Because


4月28日 AM02:40
ピアノ・マン バーカウンター

登場人物:鏡夜/レイジ



鏡 夜「甘やかし過ぎなんじゃないですか?」

レイジ「なんだよ鏡夜、居たのか。聞いてたのか?
    別に甘やかしてないだろ。ジャンクライブ、良いじゃないか。
    時間制で貸切にしよう。ところで帰って居たならそう言えよ。
    盗み見聞きは趣味が悪いぜ、キョウちゃん」
鏡 夜「ライブのことだけじゃないですけど。
    せっかくお二人のところを、お邪魔しちゃ悪いかと思いましてね。
    オヤスミのキスが終わるまで、待っていようと思ったんですよ」
レイジ「やな奴だな。おれがこんなところでするわけないだろ」

鏡 夜「ボウヤは、可愛いですか?」
レイジ「可愛いわけない。あんなイライラする憎たらしいヤツ。
    店を貸すのは、ヘミとジュウリのためだ。ボウヤの頼みだからじゃないぜ」
鏡 夜「でも今のところ、けっこうお気に入りじゃないですか。
    貴方がこんなにも執着する理由が見つかりませんけどね。
    奇抜なセックス相手ってこと以外には」
レイジ「まぁ気になる人物ではあるな。今迄にない異質なタイプだ。
    セックス以外にも案外面白いしな。あの読めなさがどうも気になる」

鏡 夜「いつごろ飽きる予定ですか?」
レイジ「わからない。なりゆき」
鏡 夜「そうですか。後始末が必要になったら云って下さい」
レイジ「そうだな。そのときは頼むよ、鏡夜。でも殺さないでネ」

鏡 夜「誰も殺したことは、ありません。それより。
    貴方が……あんな顔をするなんて思いませんでした」

レイジ「? 何のことだ? あんな顏ってどんな顔?
    おれはいつでも優しくて、クールな笑顔しかみせないはずだがね。
    一体おれがいつどんな顏を、してたって云うんだ?」
鏡 夜「ちょっとがっかりしたでしょう」

レイジ「はぁ? おれが落胆してたっていうのか? いつ?」
鏡 夜「貴方がマックさんの家に行こうかって。断られた時、そんな顏をしてましたよ。
    ついさっきです。もう忘れたんですか」
レイジ「は。何を云うかと思えば。あれは、わざと断られてやったんだぜ?
    嫌味を云って、おれに無理を言わせてることを教えてやったのさ。
    本当に行くつもりで云ったわけじゃない。当たり前だろ。
    おれがそんなことにがっかりする理由がない」
鏡 夜「……ええ。そうですよね。
    すみません。ちょっと妬けたものですから」

レイジ「鏡夜。何だよ? おまえが妬くようなことは、何ひとつ無いぜ?
    変なヤツだな。ボウヤよりおまえの方が、断然勝ってるのに」
鏡 夜「あまり勝っている気がしません。教えて下さい。
    私のどの辺が、彼に勝っているんですか?」
レイジ「全部だろ。容姿も背丈も全部、おまえが勝ってるだろ。
    ああ、おまえ、弦楽器は弾けなかったか?」
鏡 夜「弾けますよ」
レイジ「なら完璧だ。おまえはパーフェクトだよ。
    あとは鏡夜が帰るといえば、ボウヤは尻尾を巻いて逃げるとこだな」

鏡 夜「嫌われたものですね、私も。でもこんなことになるとはね。
    シックスティーズのベーシストは、嫌いでは無かったんですけど。
    貴方の気まぐれのせいで、人間関係がいつになく複雑になりましたよ」
レイジ「そこをうまくやるのが、おまえの特技じゃないか。
    ボウヤに対する態度は本当に悪くないのか? 最近、敵意を感じるらしいぜ。
    いくら恋敵でも一応はピアノマンのお客なんだから、気をつけろよ」

鏡 夜「私は今までと、何ら変わりないつもりですけど。二人きりになってもね。
    確かに彼は云わないまでも、少し私を意識しすぎてますね。居心地が悪そうです」
レイジ「そうか。だったらあいつの気にしすぎだな。自意識過剰なんだよ」
鏡 夜「私とマックさんをライバルに仕立てあげて、楽しいですか?」
レイジ「楽しくないよ? 嘆かわしいことだ。人類仲良く、だからな。
    今度仲良く3Pでもするか? 役割的にはどこも被らないしな」

鏡 夜「そろそろ、決めたらどうなんですか」
レイジ「何を決める? どっちか選べっていうのか? おれに?」
鏡 夜「そうです」
レイジ「それは無理だな。そんなに好きでもないからな」
鏡 夜「どちらも、ということですか」

