You're Only Lonely


10月12日 AM02:10
ステージ終了後 シックスティーズ近くの個室居酒屋

登場人物:サワ/マック




サ ワ「マック、お疲れ!」

マック「悪い、待たせた」
サ ワ「とりあえず乾杯しようぜ♪」
マック「では……オツカレさん!
    ぷ・はーーーーッ! やっぱ、めっちゃ旨いよな、ステージ後のビールは格別だー」
サ ワ「いい飲みっぷりだな、マック。食欲、湧いてきたろ?
    とりあえず色々お前の好きなもの注文しといたから、遠慮しないで食べるといい。
    といっても、おまえの奢りだよな?」
マック「おう、勿論、奢るよ。お詫びだからな。サワって気が利くよな」
サ ワ「マックだからだよ。俺、どうでも良い奴にサービスしないからな」
マック「……や。それはどうも……」
サ ワ「なに? なんか緊張してるか? ちょっとオカシイぜ、マック」
マック「おか、オカシイ? おれが? いつから?」

サ ワ「この店に入ってきたときから。オレと目を合わせないようにしてる。
    それに、テンションがシックスティーズで会った時と違うよな」
マック「いや、なんか、気恥ずかしくて、デスネ。変なこというからさ」
サ ワ「おれが云ったこと? でも本当だよ。
    前に飲んだとき、マックはおれにキスした」

マック「…………それは、悪かったと思います。泥酔してたんだろ、おれどうせ」
サ ワ「謝らなくていいさ。嬉しかったし。でもさ、誰かと間違えてたよ、マックはさ」
マック「! だ、誰と?! 名前なんか言わなかった、よな? おれは」
サ ワ「言わなかったけど。でもずいぶん、優しいキスをするんだなって、思った。
    ちょっと、うっとりした。マックは酔っててもキスが上手いんだな。
    相手に妬けたよ。どんな人なのかな」
マック「……ははは。なんとコメントしていいか、困りますよ」
サ ワ「フフ。マックは可愛いねぇ。それでさ、おれはちょっと、惚れちゃったんだ」
マック「え。誰に?」
サ ワ「お前に決まってるだろ、マック。あのキスで、好きになったんだ。
    だから俺、ちょっと本気モード出してんだよ。本気で口説くの頑張ってるんだ。
    でもマックの本当のキスの相手がまだ現役なら、諦めないといけないかな」
マック「……それは大丈夫。もう、いない。先月末に、振られたから」

サ ワ「え、本当か? すごいタイミング良かったな。
    じゃ、おれにチャンスある? というか、だから俺を誘ったのか?」
マック「いや、そういうわけでも……ねぇけど。
    サワはマジで積極的だな。でもちょっと押し過ぎじゃねぇか?」
サ ワ「そうかな。だって好きなら、押していくだろ。本気だし。
    体の相性だって、早く確認したいしさ。無駄な手順はいらないだろ」
マック「……早急だな。一応確認しとくけど、おれ、ヤラレルほうじゃないだろうな?」

サ ワ「どちらでも? おれに挿れたい? ならそれでもいいよ……俺はどっちでもOK」
マック「……サワは、ちょっとエロいよな。いつもそんなにケツ、軽いのか?」
サ ワ「さぁ。ナルセほどではないんじゃないの。マックは、ナルセと寝た?」
マック「寝てないよ。ナルセには本命がいるしな。
    って云って良かったんだっけか。……ヤバい。これ内緒な。
    だいたいナルセは、そんなに軽い奴じゃないぜ? 庇うつもりじゃないけど」
サ ワ「ナルセって本命がいるんだ。へぇ。黙っとくけどね。
    でもナルセの噂は、裏じゃ有名だぜ? まぁ確証は、ないけどね。
    ナルセに憧れてる奴らの、ただの希望の妄想話かもしれないよな。嫉妬とか。
    俺もナルセと寝てみたいけど、あのレベルはさすがに高嶺の花だよなぁ……」

マック「サワだって、レベル高いだろ。ナルセと寝たいのか。サワは」
サ ワ「ま、叶うなら誰でもそうだろ。違うか? でも今の俺は、マックと寝たい♪」
マック「シックスティーズのオトコなら、誰でもいいのか?」
サ ワ「まさか。誰でも良いわけない。だってマックは俺にキスしたろ。
    それからお前のことが、ずっと気になったわけだよな、俺は。
    本気になってきたってことだよ。そしたら身体の相性もやっぱ確かめたいだろ。
    マックは、俺がどんな声で鳴くのか、聴きたくないのか、な……?」

