☆銀/魂パロディ

似たもの同士のケンカは収拾がつかない(4)

登場人物:銀時/女郎
場所:色街 茶屋前


【銀時SIDE】


女郎「どうかしたんですか? 銀さん」

銀時「あん? いや ちょっと知った顔がな… なんかマズイとこ見られちまったかな」
女郎「あら 銀さんの好い人ですか? それは申し訳なかったですね
    ヤキモチ妬きの彼女でもいたかしら? もしもこじれたら 私から話しましょうか?」
銀時「いいわ別に ヤキモチなんてな これっポチもタマもコロも 妬いたりしねぇヤツだから
    どうせ今も喧嘩してるしィ 女といたからって どうも思ってないんじゃね?」
女郎「そうですか? 銀さんてモテるんでしょうねぇ いい男ですもんねぇ
    ケンカしてるなら 私が彼女に立候補しようかしら
    長谷川さんも こんな好い男がお友達にいるなら うちの茶屋に連れてきて下さったらいいのにさ
    気が利かないったら」
銀時「いやいや いくら銀さんが好い男でも お金ないからね 女と遊ぶ金なんか 全然ないんだわ おれ
    不治の金欠病に犯されてるからね もう息も絶え絶えなんだよね」
女郎「フフ…面白いひとねぇ でも銀さんなら ダダでもいいわよ」

銀時「え マジでか? それマジでか 本気にしちゃうよ 銀さん これでも男だからね
    それにしても 長谷川さんが こんな色街の上物さんと お知り合いだとは ビックリしたわ」
女郎「長谷川さんは お役人さんだった頃に よく うちの茶屋を贔屓にして下さっていましてねぇ
    今回は困ってたんで 長谷川さんに頼ったんですけど 本当に助かりましたよ
    これであの困った男も 私を付け回したりしないと思うし お陰様で気楽になりました」
銀時「こういう仕事してっと ストーカーなんてのは多いんじゃねぇのかい?
    ひとり片付けて それで終わりってわけでも あるまいよ」
女郎「そうかもしれませんね でも増やしていくよりは 減らしていかないとね」
銀時「いまどき女郎なんて 借金のカタだっていうような レトロな理由じゃないんだろ?
    だったらスナックとか 接キャバーとかにしたらどうだい 触られるだけで済むじゃねぇか
    体を売るよりは 遥かにリスクも低いだろうが 今どき女郎遊郭も流行らねぇよ
    ま おれも人の業種に とやかく言える仕事してるわけじゃねぇから
    これはただのおせっかいだがな」

女郎「ありがとう 優しいんですね」
銀時「フツーの男はこれくらいのことは言うさ 女買っといて説教するよなオヤジだって言うさ」
女郎「銀さんの優しさは…そんな無責任じゃないですよ 私には分かります
    そういう目をしたひと 天人が来てこの国が敗退した当時 浪人のお侍さんが沢山いました
    何かを失くしすぎて…それでも自分の中に眠っているものを 捨てきれないひと
    そして その中の何かが 時々目覚める時があるみたい 失くしすぎても なお
    何かを斬らなきゃいけない目を 私は知っているんです あなたのような目ですよ 銀さん」
銀時「へっ そんな大層なものじゃねぇよ 失くしたもんは戻られねぇ
    だから失くさないよう 足掻くまでの話さ そんでもって 失くしちまったもんは
    しょうがねぇってな 要するに 上手く生きてく 感情のコントロールを
    やっと覚えたってだけのことさ」

女郎「そんなふうに生きられなかったお侍さんもいますよ 志のために 命を投げ売ったりした」
銀時「バカな野郎どもだよ 死んじゃァ おしめぇだろうがよ
    意見や価値観なんてな 変えりゃいいんだよ 表向きなんか どうでもなんだろが
    本音は自分の生きてくルールに 従ってりゃいいんだよォ」
女郎「銀さんみたいに 強いひとばかりじゃないですよ」
銀時「おれは 強くなんかねェよ ただ人様から見りゃ みっともなく見えたってだらしなくたって
    おれが美しいと思うように ただ好きに生きてるだけさ
    どんだけ腑抜けに見えたって 魂曲げてねぇことさえ自分で分かってりゃいいんだよォ」
女郎「美しいと思うように生きる… 銀さんには 美学が大事なんですね」

