Dear, hateful music The Rose
♪ 05
登場人物:ニノ/ヘミ
場所:閉店後のシックスティーズ
ニノ「それで? メリちゃんは、枝間にゲス野郎と吐き捨てて、ヤツの股間を蹴り上げ
楽屋に帰ってヘミに電話して泣きついてきた……ので、ヘミは困って俺を呼んだ。
そういうこと?」
ヘミ「そうね。大体、あってる。可哀そうに、目が腫れちゃってタイヘン。
楽屋の奥で泣き疲れて寝てるわ」
ニノ「メリちゃん、言葉より先に手が出るタイプなんだな。
しかし、痛かっただろうな、枝間のヤツ……男としてはあっちに同情するね」
ヘミ「あら。彼の味方? 言葉力が弱いと、もどかしさからそうなるのよ。
小動物を侮るから、痛い目にあうんだわ」
ニノ「ふーん。まさにその通りだな。だけどやっぱナルセさんて、アッチの人だったの?」
ヘミ「どっちの人よ。あっちとかそっちとか言われても、困るわ」
ニノ「だから、ゲイとかバイとか、そういう種類のひと」
ヘミ「知らないわよ。ナルセの性癖なんて。どっちでもいいでしょう」
ニノ「でも、ベッドの中って言ったんだろ? 枝間は……」
ヘミ「直接すぎて、もはや何の比喩でもないと思うけど。
そういう意味でしょう。別に意味があると思うなら、好きに解釈すれば?」
ニノ「だとしたら、どうなるわけ。ナルセさんは、セブンレイジィロードをやめるのかい?」
ヘミ「知らないわよ。だけど……今、彼が危うい状態にあることだけは確かだわ」
ニノ「危ういって、何で?」
ヘミ「それは……彼の恋人が今、そばにいないからよ」
ニノ「恋人って? ナルセさんの恋人って性別どっち?」
ヘミ「ニノがナルセから聞いてないなら、知らなくてもいいのじゃない」
ニノ「ああ、じゃあ別にいいよ。そんなに興味ないし。
要するに、ナルセさんは恋人と別れて、ヤケクソになりかけてると、そういう感じ?」
ヘミ「そう見えなくもないというところよ。
だけど、仕事に関しては別だと思ってた。見損なったわ、ナルセのこと」
ニノ「ヘミに見損なった言われると、たいていの男は自殺したくなるだろうな」
ヘミ「ナルセは平気よ。あたしからの罵倒なんて、蚊に刺された程度だわ」
ニノ「じゃあ、ナルセさんはゲイだな。バイでもない。ヘミに興味がないならゲイ決定」
ヘミ「あら、でも昔は女性ファンと親密にお付き合いしてたみたいよ。
今はどうだか知らないけど」
ニノ「知ってる。ナルセさんの衣装は全部オートクチュールで、
マダムたちからのプレゼント品だって、噂を聞いたことある」
ヘミ「噂じゃないわ。それは事実よ」
ニノ「やるぅ〜。さすがキングの貫録。俺も頑張らなきゃなぁ」
ヘミ「あなた、そんなタイプだった?」
ニノ「衣装はいらないけど、飯くらい奢られたいかな。醍醐味だろ」
ヘミ「ああ。だけどニノにも、そこそこマダムなファンがついて来たのじゃない?」
ニノ「んー、そうかなぁ? そんな気もするし、そうじゃない気もする。
でも俺は、若い子の方がいいけどね」
ヘミ「ファンを選り好みするのはどうかしら」
ニノ「違う違う。ファンの選り好みじゃなくて、好きなタイプの話だよ」
ヘミ「ニノの好きなタイプって?」
ニノ「可愛い子かな。天真爛漫な感じだけど、芯はしっかりしてるような」
ヘミ「そう、それならあなたも、私に罵倒されても平気な分類の男ね」
ニノ「そんなことない。だけどヘミはレベルが高すぎる。俺には高嶺の花だよ。
それくらいは、ぼんやりしてる俺にだってわかる。分相応って意味くらい
知ってるってこと。ヘミは並大抵の男じゃ満足しないだろ」
ヘミ「みんな勝手にそんなふうに思って、普通からあたしを弾くのね。
あたしは天真爛漫で、可愛い女には見えない?」
ニノ「悪いけど、見えない。ヘミは見るからに女王様気質だ。
男に媚びたり、男を立てたりするタイプじゃない。そんなのできないだろ?」
ヘミ「できないんじゃない。しないだけ。
でも必要に応じてなら、することはあるかもしれないわ」
ニノ「へぇ。だったら、あの枝間を口説き落として、こっぴどく振って痛めつけて欲しいな。
枝間もゲイなのかもしれないけど、試す価値はあるだろ?」
ヘミ「それは、できないわ」
ニノ「どうして」
ヘミ「イヤなの。あんな下品な男、目に映すのもイヤよ」
ニノ「はは、今のセリフをヤツが聞いたら、魂までフリーズして再起不能だろうね。
やっぱヘミは根っからの女王さまだよ。いっそ、そっち方面で攻めてみたらどう」
ヘミ「皆が皆、女王様の下僕になりたいわけじゃないわよ。レイジみたいに。
枝間は女を見下してる男よ。あたしと反りが合うとは思えないわ」
ニノ「そうだな。それじゃ、俺は天真爛漫な可愛いタイプのメリちゃんの様子でも見てくるとするよ。
女王さまのことは、レイジさんに任せるからさ。よろしく」
ヘミ「ちょっと、あたしの話じゃないわ、ニノ―――もう。
普段ぼーっとしてるくせに、足だけは速いわね、あの男。
よろしくって、どういうこと。……レイジに頼めっていうことなの?」