監視カメラ作動中



ROOM 05
■ウオッカ&キールの部屋■

登場人物:ウオッカ/キール
場所:不気味な洋館(Fの館) ゲスト部屋



キール 「まだ雪が降っているね…ねぇウオッカ、気象庁のハッキングは出来なかったの?」

ウオッカ「…(笑)毎回してるわけじゃないんだ、キール。勘弁してくれ」
キール 「冗談だよ。雪は好きだもの。きれいだよね」
ウオッカ「そうだな…。ただ、こんなに降るなんて異常だ、システムの故障かもな」
キール 「故障なの?だけどまたウオッカと過ごせるなんて、嬉しいな」
ウオッカ「ああ、こうして二人になるのは、久しぶりだな。バイトは上手くやってるか?」

キール 「うん。まだ分からないことは多いけど、やってみて良かった」
ウオッカ「そうか、働くことは良いことだ。ま、無職の俺が云っても説得力ねぇけどな」
キール 「ウオッカは何でもできるじゃない。どうして、就職しないの?」
ウオッカ「働くのは、面倒だろ。ギャンブルして泡銭で暮らすのが、身のほどなのさ」
キール 「でも仕事は、楽しいよ?」

ウオッカ「楽しくて良かったな。じゃあ、頑張れよ」
キール 「うん。…やっぱりさ、ウオッカとボスは親子なんだね。似てるよ二人とも」
ウオッカ「そりゃ、誉められてないんだろうな。(笑)」
キール 「どうだろう。ただ似てると思っただけ。ボスは良い人だし、ウオッカは好きだよ」
ウオッカ「学校は、どうだ?」

キール 「嫌なことは…時々あるけど、ほとんどが楽しいよ。
      この間もブロンクスがね、おれのこと、守ってくれたんだ。
      でも、そのことでブロンクスだけが停学処分になっちゃって…。
      おれ、自分のせいだってボスに言おうと思ったんだけど、止められたんだ」
ウオッカ「ケルベロスにか?」
キール 「うん。云うなって、云われた。心配事を増やす必要はないって」
ウオッカ「それで、云わなかったのか?」
キール 「うん…駄目だったかな?おれ、間違ってる?」

ウオッカ「まぁ、オヤジがそれを聞いたら、間違いなく学校に怒鳴り込みだろうな」
キール 「それがさ、ボスって学校が苦手らしくて、呼び出しには行かなかったんだ。
      だからブロンクスは、学校に行かせたくなかったんだと思うよ」
ウオッカ「ガキがしたことの責任は、親がとるもんだが…オヤジはキラの悪戯のせいで、
      学校に何度も呼び出されて、すっかり嫌いになっちまったんだよ」
キール 「キラも問題を起してたの?天才なのに?」

ウオッカ「ああ、天才だから、問題を起してたのさ。悪戯ばかりしてたらしい」
キール 「ふうん。でも、ブロンクスが云うなっていったの、ちょっと分かったんだ」
ウオッカ「どう分かったんだ?」
キール 「好きなんだよ、ボスのこと。大切な人が困るのは、嫌でしょ?
      だからだと、思った。だから、おれもボスが好きだし、黙ってることにした」

ウオッカ「そうか。奴はひとりで処罰を受けたわけか。意外だな」
キール 「やっぱり、云ったほうが正しかったかな?」
ウオッカ「いや…正しいことばかりでも、うまく行かないからな。
      今は問題がないんだったら、それでいいんじゃないか?」
キール 「そう?でも、もうそのグループから、虐められることはないんだ。
      停学になったのは、ブロンクスだけなのに、彼らも学校に来なくなってさ。
      何故か、転校しちゃったんだ。
      よっぽどブロンクスのこと、恐かったんだね」
ウオッカ「へぇ。正義は勝ったな」

