I Want You Back


3月1日
シックスティーズ ステージ合間の楽屋

登場人物:ナルセ/マック/メリナ/ヘミ



ナルセ「どうしたんだ? 最終ステージでもないのに、
    おまえがフロアに速攻で走り出るなんて、珍しいなマック。
    知り合いでも来てたのか? 会えた?」

マック「いや……。違う……。居たと、思ったんだけど」
ナルセ「誰が?」
マック「……別に。人違いだったみたいだ」

メリナ「それ、レイジさんのことですかぁ?」

マック「メリ? レイジを見たのか? やっぱ、居た?!」
メリナ「5ステージが終わる直前に帰ったみたいですよぅ。
    すたっふぅ♪のエミちゃんが、ピアノマンの渋メンオーナーが来てたって、
    さっきリクエストカード貰いに行ったら、騒いでましたからぁ」
マック「そっか、やっぱりいたんだ……。
    さっきまでいたのに、何でもういないんだよ……」
メリナ「なんですか? すれ違い萌え? 
    恥ずかしい曲紹介、人違いじゃなくて良かったデスね〜。
    じゃ、わたしもちょっくらフロア巡りしてきまぁーす♪」

マック「……え。えっ?! ちょ、メリ、ちょっと待てよ! 今、なんてった!?
    どういう意味だよっ、おおおおーい!!」
ナルセ「諦めろ。バレてるらしいぞ」

マック「え。ええええええ!! それは、マズイ。マズイだろ!?」
ナルセ「大丈夫だよ。BL好きだし。一夜の過ちくらいに思ってる」
マック「いや、さっきのあれ、そうは思ってねぇだろ、絶対に。
    どうすんだよ、気まずいどころじゃないだろ、これ」
ナルセ「俺がバラしたんじゃないからな」
マック「じゃあ、他に誰が言うんだよ!?」

ナルセ「おまえが大爆笑の告白を、勝手にステージからするからだろ。
    信じられない。自業自得だろ、そんなの」
マック「えっ、大爆笑? 何で? (; ̄Д ̄)
    つーか、マジで? あれでバレたってのかよ?!」
ナルセ「そうだよ、たぶん」
マック「マジか〜〜。どうしよう。マズイ。レイジに言わないでくれ、な?」
ナルセ「何を? メリナにバレたってことを?」
マック「うん、そう」
ナルセ「笑える。そんなことを心配するより、あの告白の行方を心配した方がいいぜ」
マック「なんで。すっごいタイミングだろ? まさか客席にいるとは思わないもんな。
    とっさの機転だよ。大爆笑って冗談だろ? んなことないよな?
    カッコ良かったろ? キマッてた?」
ナルセ「気楽だな。おれも、フロア出てこよう。あと、ヘミに謝っておけよ、マック」
マック「え、なんで?」

ナルセ「恒例のシュールな間合いで、歌い出しを振り回したからに決まってる」
マック「なんだよ、皆してバカにして。
    そんなにおれのMCの間って、謝るくらい悪いのか?」
ナルセ「まぁ、別に客席にはウケてるから、いいけどな。
    でもヘミがどう思ったかは別だろ。
    それと、ヘミはマックとレイジとのこと知らないから、
    知られるのが嫌なら用心しろよ」
マック「ああ。もうこれ以上広めるのは、さすがにゴメンだしな」

ナルセ「ヘミは関係を知ったら傷つくかもしれないぜ」
マック「え、それ、どういう意味?」
ナルセ「そういう意味だよ。知ってるだろ、レイジのヘミに対するアプローチぶり。
    あれは別に冗談でもないんだよ。
    ヘミさえその気になったなら、あり得たんだ」
マック「レイジは、ヘミが本気で好きだってことか? それともヘミがレイジを……」
ナルセ「違うよ。レイジが好きなのは、俺なんだって。じゃ、フロア行ってきます」
マック「あのな、まだ言うのか……ちょっ、待てよ、ナルセ!!
    なんだ、なんで皆、言い逃げなんだよ。人の気も知らないで……」


ヘ ミ「なにを独りごと言ってるの、マック?
    ナルセがフロアに出てきたけど、誰にあいさつ? 珍しいわね。
    そいうえば、あなたも誰か探してたみたいだけど、会えたの?」

