You're Only Lonely
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10月09日 AM02:15
シックスティーズ 閉店後の楽屋
登場人物:ナルセ/マック
ナルセ「なんだって? キレたって、云った?」
マック「そう云ったけど、聞こえなかったか?」
ナルセ「バカだな。だから云っただろ。あんまりしつこくするとレイジはキレるって。
ケンカしたのか?」
マック「いや、ケンカじゃないし、キレるってそっちの意味じゃないって。
レイジとはそんなに会ってもねぇよ。夏休暇から一ヶ月、ずっと会ってなかったんだ。
で、この間、久々に会ったら関係を切られたんだ。だから切れた。終わりって意味。
おれが誕生日に会いたいって云ったのが、気に障ったんだな」
ナルセ「マックの誕生日に? いつだっけ」
マック「今月の17日」
ナルセ「もうじきだな。それで?」
マック「それでも何も、面倒くさいから終わりだって云って、部屋を出てってそれっきり」
ナルセ「はぁ?」
マック「はぁ? じゃなくてな。ちゃんと聞いてろよ。
レイジとは、それでもう終ったんだ。だから一応、ナルセだけには報告な」
ナルセ「終わった? 本当にそれで終わったのか? レイジともう別れたってこと?
それだけのことで? それ、いつの話なんだ?」
マック「ついこの間だって。先月の終わり頃だったかな。9月末くらいだ。
最近いつも最後まで楽屋には皆がいたし、今まで言うタイミングが無くてさ」
ナルセ「それでマックは、納得したのかよ?」
マック「納得も何も。あいつが終わりだっつったら終わりだろ。おれに飽きたらおしまい。
おれに引きとめる権利は、もとからないからな」
ナルセ「ないことないだろ。マックは、レイジに真剣だったんじゃないのかよ。
あれだけ本気だ云っておいて、もう半年以上も、付き合っといて……。
もうすぐ一年になろうっていう時期に、それを持たずに別れたのか?」
マック「付き合ってないよ。別れたって言葉も当て嵌らないような関係だったんだ。
ただ、セックスするのをやめたんだよ。それだけだ。
レイジにとっては、セックスをしてた知人だから、おれって。セフレですらないんだぜ?
おれはあいつの友人ですらない、名もなき性交渉相手なんだからな。
あいつが飽きたっていえば、それで終わりなんだ。
今後はもう、ただの知ってるひと。挨拶くらいはするよ」
ナルセ「なんだよ……。そんなこと、あるのか。
やけにあっさりしてるじゃないか、マック? お前はそれでいいのか?
いきなりそう言われて、お前も夢からすっかり醒めたって、そういうことなのか?」
マック「ああ、そうだな。ま、そういうことだよ。瞬時に醒めたんだ」
ナルセ「待てよ、俺はお前が本気でレイジを好きだっていうから上手くいくほうに賭け……いや、
応援しようと思ったんだぜ? 今さら別の人間に心変わりとかでもないよな?」
マック「おれさ。なんかもう、疲れたんだよな。
おれも面倒くさくなったっつーか、正直、レイジはメンドクサイ」
ナルセ「なんだって?」
マック「所詮、レイジとおれは世界が違うだろ。だからやめた方がいいだろうなって、
判断したんだよ。ナルセも散々そう云ってただろ?
レイジ本人も云ってたし、リンもアキラも、みんな初めから云ってたワケだよ。
な? だから良く考えたらさ、おれの相手は別にレイジじゃなくてもいいよな。
おれ、そんなにモテないわけじゃないし。見る方向を変えたんだ。
ハイリスクな恋愛を、これ以上おれだけが続けることもないって、気付いたんだ」
ナルセ「お前……何かそれ以外にもあったのか? 今までと別人のようにあっさりし過ぎてる。
腹でもすいてるのか? 何か食うか? 俺に話してないこと、他にまだあるだろ」
マック「別にないけど。おれを餌付けするのは勝手だけど、これは本心だぜ。
ちなみにメシ奢ってくれるなら断らねェよ? どこ行く?
腹は空いてて倒れそうなんだ、おれ」
ナルセ「わかった。でも誕生日に会いたいって言って、レイジがそれだけでキレる下りがわからない。
いったい、何をレイジに云ったんだよ? お前、何か他に云ったんだろ?
そうに決まってる。レイジは冷静な大人だぞ、そんなに簡単にキレるわけがない」
マック「おまえは所詮、レイジの味方だよな、ナルセ。
おれはおれの誕生日に会える方がいいって、そう云っただけ」
ナルセ「だから、なんでそれだけでキレるんだ。忙しいなら行けないと断ったらいいだけだ。
バカか無理だって、そう答えればいいだけだろ、レイジは。それで済む。
何も終わりにするほどの会話でもないだろ。
最もそれ以前に、そういうアホなお願いをするお前もお前だけどな……」
マック「そんなにアホなお願いだったかな」
ナルセ「そりゃそうだろ? アホに決まってる。呆れ果てるね。
誕生日に一緒に祝って欲しいなんて、乙女すぎるだろ。俺でも言わないぜ。多分。
お前ってそんなキャラだったか? 違うよな? そんな無理難題、言わないよな?」
マック「そうかな。でも、もし恋人同士だったら、云っても普通じゃねぇの?
