら両立しかない」
レイジ「近くにいて、耐えられるのかよ?」
マック「レイジと寝ることをやめたら、そうなったら、メチャメチャ辛いだろうけど、
    これ以上、このままレイジと寝ることをイメージしたら、それよりも辛いし、苦しい。
    それとさ、あんたが茅野と寝るのも、正直、嫌なんだ、おれ。そんな共有はしたくない。
    こんな状態で体だけが繋がってたら、単純なおれでもいつか気が変になるかもしれない。    
    でもあんたのことが本当に大事だから、おれは自分も大事にしなきゃいけない。
    現実忘れて変になってる場合じゃない。しっかりしないとダメだろ。
    だから、決めたんだ。もう、あんたに手は出さない」

レイジ「おまえは、いつも勝手に決める。わかった。受理する」

マック「だけど、忘れないで欲しいんだ。レイジ。
    勝手な言い草だけど、おれがレイジを好きで好きで好きなことだけは、
    絶対に覚えておいて欲しいんだよ。頼むから」
レイジ「そんな都合のいい話は知らねェな。おまえは勝手に降りるんだろ。
    知るかよ、そんなこと」
マック「だって、レイジがおれを好きじゃないからだよ。でもおれは違う。
    おれが普段、普通にしてても、おれがもうレイジを何とも思ってないって誰かから聴いたとしても、
    酷い作り話の噂だったとしても、おれがレイジに直接、そう云ったとしても、
    おれがレイジを本気で好きだってことは、忘れないでくれ。これ大事なことなんだ」

レイジ「はぁ? おまえから直接言われてもって、どういう意味だそれは?
    おまえから嫌いだと言われても、そうじゃないと思えってのか? 気は、確かか?」
マック「だから、それは嘘なんだって気が付いてくれよ。
    そう言わないと辛い時があるかもしれないだろ。それくらいいいだろ。大目にみろよ。
    でもおれの目をみれば、きっと分かるから。心変わりなんかしてねぇってさ。
    あんたが、いつか本気でおれの名前を呼んでくれたら、わかることなんだ」
レイジ「残念だがおれはもう、この部屋を出た瞬間から、おまえの名前も、ナニの形も忘れる」

マック「ナニの形なんかどうでもいいよ。おれの身体なんか覚えてなくてもいいから、
    おれがいつだってレイジを好きなことは、進行形なことだけは、ずっと覚えておいて欲しいんだ。
    あと、ついでに、できれば、で、いいんだけどさ……」
レイジ「まだ注文を付ける気なのか? 自分から切り出しといて、どういう神経だ」
マック「いつだって心底おれが、あんたに触れたくて抱きたいって思ってることも、忘れないでくれよな。
    しないけど、思ってるってことだけだよ。できれば、でいいからさ」


レイジ「おまえみたいな、身勝手な男は、見たことない」





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