マック「ヘミ!」
ヘ ミ「なに? どうしたの?」
マック「いや……あの、さっき、悪かったな」
ヘ ミ「なにが?」
マック「おれの微妙なMCで、歌い出しの出鼻をくじいたこと」
ヘ ミ「ああ、それ。別にいいわよ。いつものことだし、あなた、AB型だもの」
マック「へ? なんだよ、その納得の仕方。まさかの血液型差別かよ。
    悪かったなAB型でっ!」
ヘ ミ「いいんじゃない。笑いがあって、ステージが和むわよ」

マック「なら、いいけど。……なんか、柔らかくなったよな、最近のヘミ」
ヘ ミ「そう? ステージではメリナに合わせて、楽しい女を演じてみてるだけなんだけど。
    あまりに女王様って言われ過ぎるせいね。でもあたしはそんなに女王様じゃないわ」
マック「ヘミは佇んでるだけでいい女だからな。しょうがないんじゃないの」
ヘ ミ「そう、ありがとう」

マック「…………似てる、気がする」
ヘ ミ「なに?」
マック「いや、その、ヘミの空気感が、似てると思って。おれの、知ってる人間に」
ヘ ミ「どこが似てるの?」
マック「えーと。どことなく、一緒にいると、緊張するあたり、かな」
ヘ ミ「あたしといると、緊張する?」
マック「……ちょっと、だけ。かなり慣れたけどな」
ヘ ミ「それは、あなたに引け目があるせいね。
    自分とは魅力の大差がありすぎて、到底釣り合わないって、
    心の底で思っていて、常に不安だからよ」

マック「え…… 」

ヘ ミ「今のは冗談なんだけど。どうしたの、マック?
    そんなところで絶句しないでよ。いつもなら怒り出すとこでしょう?」
マック「じょ、冗談? そうか、冗談なんだ。
    ハハハ、本気にした……マジかと思った。良かった、冗談で」
ヘ ミ「ナルセなら本気で言うと思うけど、あたしはそんなに性格悪くないわよ。
    でも本気にしたってことは、図星ということかしら?」
マック「ヘミから見て……おれってさ、男として、あんまり、興味ないか?」
ヘ ミ「マックがあたしの趣味かどうかって、意味?」
マック「ええと、ヘミみたいな高級の、レベルの高い女から見てどうかなってこと」
ヘ ミ「レベルが高いって、あなたがそう決めつけてるだけでしょう。
    あたしの何を知ってるの? 知りもしないで決めつけないで。
    でも、心からそう思ってくれてるのなら、答えてもいいけど」
マック「……思ってます。良い女だけどやっぱ嫌な女だなって思ってますよ。
    あ、言っちゃった」

ヘ ミ「正直なのね。だけど、本当は、嫌な女も演じているのよ。
    本当のあたしのことは、あなたには解らないわ。
    本気で見る気がないなら、見えないし、見せない。
    あたしみたいなタイプはね、たとえば悩んでいても、あまり本心を明かさない」
マック「なんで?」
ヘ ミ「苦しみを分かち合うことが苦手なのよ。
    考えを乱されるのも、苦手。ひとりで解決したがる。
    はっきりじゃなくて、ニュアンスで分かってくれる相手を望むのよ。
    似たもの同士に惹かれるかもね。すべてを黙って受け止めてくれるひと」
マック「そう、なのか」

ヘ ミ「あなた、なにか高望みをしているの?」
マック「や。高望み……? そう、かな。いや、そうだったよな。
    高嶺の花だ。そうか、あまりに近づきすぎて……うっかりして」


―――忘れてた。


ヘ ミ「それなら土足で踏み込まないよう、気をつけることね。
    デリケートなのよ。強くみえて、思いがけないとこで、傷つくの」    
マック「もうすでに時遅しで、失敗した気がする」
ヘ ミ「そうなの? まれに天然さが、奇跡を起こすこともあるわよ。
    落ち込まないで。本気なら、頑張りなさいな。たとえ無駄でもね」
マック「ヘミは本当に上から目線だよな。
    それ、演技なのか? 実は根っから女王様なんだろ」
ヘ ミ「どうかしら。でもマックには教えてあげない」
マック「じゃ、女王様キャラも、楽じゃねぇんだなと思うよ」
ヘ ミ「そうね。でも、わりと楽しいわよ、ボク?」
マック「わりとじゃなくて、かなりだろ」



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