電脳タブロイド
チェリーブロッサムの復讐

02
登場人物:ネット住人

場所:ミステリアス・アイランド(オンラインBBS)


「今月のネカクラ! マジでマフィアBのエンゼルって、ケッサクだよなぁ」

「エンゼルの渾身告白ラブレターだろ。最高だったな! 滑稽じゃ!」
「今月のは、ちょっと可哀想で泣けてくるけどなぁ〜。あれじゃ、悲惨だよ。ちょっとヒドい」
「俺は笑い死ぬかと思ったぜ。過去ベストに入るドラマティックさじゃないか?」
「ホント。傑作。ネットナンパ吊し上げナンバー1の座は、今後も思いのままだね」
「なんだってエンゼルってあそこまでキラに目の敵にされてんだ?」
「別にただ面白すぎるからでしょ。懲りずによくもまぁって感じだね」
「確かに吊し上げられすぎてはいるよな。なんか恨み買ってんのかってくらい」

「そういや最近、キラのネカマフェイクを期待して、売名行為狙いな奴らがいるらしいぜ」
「ネカクラ、ワザナン野郎だな。ワザとひっかかって、晒されて名前を売りたいんだろ」
「でもサラシものだぜ? 世間にはドMなヤツって多いよなー?」
「キラ様はコアなファン層に、絶大なる人気だもんな。イカレテル信者盛り沢山だ」
「結構前からそういう痛いヤツ、いたけどな。数が増えてるのが、イカレテル証拠な」
「それでいうと、やっぱ、エンゼルちゃんって、実はわざとキラさま狙いなんじゃないか?」

「まっさかー。あれだけドコケにされて毎回引っかかりたいって、どんだけドMだよ?」
「ドM超えてるだろ。ドドドドMだろ(笑)」
「ちげーねぇけど、エンゼルくらいじゃん? ダントツ、ネカクラで、サラシ獲物にされてんの」
「もうあれ、最近はエンゼル専用コーナーだよな」
「狙ってるとしか、思えねェな」
「メチャ引っかかりたいヤツに限って、キラからは全スルーされて全然絡めないらしいぜ?」
「ワザとらしいのが、バレバレってやつなんだろうな」
「やっぱ、エンゼルの汚れ無き天然さがいいんじゃんー」

「でさ、エンゼルのヤツ、そういう逝ってる奴らに、逆恨みされてるらしいぜ」
「そうそう、キラを独占するなとか殺スとかいう、脅迫メールが殺到してるらしい」
「マジ、気の毒すぎるー」
「イター。笑えるけど、冷静にはやっぱ笑えねぇ話だよなぁ……。かなり痛ぇーよ」
「キラにはコケにされ、みんなには嗤われ、逆恨みで狙われて、散々だよなエンゼルのヤツ」
「さすがにちょっと気の毒で同情するわ。エンゼル、可哀想すぎ」
「あんなチームヘッド、他にいるか? 恥ずかしくて解散だろ?」

「でもあのキラとキラ信者を敵に回しといて、平然としてられるのも大したもんだぜ」
「まぁ、普通の人間には無理だな。奴は、天下無敵の恥知らずな」
「キラに廃人にされないで奮闘してるのって、エンゼルくらいなもんだろ?」
「キラの歴代廃人被害説は多いからな〜。俺、すっげー噂、きいたことある……」
「そういうのは、色々都市伝説で五万とあるでショ。妙な暗黒サイトもあるらしいからな」
「真実は、謎だ。ディストピアへようこそ!」
「でも結構、破格のしぶとさが人気なんだぜ、チーム・マフィア・ボーイズ」
「ヘッドがあれだと面白いってんで、入団希望者が増えて、メンバー空きの順待ちだってよ」
「うっそ! 最下位チームだぜ?」

「マジですか。妙なとこで人気って出るもんだな。それぞれチームカラーは違うからな」
「おれのダチにも、マフィアBの奴はいるけど、あそこは最低スキルくらいしか問われない」
「入団条件のハードルは低いらしいな。ハッカーに憧れる一般人らでも入りやすいんだろ」
「取りあえず、チームって名のものに入りたいけど、っていう奴ら?」
「一般の奴らは、無理だろ。さすがにお断りだ。エンゼルって元リアルギャング出らしいぜ」
「それは嘘だろ? アイツの人相悪いから出た噂だって話だぜ。ガタイがあるしな」

「マフィアBって、家族みたいにメンバー仲は凄く良いし、居心地が良いんだってよ」
「メンバーの団結力が、ハンパないらしい。けど確か一般人はメンバーにいない」
「あれだけマヌケなエンゼルヘッドをバカにするヤツもいないって話だ」
「ホントかよって思うな」
「それが面白くねぇって部外者もまたいるんだろな」
「ま、どんな悲惨な形でも、人気者は狙われる運命だな」

「そういえば、聴いたか? クリムゾン・キャッスル主催の今年のオンライン花見パーティの囁き話」
「知ってる! 老舗カフェじゃ、話題沸騰中だ。俺はテンプル・ケイオスで聴いた」
「何の話? 誰か知ってる?」
「どうも極悪ウイルスが……撒かれるらしいぜ。参加者は、要注意だとさ」
「ええー、マジかよ? カフェ主催のハッカーが集うお祭りで、ウイルスなんてすげぇな」