でも恋人でさえないおれの誕生日を、おれは一体、誰と過ごせばいいわけ?
誰だって、そんな日は好きな奴と過ごしたいと思うよな?」
ナルセ「それはそうだけど、レイジや俺たちみたいな職業で、誕生日を一緒に過ごせるなんて、
奇跡に近いだろ。そんなワガママOLみたいなこと、言わないだろ普通は……。
まさか、お前、レイジに選択を迫ったんじゃないだろうな?
無理なんだったら選べって、レイジにまさか、云った?」
マック「まぁ、あれだよ。おれか、茅野か、どっちかにしろくらい云ったかもな」
ナルセ「バカだな! そんなことを云ったのか?!」
マック「おれって時々、びっくりするくらいのフェイント出すじゃん?
とんでもない答えが返ってくるって皆、云うだろ。想像しないような答えをさ。
でもそれってわざとじゃないんだよ。必要に駆られて、云うんだ。
たまに自分でも驚くようなこと、云っちゃうことあるんだよな。
言っちゃダメだったってあとでわかる。
つい考え無しに、云っちゃう感じだろ、おれって。
しょうがないよな、バカだもんな。後先を考えないヤツは、不要だろ。
アタマが悪いのは願い下げだって、いつもレイジは云ってたし。
まぁ、だから我ながら、わお、ビックリすること云っちゃったみたいな感じだよ」
ナルセ「……最悪だな、お前」
マック「そう、最悪だよ。でも云っちゃったものは、もう戻らないよな?
おれもその覚悟だけは、あったんだ。云っちゃったからな。本心だからな。
で、終わりだなってことでさ。それでもう、おれを選ばないんだって分かった。
その瞬間どうでも良くなっちまったんだ。あ、そうって感じだよ。
おれってそれだけの存在だったんだよ。分かってたけどな」
ナルセ「馬鹿な……。それでレイジが?
レイジならそんなことくらい、適当にあしらって誤魔化すだろうに……。
何故、今回に限ってそうしなかったんだ。何かおかしい。
レイジだって、お前との関係を終わらせるのは嫌だって散々云ってた筈なのに。
それをなんだって、急に終わらせたんだよ……。さっぱり分からない」
マック「レイジは結局、茅野を選んだんだ。
つまり、おれより茅野が好きだったってこと。答えは簡単だろ。
もう前から決めてたんだ。言い出せなかった、それだけだ。おれが良いきっかけを作っただけ。
なぁ、飲みに行こうぜ、ナルセ? 平気な振りも、やっとしなくていいし。
なぁ……おれを慰めるとか、ない?
おれ、振られてから溜まってんだけど。結局、最後はやらずにおしまいになったし」
ナルセ「マック……? いや、ダメだって。ダメだ。
そんないい加減な、悪魔の誘惑はやめてくれ。しかもそんな言い草、俺に対して失礼だろ。
お前、流されるのもいい加減にしないと、またあとで激しく後悔するぞ。
おれは、もう、二度と浮気しないって、決めたんだから……、迫ってくるなよ、バカ」
マック「……本当に?」
ナルセ「当たり前だろ。それにレイジの代わりだなんて、屈辱的だ。プライドが許さない。
…………ほんとうに、駄目だって、やめてくれ……。
マック、お願いだから……。耳に、唇が、近すぎるって……もっと離れろよ」
マック「ナルセさまのプライドは、歌ってるときだけだろ。
他は全部なし崩しじゃねぇか。別に何もしてねぇよ、おれ?
おまえに体を押し付けて、囁いてるだけじゃん。嫌なら自分から離れりゃいいだろ。
ステージを降りてちゃ、ただの淫乱ナルセじゃねぇの? なぁ……」
ナルセ「ちがう……何を云ってるんだよ、マック……おれには、豪が……」
マック「ずっと我慢してるよな、ナルセ。
彼氏は遠く離れてて寂しいよな? いつも右手が恋人? 似合わないぜ。
でも浮気したって云わなきゃバレたりしねぇだろ。大丈夫だよ。おれは黙ってるし。
右手も貸すし、アッチも貸すぜ? なぁ、おれの、思い出さないか? ホラ、これだって。
……触ってくれよ。忘れてないだろ? 前は、すごく良い感じだったじゃねぇかよ、おれたち。
結構、鳴いたよな、おまえ? ナルセ―――しようぜ……マジで興奮してきた」
ナルセ「……マッ、……ク」
Photo/真琴さま