キール 「そうなのかな。でもそれでおれも、ほっとした」
ウオッカ「また誰かに虐められたら、今度は俺に相談していいんだぜ、キール」
キール 「あ、違うんだ。ほっとしたのは、ブロンクスだけ停学じゃなくて、
      良かったって意味。おれ、学校のことは、ブロンクスがいるから大丈夫。
      もう心配しないでいいよ、ウオッカ」
ウオッカ「―――随分、ケルベロスに肩入れしてるんだな、キール。
      好きなのか、奴を?俺は、あいつがお前を本気で好きだとは思えないがな。
      今日だって、キラと相部屋だろ」
キール 「それは仕方ないよ。ブロンクスは、キラのボディガードだもの。
      仕事なんだ。…おれのことも、学校での仕事みたいなものだけどね」

ウオッカ「学校での仕事?学校で、お前はケルベロスを雇ってるのか?」
キール 「個人でブロンクスと契約してるって感じかな?
      だけど、それはキラの好意からなんだ。彼をおれに、貸してくれてるんだ。
      おれを危険な連中から、守れるようにって」
ウオッカ「一時、お前の養父の件で俺たちがキラを騙したことがあったよな。
      それで、お前がキラの信者や敵からのターゲットになった。
      美少年狩りのスレッドが立って…その時なのか?いや、その時なんだな」
キール 「凄いや。分かっちゃうんだ、ウオッカには」

ウオッカ「俺が手を回す間もなく、祭りが消えたから妙だとは思ってたんだ。
      そうか…キラがな…」
キール 「うん。だからブロンクスは、俺の恋人っていう表向きだけど、
      本当はそうじゃないんだ。ただの、ふりなんだ。
      だからブロンクスは、おれのこと、何とも思ってない…」
ウオッカ「…どうした?キール?ちょっと待てよ、お前、番犬に本気か…?」

キール 「なんか、変なんだよ。ウオッカ。こんなの初めてで、怖い。
      おれ、ウオッカもボスも電タブ社のみんなも、みんな好きだけど、
      ブロンクスのことが、それ以上にもっと好きみたいなんだ…。
      彼のこと、考えると、すごく苦しい感じがする」
ウオッカ「…お前、まさか番犬に恋してるのか?」
キール 「え、恋、なの?イーブに少し習ったけど、これがそうなの?」

ウオッカ「なんてこった…お前、なんて奴を好きになるんだ、キール」
キール 「え、ブロンクスに恋しちゃ、駄目なの?」
ウオッカ「お前は、世の中がまだ分かってない。早すぎる。
      危険なものと、そうでないものの区別がまだついてないんだ。
      もっとお前は世の中を知ってから、恋をした方がいい」
キール 「恋は、外の世界をもっと知ってからするものなの?」
ウオッカ「いや、そうでもないから恋なんだが…いや、お前の場合は、その方が良いんだ」
キール 「おれが、娼館出だから、まだ駄目ってこと?」

ウオッカ「違う!そうじゃなくてだ…いや…参ったな…。
      ―――キール、もしかして、奴と、もう寝たのか?!」
キール 「…だって、助けて貰ったら、お礼くらい、するじゃない」
ウオッカ「あの野郎ッ…!!」
キール 「ウオッカ!?やめて、どこ行く気?!」
ウオッカ「野良犬野郎を、ブン殴ってやる!」
キール 「ダメだよ!!ブロンクスを殴ったら、駄目だ!
      ウオッカが逆にやられちゃうよ!」

ウオッカ「…(-_-;)確かに、な。
      分かった。腕を離せ、行かないよ。
      必死なんだな、キール。そんなに好きなのか…分かったよ。
      だが、許せねぇ…あいつ、体報酬で契約してるようなもんじゃねぇか。
      何のために、お前は娼館を出たんだ…まだ同じことをしてるのか。
      教えたよな?お前は、誰のものでもない…」
キール 「分かってるよ。自分の体と心は、おれのものだ。分かってる。
      でもこれは、自分を大事にしてないっていうのとは違う気がするんだよ。
      おれが、したくて、してるんだよ…ウオッカ、なんかこんな話、
      すごく恥かしいや…(-_-〃)。だって、ブロンクスと交わるのは、
      イーブの店での、行為とは、ぜんぜん感じ方が違うんだ…」
ウオッカ「云わなくていい!!そんなことは、もう聞きたくない!」

