I Love You
But the words won't come
2-1
8月6日
サマーバケーション 2日目
登場人物:レイジ/マック
レイジ「おはようさん。朝食、食うか?」
マック「…………はぁ」
レイジ「何を寝ぼけたツラしてんだよ。起きろ。目を覚ませ。
気まぐれオーナーの作った朝食は5つ星レベルだぞ。簡単だけどな」
マック「あんたが作ったの? クラブサンドと、オムレツと、サラダと、フルーツとオレンジジュース?」
レイジ「シェフは今回、連れてこなかったからな。ホテル風ブレックファーストだ」
マック「すげぇ。洒落てますね。これ、夢?」
レイジ「全てが醒める前に、食えよ」
☆☆★
マック「ご馳走さまでした。美味かったです」
レイジ「お粗末さま。おまえは本当に喰いっぷりがいいね。
今日はどうする? 少し動くか? せっかく別荘に来たんだから勿体ないだろ。
バカンスはあと二日しかないんだ」
マック「あー……。そうだな。なんか、来てベッドルームしか見てない気がするな。
ここリゾート地だよな? 泳ぐとかクルージングとか、ないの?」
レイジ「あるよ」
マック「……云ってみただけ。あるんだ」
レイジ「リゾート地だ。何でもできるぜ。庭が波止場と繋がってる。行ってみるか?」
マック「いや……いい。繋がってるんだ。でも船なんか、見飽きてる。
ここに停泊してるのは、おれの知ってる魚船なんかじゃなさそうだけど」
レイジ「田舎は海が近いんだったな」
マック「そう。……あんたは、あんまり太陽とか似合わなさそうだ」
レイジ「基本、仕事はインドアだからな。陽に焼くとかも苦手だな。
古美術は湿気もだめだが、日光も天敵なんだ。おれにもそう。苦手だ」
マック「おれは学生の頃はよく海で焼いてたけど、シックスティーズで本格的に夜の仕事に入ってから、
おひさまに当たらなくなったな。なんか、なまっ白くなった。ジャコみたいに」
レイジ「はは。夜に働くミュージシャンは、色白なヤツが多いな」
マック「そうだな。あのリンでさえ、色白だもんな。ボーカルは知らねぇけど、
プロの楽器屋は指が命だから、あんまり危険なことはやりたがらない奴が多いんだ」
レイジ「リンは、当初はよく店で殴り合い寸前のケンカをしてたぜ?」
マック「ケンカしてた頃はきっとドラマーじゃなくて、気分ロッカーだったんだよ。
きっちりプロで音楽をやりだせば、楽器を常に弾けることが大事になってくる」
レイジ「……おまえは、ちょっと妙なタイプだ」
マック「どこが?」
レイジ「おまえと居ると、どこかおれは現実に近くなる。地に足が着くのが歯がゆい。
捨ててきた昔の世界だ。俗っぽいし夢から覚める。それをおれは、望んでるかどうか、わからない。
自殺未遂を手際よく処理されたり、寒いからと上着を着せられたり、おまえからは生活臭がして、
普段は思い出さないのに、そうだ、朝メシを作ってやらなくちゃと急に思ったりする」
マック「なにそれ。おれ、ヒモかよ? メシは別にどこか店に出かけてもいいけど、
普段、人は生活してんだよ。人間は生きてるんだ。自殺するなら止める。冬なら上着も着させる。
メシも食えって云う。特におれはメシを喰うことが、生活でもかなり重要事項です」
レイジ「そうだな。それにスマートな会話もできないし、大人な対応も下手だし、
自分が悪いのに開き直るし、逆ギレするし、意見をすぐに変えるし、云うことは聴かないし、
結構、おまえは自分勝手で短気なヤツだよな」
マック「……昨日の話を云ってるなら、すいませんでした。もうしませんから」
レイジ「すぐに反省もする」
マック「サルみたいに言うなよ。どんな根の持ち方なんだ。ネチネチ云わなくていいだろ。
大人でスマートなあんたはそんな話、もう蒸し返さないんじゃねぇの」
レイジ「そうだな。おれは大人だからな。そんなことは、些細なことだ。
よし、気分を変えて、大人のピクニックにでも行くか。
実はクラブサンドを作り過ぎたんだ。敷地内に眺めのいい庭がある。海の見晴らしがいい。
バカンスの間くらい、太陽に当たれよ。色白のミュージシャンには光合成が必要だろ」
マック「葉っぱじゃねぇけど、おれ」
Photo/真琴さま