Because
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6月3日 PM09:05
ピアノ・マンの一角 ジャンクスペース
登場人物:新条/マック/レイジ
新 条「やぁ、とても愉快なライブステージだったね。一杯、私に奢らせてくれないかな?」
マック「あ、どうも。ありがとうございます。
ちょっと演奏予定が押して、アルコール不足だったんでご馳走になります」
新 条「そうかね。何杯でも奢るよ? ライブ中でも、インターバルは飲んで良いんだろう?
新条につけといてくれとバーテンダーに言ってくれたら、大丈夫だ。
キャッシュオンのようだけど、でもきっと融通はきくさ」
マック「どうも新条さん。そうですね。だったらメンバー皆で言いますよ?」
新 条「ええ? 構わないよ(笑) 破産してしまうくらいの飲みっぷりなら、愉快だね」
マック「破産は無理そうですね。貴男レベルの身なりだと、全員でも無理だ」
新 条「おや、嬉しいね。きみはベースのひとだよね?」
マック「はい。おれ……いや、僕はマックと言います。
いつもはシックスティーズでベースを弾いてます」
新 条「ああ、今のベーシストはきみなんだね。シックスティーズには昔よく行ったんだ。
この頃行ってないけど、他のメンバーも、ナルセくんのことも良く知ってるよ」
マック「へぇ。そうなんですか。また是非いらして下さい」
新 条「そうだね。久しぶりに行きたいな。ナルセくんは元気かね?」
マック「はい、元気ですよ」
新 条「彼の歌はいいよね。きみも歌うの?
シックスティーズでは、楽器を演奏する人たちも、歌が上手いよね」
マック「いやー、僕は苦手で歌が……。いつもナルセにバカにされてますよ」
新 条「そうなのかい? きみはずいぶん男前なのに、それは残念だね。
でもナルセくん並みにもてるだろ? とても演奏も、良かったよ」
マック「いやいや、ぜんぜんモテませんねー。
うちはドラムに至るまで美形揃いですからね。しかもナルセがダントツ一位」
新 庄「ナルセくんには負けるかな? でもきみも良い線いってると思うよ」
マック「良い線でも、ナルセには勝てません。ナルセは直線で、僕は波線ですからね」
新 条「ははは、面白いね、きみは」
レイジ「これはこれは、新条社長じゃないですか!
掃き溜めにツルとはあなたのことですね。お久しぶりです」
新 条「やぁ、要オーナー。貴方もいらっしゃったんですか?」
マック「……!」
レイジ「もちろん、ここは私の店ですからね。いらっしゃいましたよ?
分かってるくせに。私はお邪魔でしたか? それは申し訳ない」
新 条「いや全然そんなことはないよ。きみも混ざってくれたまえ。
今、マックさんとシックスティーズの話をしていたとこでね」
マック「し、知り合い?」
レイジ「モダンプランニングの新条社長は、当クラブの上得意様だ。
マックくん、粗相のないようにしてくれたまえよ」
新 条「いやいや、要オーナー。
こういう所で社長って云うのはやめてくれと言っただろう」
レイジ「そうでしたっけ? ここがピアノマン内のジャンクなライブ会場だから?
あなたこそ、レイジって呼んで下さいよ。他人行儀だなぁ。
ところでまた私は、ハンティングの邪魔をしましたかね?」
マック「ハンティング?」
新 条「ほら、彼がビックリしてしまったよ。人が悪いな、きみも。
マックさん、彼と私はね、まぁ、なんというか悪友なんだよ。
因縁の付き合いでね。彼もちょっと悪いことが好きなタイプのオトコだろう?
要さん、私は品のないハンティングではなくて、
航海セイリングだと云ってるだろう。競技は中断して波に漂うバカンス中だ。
気分よく癒されている。何度も訂正させないで欲しいものだね?」
レイジ「セイリングでもフィッシングでも、どちらでも似たようなものでしょう。
要するにお互い狩り競争仲間ですよね。持ちつ持たれつの、ね」
新 条「……やれやれ。しょうがないね。きみは本当に私の天敵だねぇ。
あまり大人げないと、私のように好々爺にはなれないよ。
しかしそういうことを云うってことは、またなのかね……。
お互いのテリトリーは犯さない約束だろう。
貴方と私の趣味では、被らないはずだが。違うのかね?」
レイジ「そんなに趣味は被りませんよ? 例外もありますがね。
でも、これは趣味の問題ではないです。安心して下さい。
別の理由があるんです。だから他のを紹介します。これは駄目ですよ」
新 条「おや、どうして。この場所が不味い? きみの店だから?」
レイジ「違いますよ。兎に角ダメなんです」
マック「レイジ、何の話だ……」
レイジ「関係ない。おまえは黙ってろ、マック」
新 条「――――。 ……いつから?」
マック「え……」
レイジ「え―――」
新 条「―――どうしました?
マックさんは、いつからシックスティーズのバンドに?」
マック「え? あ、ああ、シックスティーズに、ですか。……ええと、
最近かな。この一、二年?」
新 条「そうですか。なるほど、だったら私が知らないわけだ。
貴方は要オーナーとは、親しいのかな?」
マック「え? レイ……いや、このオーナーと?
ええっと、少し……いえ、それほど……でも?
ああ、そう、ここの常連ってだけです。それだけです」
新 条「ほぅ。そうなんですか。常連さんね。
シックスティーズの方は、よくこの店に来られますからね。
レイジくん、これはひょっとして予想外に面白い展開なのかな?」
レイジ「……そうでもないですけどね。卑怯ですよ、社長」
マック「な、何が? 何が面白いんですか??」
新 条「いえいえ、こちらの話ですよ。年寄りの話し相手をしてくれて、ありがとう。
また後半ステージも頑張って下さい。飲み過ぎに気をつけてね、マックさん。
今度、シックスティーズにも伺いますよ」
マック「はぁ。ありがとうございます」
新 条「要オーナー。今度、大きなパーティの予定がありましてね。
ピアノマンでまたお願いしたいんだが、どこかで打ち合わせができるかな?」
レイジ「ええ。もちろん喜んで。いつも御贔屓にありがとうございます。
奥のゲストルームでも私のオフィスでも誰も来ない密室のワインセラーでも、
どこでもお好きなところにどうぞ?
まるで鬼の首でもとったような顔つきですね、新条社長」
新 条「何がかね? 本当に要さんはミステリアスで面白いひとだねぇ。
では、これで失礼するよ、マックさん」
マック「え。はい、いや、あの……ちょっと。ちょ、レイジ……? 大丈夫か?」
レイジ「大丈夫って何だよ。もう行け。早く。別に問題ない」
マック「でも……」