Have You Ever Seen The Rain
<2>
登場人物:茅野/マック
場 所:ピアノ・マン
茅 野「メリークリスマス。マックさん」
マック「あ。どーも。クリスマスってもうこの時間じゃ昨日だぜ?」
茅 野「店を閉めるまでは、クリスマスですよ」
マック「ああ、それ、おれも寝るまではそうだって思ってた」
茅 野「ではまだクリスマスの夜ですね。何になさいますか?」
マック「ヘネシーのVSOPくれる? シングルで」
茅 野「かしこまりました」
マック「あのさ、えーと、オーナーは、もう帰ってきた?」
茅 野「いえ。ああ、シックスティーズに出張してたんでしたね。
うちの要がお世話になりました。ご迷惑をかけませんでした?」
マック「いや、まぁ、こっちこそお世話になりまして。まだ帰ってないんだ」
茅 野「このところずっと帰っていませんよ。どこで遊んでいるのやら」
マック「そうなんだ。いつもステージが終わると、客席にも出ずにとっとと帰ってるけどな」
茅 野「サービス心のないことで申し訳ありません。
あのひとは、気まぐれなので」
マック「いいけど、何だかおたくのボスは、元気なかったよ、この五日間」
茅 野「このシーズンは、はしゃいでいるか落ち込んでるか、どっちかなんですよ」
マック「ふうん……」
茅 野「気になります?」
マック「えっ? いや、別に。おれは気にしてねぇけど、他の皆が?」
茅 野「そうですか。元気がなかったってことは、要の様子を見て下さっていたのでしょう?」
マック「そりゃ、同じステージにいるんだから、嫌でもわかるよ。
キーボードは、おれの隣なんだし……」
茅 野「それでは関心があったわけではない?」
マック「……そうなんじゃねぇの。関心なくても、隣だから気がついただけだよ」
茅 野「帰ってきたら、伝えておきます」
マック「いや、何を? つーか、なんも言わなくていいって!
本当は元気ないってナルセが言ってたんだ、おれじゃなくて」
茅 野「元気がなかったって言葉は、裏を返せば心配していたってことですよね。
それにナルセさんは分かってますから、そんなことは言いません」
マック「んなっ?! 違うって! おれは心配なんか、してねぇって!!
ざまみろって、思ってただけだって!!
いや、ざまみろってのは、ちょっと言い過ぎだけど、
おれがあいつの心配するわけねぇじゃんか、いつもイヤミ言われてんのに」
茅 野「要は気に入った人物には、構う癖があるんです。
マックさんのこと、要は関心があるようですよ。面白いって」
マック「面白いって、意味がわかんねぇ。バカにしてんだろ、要するに」
茅 野「構われない方が、いいですか?」
マック「いいに決まってるけど?」
茅 野「マックさんは、やっぱり面白いですね(笑)」
マック「なんも面白いこと言ってねぇんだけど、今。ステージに来てくれたら、
ちょっとくらいMCじゃ、面白いこというけどな」
茅 野「あのひとを、心配するなら覚悟しておいた方がいいですよ」
マック「しねぇよ。おれ、暗黒街とかヤバイこと嫌いだから」
茅 野「暗黒街? なんですかそれ? そういう意味じゃないですよ(笑)」
マック「じゃ、どういう意味だよ」
茅 野「ここだけの話、あのひとは……案外、寂しがり屋なんです」
マック「はッ?!」
茅 野「隙を見せたら甘えられて、あとに退けなくなくなりますよ……
つきあってくれって言われるかもしれません」
マック「…………なぁ、もしかして、からかってるのか?」
茅 野「はい(笑)」
マック「あのなー。あいつと同じで従業員もタチが悪いな、この店は。
酒がまずくなるっつーの。あんたって、レイジとデキてるんだろ?」
茅 野「マックさんはからかうと面白いから必ずやるよう、要の指示が出ているんです」
マック「いや、どんな店だよソレ……失礼すぎるだろ」
茅 野「わたしの助言としては、迂闊に心配などしない方がいいってことです」
マック「ヤバイから? それともアンタの彼氏だから?」
茅 野「いいえ。貴男はわりと、要の好みですよ」
マック「もういいよ。どうせあんたにもて遊ばれてるんだよな、おれ?」
茅 野「わたしに弄ばれたいなら、他の会話もご用意できますよ」
マック「……パス。都会のゲームはコワイし、おれにはアンタは不向きみたい」
茅 野「残念ですね。マックさん、ハンサムなのに」
マック「アンタ、面食い?
でもおれ、タッパがあんまりないのがコンプレックスなんだよね」
茅 野「ナルセさんみたいに完璧なひとは、そうはいませんよ」
マック「それ慰め言葉か? ナルセと比べられたら余計に落ち込むけど」
茅 野「マックさんにはマックさんの良さがありますよ」
マック「あーそうなの。自分じゃわからないよ。アリガトさん。帰るわ」
茅 野「オーナーに会って帰られないんですか?」
マック「だっていつ帰るかわからないんだろ? つーか別に会いたいわけじゃないし、
さきまでステージで一緒だったんだし、もう会いたくないね」
茅 野「それもそうですね。では、おやすみなさい。
ああ……とうとう雪が降ってきましたね。傘をお持ちください」
photo/真琴さま(Arabian Light)