銀時「自分の美学は大事だろが みっともなくても かっこ悪くても 美しくだよ
    その中にある本物を いつも目を凝らして 見なきゃならねぇ 曇ってちゃわからねぇ
    本当に美しいものは 本当に美しいものを知らねぇと 見えないモンなんだよォ
    そいつを見るためには 苦労もするさ 努力だって すこーしばかりならするよォ?
    だからいつもそれを見たいと思って 無駄に足掻いてんのかもなァ バッカみたいによォ
    おれは甘いものと 中身の綺麗なものには 昔から目がないんだよ」

女郎「銀さんの彼女は 中身の綺麗なひと?」
銀時「そりゃもう外見も中身も おキレーなひとだよォ おれと違って変なとこで潔癖で真面目で
    常識真っ直ぐだからなァ お堅い仕事にもついてるし 瞳孔開き気味だけどな
    ま でも それも良いっていうか…」
女郎「あらァ 銀さん ベた惚れなんですね 彼女に本物の銀さんは見えてるかしら」
銀時「さぁな おれなんかは本物どころか まがい物にみえてんじゃね?
    だっからおれなんて どうでもいいんだよ どうせ相手にしてねぇんだよ
    それにしても… さっきからなんだアイツら これ見よがしにイチャイチャしやがってよォ…
    あー やなもん見ちまったぜ 尻の軽い野郎だ やっぱアレだよ 結局誰でも良いんだよアレ
    とんだアバズレだ とんだドMだよ 騙されちまったよ 畜生 ドS王子め ちょ なんだアレ
    公共の屋台で何しとんじゃァァ!!見せつけやがって…わざとだよ アレぜってーワザとだよ
    も なんかさっきから ムズムズ イライラすんだけどォォォォ!!」

女郎「銀さんたらクールに見えて 案外ヤキモチ妬きなのね」
銀時「おれは焼くのは大好きだよォ バウンドケーキとかクッキーとかね
    こうみえて強火だよ 加熱温度がハンパじゃないよ 情熱オーブン並みだよォ」
女郎「フフ 恐い恐い♪ 早く仲直りできるといいですね」
銀時「べっつに どうでもいいから あんなヤツ なんか 色々めんどくせぇだけだから」
女郎「あら 本当に欲しいものなら面倒臭いは付き物ですよ 楽して表面だけみていても
   本当の美しさは見えてこないわ でしょう?」
銀時「なんだよ やられちまったな あーあァ たったひとりの それひとつ見るのに
   どんだけ苦労させられるんだかなァ なんか もう苦手なんだよ こういうの 慣れてねぇんだよ
   べっつに どうしても欲しいってわけじゃねぇしィ」

女郎「苦労して手に入れるものは格別でしょう 頑張って」
銀時「頑張って言われてもなァ 会っちゃ喧嘩の繰り返しで おれらもうダメなんじゃね?」
女郎「諦めたらそこで終わりですよ まぁ諦めるのひとつの選択肢ですけどねぇ」
銀時「だよな 所詮高嶺の花だったんだよ あいつァ 非常におモテになるからな
    美人だし 強いし 実は優しいし こんな嫉妬深い小汚いおれじゃ 釣り合いがとれねぇわな」
女郎「あら 弱気ねぇ そんなに高貴な方なんですか 彼女は」
銀時「高貴っていうか プライドが高いな ハンパねぇな 花魁顔負けだな そうだよ
    なぁんか 冷静になったら 分かりそうなもんじゃねぇか…おれにはお高いんだよ あいつは
    ロミオとジュリエットだよ 身分違いってやつだよ しかもアイツ おれのこと遊びだよ
    夢中な時は 気づきもしねぇって おっそろしいよなァ
    おれには大層だね もう いいよ こんな気分は もう充分だって」

女郎「あら 恋の病は重病なんですね」
銀時「恋? 恋なのコレ? まっさかァ そんなコギレイなもん 銀さんしないよォ?
    うん しないしない これは アレだよ 単なる性的欲望の至りだよ 恋とか愛とかそんなん違うって
    銀さんは汚れた大人だからね 理想と現実 違うからね ガキじゃないからそのへんは」
女郎「だったら お慰めしましょうか 幸い茶屋もありますしね」

銀時「お金ないんで タダならよろしくお願いします」



続く⇒(5)

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