「ウイルス詳細は不明だけど、参加人を装い接触して、会話のドボンワードで、即発病するらしいぜ」
「うわ。最悪。セクシーちゃんウイルスだったりして。下手なナンパもできねぇな」
「でもエンゼルの野郎なら、知っててもナンパしそうだよな?」
「結局、あいつがひっかかったりしてな」
「ひょっとしてウイルス撒いたの、キラじゃねぇか?」
「まさかー。そんなメンドクサイことするか?」
「おバカなエンゼルひっかけるなら、ネカクラで十分だろ。しねぇよ」

「けど、花見の招待客は結構な大物チームが多いだろ?」
「上位チームのリージョン・オブ・ドームや、アシッド・フリークや、サン・デビル……」
「アイアン・バロンに、ラルズ・セキュリティも出るって聴いたぜ」
「すっげーな。クリムゾン・キャッスル主催は、たいてい店主コーラルの色仕掛けだろ」
「そんなヤバい噂が出てて、みんな参加するのか?」
「バッカだな、たりめーだろ。皆さまを誰だと思ってんだよ」
「そんなん聴いたら、余計に嬉々として絶対にでも参加したがる連中だろが」
「そうさ、参加予定のないチームも、急に参加表明したって話だぜ?」
「招待枠以外のチケットが、オークションで凄いことになってる」
「チャレンジャーだな。身の程知らずめ」

「いち早く見つけて解毒ワクチンを注入した奴が勝ちだってゲームの噂もあるし」
「どのチームに賭けるかも、アンダーフィールドでは、すでに賭け事がもう始まってるって話だよ」
「マジか。俺もエントリーして賭けようかな。どこでやってんだ?」
「勝手にアーカイブを探せ、ボケ。そんなの下層下にしかありません。ディストピアへ逝け」
「やっぱ最強人気は、政府公認機構で不正逃れをしてた企業の重大裏ファイルを丸裸にした、
 天下のルシアンだろな。ヤツのせいで最近、会社幹部が全員、逮捕されたらしいぜ」

「ルシー!! シビレルー、抱かれてもいいわ。断られるだろうけど。(笑)」
「リージョンは、政府ワーストレベルの危険注意リストにも上位参入したし、カッコイイよな、ルシアン♪」
「でも本人、ヒッキーだろ。あんま、オフ・カフェでは見たことねぇよ」
「あそこのチームは決まったカフェも持ってないけど、その代わりどこでも出入り自由だ」
「女子らのルシーさま見つけた報告が、結構すごいぜ?」
「リアルのルシーさまも、イケメンなのよ!」
「ガチファン、出ましたか」

「私の時代の憧れといえば、『ストロガノフ・レシピ』のウオッカだったんだけどなぁ」
「お前、シブイな。半伝説だろ?」
「だぁれ、ウオッカって?」
「一匹狼ハッカーのウオッカなんか、過去のひとじゃんか」
「あんたちょっと、年寄りのひと?」

「それでもまだ隠れファンは、結構多いよ。しんねーの?」
「ウオッカは、メリッサには届かないけど、年季もの伝説スーパーハッカー」
「なんせ、人腹生まれのカリスマだもんな」
「人腹生まれなの?」
「そいつ、その昔、政府の極秘フィールドにある危険レベルA級ハッキング犯の個人情報全てを、
 全部、料理のレシピに変えちまった事件の製作者だろ?」
「ストロガノフ・レシピって、どういうイミ?」
「レシピの筆頭料理が、何故かビーフストロガノフだったから、そこからついたウイルスの名前だよ」
「俺、その時代のひとじゃないから、実物は見てないんだよなぁ。もうログも政府に回収されてないだろ」
「ないね。探してみたけど無理」
「これも、幻の伝説ですよ」
「そんなにすごかったのか? 誰か見たヤツ、いる?」

「俺は見たぜ。そりゃぁ、凄かったよ」
「私も見た。完成度には痺れたよ。マニアックでユニークな仕事だったね。完全に馬鹿げてた」
「あんなふざけた緻密な仕事ができるのは、あの頃、彼だけだったと思うぜ」
「ああ、のちに亜流も出たし、当時のヒヨコハッカーたちは暫く熱病みたいに夢中になったもんさ……」
「おーおー、昔話だな、過去のひとたち。けどご本人は、今ほとんど廃人って話だろ」

「噂じゃ、ホームレスで世捨て人で、薬もやってんじゃねぇかって話を聴いた」
「ギャンブルに、娼館通いだろ……ろくな大人にならなかったハッカーの行く末の見本だよな」
「ハッカーでも、ああはなりたくねぇよ、俺」
「いろいろ、あんのさ、若き有名ハッカーの夢と挫折の物語が……って、しらねぇけどな」
「しらねぇのかよ。いい加減だな、じーさんたち(笑)」
「奴は表だっては、もう出てこないからな。確かに過去のひとだよ、な」
「二十五過ぎたら、ご老人だからこの世界って」

「新時代は、悪のキラ様、善のルシー様だなぁ。ハッカーに善悪てのも変だけどな」
「とにかく、今年の真紅城の桜パーティは、人気必須だ」
「俺らのような直接参加もできない下流民は、ログ閲覧の申請でもしとこうぜ♪」




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