マック「……おれは。いや、そこまでの気分には、なれねぇかな、まだ」
サ ワ「失恋した直後だから?」
マック「そう。そうだな。しつれんちょくご、だからかな」
サ ワ「そっか。真面目なんだな、マックは。やっぱり思った通りだ」
マック「おれってどんなヤツ?」
サ ワ「真剣なお付き合いを望むタイプ」
マック「そんなの、誰だってそうじゃねぇの」
サ ワ「でも初めは軽くないと、続けられないだろ。
    ゲイは男女よりも知り合えるチャンスが低いからな。まずは身体からだ」

マック「けど案外、多いんだろ。この業界」
サ ワ「ま、確かにそうなのかもね。マックに出会えたし。
    でも俺、バンド連中にはゲイってこと、カムアウトしてないんだよな。
    同類の奴らには、打ち明けてるけどね」
マック「そうなのか? サワは強引だからカムアウト派と思ってた」
サ ワ「でもない。これでも、自信なくてさ。
    打ち明けるのは、見極めて、慎重にやってるつもりなんだ。
    キスされるまでは、マックはずっとノーマルだと思ってたし」

マック「おれはさ、生粋のゲイじゃないんだけど」
サ ワ「え。……本当に?」
マック「ああ、いや、でもバイセクって意味かな。
    でも正確には、えー、おれ、バイセクだったんだ! って感じかな」
サ ワ「ハハハ。そっか。男とやってみたら、意外と良かった派?」
マック「ま、そうともいうのかな。興味は、あったんだ。前から。だから」
サ ワ「それは初めてのお相手が、良かったからだ」
マック「まぁ、そうかも……」

サ ワ「見た目も抵抗なくってのは、相手は美形だったんじゃないのかな。
    そうじゃなかったら、ノーマルが同性相手にやる気なんか起きないだろ。
    ズバリ、相手はニューハーフの綺麗なおねーちゃんだろ? 違う?」
マック「……違う」
サ ワ「マジで? じゃ、どんなコだよ」
マック「言わない」

サ ワ「嘘だろ。いいじゃん、教えてくれても。誰にも言わないからさ」
マック「それでも、駄目だ。相手に迷惑がかかると困るし」
サ ワ「マック。それは言っちゃってるよなものだぜ? もう酔ったのか?
    だったら、音楽関係者だな。店か、バンドか、そのへんだよな。
    本当はナルセなんじゃないのか?」
マック「詮索するなよ。もう関係ないんだ」
サ ワ「まさか、初めてが振られた相手とかって言わないよな?」
マック「それとはまた違うけど、その話はしたくない」
サ ワ「まだ落ち込んでる?」

マック「……どう見える?」
サ ワ「どん底だな。本気の恋だった?」

マック「おれ、帰るよ。ホテルはパスな」
サ ワ「ウソ。ごめん、気を悪くしたのか? 俺、ふざけすぎたかな?
    悪気はないんだ。ただ、マックを好きになって、必死だからさ……」
マック「そうじゃない。おれ、これ以上飲むと、完全に泥酔して、好きでもないサワに、
    きっとまたキスすると思うんだ。
    それで、最悪、ホテルまで行ってヤリまくる自信がある」
サ ワ「それなら願ったりだけど?」

マック「そんなんでいいのか? いいのかよ? おれにヤラレちゃうんだぜ?
    サワを好きでもないおれに。下手すりゃ身代わりにされるんだぜ?
    サワは好きだって言ってくれない相手とやって、良い気しないだろ?
    おれの気持ちがないのに、満足できないだろ?」
サ ワ「セックスが良ければ、それで満足できるよ、俺は。
    好き嫌いはそのあとでもいいだろ。そんなに真面目なのか、マックは」
マック「……いや。そうだな。できる。
    できるよな……残念ながら、できるんだよな。ああもう。クソ……」
サ ワ「? 何を悩んでるんだよ。そんなこと考えてちゃ、先に進めないだろ。
    別に嫌ならセックスから始めなくてもいいぜ? デートから始めるとか、あるよな?
    で、いつかそんなムードになったらベッドインって展開ならいいだろ?
    ちょっと今さら気恥ずかしいけどな」
マック「おれは、酒に飲まれるタイプだから、どんなムードでも最後はベッドインなんだよ」
サ ワ「いいね♪ だったら、問題ないじゃんか」
マック「でも、今はしたくないんだって云ってんだよッ!」

サ ワ「わかった。分かったから、こんなとこで叫ぶなよ。いくら個室でも隣に聞こえる」
マック「……ゴメン。つい」
サ ワ「しないよ。誘惑もしないから、帰るなんて言わないで、飲もうぜ?
    俺はさ、マックと話がしたいだけなんだ。それだけで、いいんだよ」
マック「本当に?」
サ ワ「本当に。誓うよ。もっと音楽とか、他の話をしよう。いいから、座れよ」
マック「じゃ、それならいっか……」



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