レイジ「違うさ、小僧の方だよ。マックのことを、そんなに好きでもないんだ。
    だから選べないだろ。今すぐには」
鏡 夜「……私のことはどうなんです?」
レイジ「鏡夜のことは、愛してると思うよ?」
鏡 夜「思う、ですか? 推測で思うだけ? 愛してると思う?」
レイジ「そう。思うだけ。きっと、多分、おそらく、だよ」

鏡 夜「あやふやな回答ですね。そんなふうに言われて喜べない。
    それならマックさんの方が確かじゃないですか。
    そんなに好きではないと、答えがはっきりしているんですから」
レイジ「そんなことハッキリしてても、何も解決しないだろ。
    今のナルセくらいトチ狂ってたら、どっちかに決められたんだろうけど。
    二股なんかいいことないからな。それは分かってるんだ」

鏡 夜「この現状を、二股だと思ってる認識はあるんですね」
レイジ「二人と寝てるなら二股だろ。……いや、下ネタじゃないぞ。
    ん? 元が下ネタなのか? はぁ、下等な小僧の相手をしてると伝染して困るな。
    おれは正直で誠実な男だから、こういう状況に慣れてないんだ。
    ナルセなら、ぜんぜん平気なんだろうけど、おれは違う。
    不特定多数は、皆が不幸になるだろ。おれが刺される恐れもあるしな。
    それだけは避けたい」
鏡 夜「貴方が刺されないよう護衛はしますけど、私が刺す場合もありますね」

レイジ「おまえが? じゃ、ベッドでは気をつけるよ。おまえの手首に手錠をかけとく。
    だけど今どっちかを選ぶのは無理だ。無理やり決めるって心情じゃない。
    最終的にはおまえでいいと思うんだけどな、きっと……」
鏡 夜「最後には、私を選んでくれますか。待てというんですね?」
レイジ「そうだな。多分な。だいたいマックじゃ、仕事の役には立たないしな。
    あいつにはこっちの商才センスがないし、相棒としては無理だろ。
    第一、シックスティーズのミュージシャンだからな。最悪だ」
鏡 夜「役に立たないのが分かっていて、どうして決められないんですか」
レイジ「さぁな。別に役立つ必要もないけどな。仕事にはおまえがいる。
    たぶん鏡夜の方を愛してるはずなのに、そんなに好きでもないボウヤを、
    何故か捨てられないから、困ってる」

鏡 夜「貴方は、狡いですよ」
レイジ「悪いなキョウ。分かってるんだ。だけど少し我慢してくれ。
    答えは待ってくれないか。もう少しだけ……」
鏡 夜「あなたが困っているのは、私のせいなんですよ。きっと」
レイジ「おまえのせいじゃないよ。何を言ってる」

鏡 夜「いいえ。私があなたを放さないからです。束縛しているからです。
    私を切れば、あなたは自由になれる。悩みから解放されますよ」
レイジ「なんだって? おれが鏡夜の囚われ人なのか?
    冗談だろ。面白いことを云うなよ。そんな趣味はない。
    おまえを飼っているのはおれだぜ。間違えるなよ、キョウ。
    主はおれで、おまえは従者だ。立場をわきまえろ」
鏡 夜「でも、貴方は……」

レイジ「おれは? 何だよ? いい加減にしろ。
    どうしたって云うんだ? 今夜はおまえらしくないぜ、鏡夜。
    おまえはあのバカみたいに、おれを困らせたりしないはずだろ?
    なんだって皆、おれを好きになると質問攻めになって不安になりたがるんだ?
    おれのせいなのか? おれは罪な男なのかよ?」
鏡 夜「すみません。私まで面倒なことを言ってしまって。申し訳ありません。
    もう店を閉めましょうか。お疲れさまでした、オーナー。
    私はまだ明日の仕込みが残っていますから、先に帰ってお休み下さい」
レイジ「ああ、そうするよ。任せたぜ」

鏡 夜「ジャンクライブの件は、どうしますか? また改装が必要でしょう?」
レイジ「そうだな。6月初めじゃ、あまり時間もないが大丈夫か?」
鏡 夜「ええ。問題ありません。心配なくお任せ下さい」
レイジ「そうか、さすがだな。おまえは最も信頼できる右腕だ。
    おまえを今もこれからも、おれは頼りにしてるぜ、鏡夜」

鏡 夜「分かっています。私は貴方の傍にいます」








photo/真琴さま(Arabian Light)


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