キール 「!ごめん、ごめんね、ウオッカ。怒らせた?悲しませた?」
ウオッカ「いや、怒鳴って悪かった。怒ってないさ。すまん。
      お前が、まだ子供だと思ってたから、俺もつい、カッとした」
キール 「子供じゃないよ、おれ。もう16だもの」
ウオッカ「ガキだよ。未成年だ。未成年は、性行為は禁止だ」
キール 「そうなの?だって、イーブの店では、もっと若い時からしてたのに、
      そんなのおかしい…」
ウオッカ「おかしいのは、分かってるよ。でもダメなんだ。こっちじゃ犯罪だ。
      成人しないとダメな、こっちの世界の、大人のルールなんだ」
キール 「ああ、そうか。こちらの世界のルールなんだね…。
      だからもっと世界を知ってから、恋もしなきゃいけないんだね。
      分かったよ、ウオッカ。恋のせいで、警察に捕まらないようにするよ」
ウオッカ「…いや、あのな、恋で捕まることはないけど…うー、
      いや、そうだ、捕まるんだ。とにかく、あんまりヤツと寝るな(-_-;)」
キール 「うん。じゃあ減らすよ。大人に迷惑をかけるのは、良くないものね」

ウオッカ「キール、それは違う。大人に迷惑は、かけたっていいんだ。
      オヤジも、キールが虐められたことをまず話してくれてたら、
      喜んで相手に文句を言いに行っただろう。
      学校なんか通すのは面倒だから、直通で行くだろうな。
      キールが素直に話してくれることが、オヤジには嬉しい」
キール 「そう、かな?ボスは、困らない?」
ウオッカ「困るわけがない。おれのオヤジだぜ?
      それくらいのこと、面倒な心配事だとあの男は微塵も思わねぇって。
      お前らに頼られる方が、学校嫌いよりも、俄然嬉しいし、勝つ。
      そうすれば番犬も処罰されなくて済んだだろうし、
      お前だって、罪悪感を抱くことなく安心できたんだ」

キール 「そう…。本当は、そうした方が良かったんだね」
ウオッカ「大人が困るのは、子供が勝手な判断をして、相談をしてくれないことなんだ。
      いいな?次に困ったら、番犬に任せるんじゃなく、オヤジに…
      お前の養父でもいい。相談しろ。もっと養父も頼ってやれ。
      お前だけの親なんだからな。ダメならボスでも、俺でも、
      身近な大人に相談しろ。
      …あ、でも、ラスはダメだぜ。ラスティ・ネールはダメだからな」

キール 「ラスティ先生?どうして?彼に相談するのはダメなの?」

ウオッカ「ヤツは退廃刹那主義だから、将来への奉仕と生産性がない。
      成り行きが混乱する方に加担する傾向があるしな。
      まぁ正論も混ぜて云うから、騙されるし判断は難しいが…
      とにかくヤツは悪魔で、詐欺師で、人を騙す…キラとそっくりだな。
      …ん?キラがラスにそっくりなのか??」
キール 「ラスティ先生は、悪魔なの?」

ウオッカ「要するに、悪い大人だ。あんまり、近づくなよ。
      なんせキラの師匠だからな。オヤジだって騙されてるんだから」

キール 「ボスが?そういえば、キラもそんなこと云ってたよ。
      でも悪魔には見えないけど。彼は優しくて、セクシーだよ?」
ウオッカ「いいか、キール。悪い大人は、魅力的なものなんだ。
      警察よりもあの男に捕まらないよう、気をつけろ」
キール 「ウオッカ、でもさ…。
      ボスが『ラスはウオッカの初恋の人なんだぜv(^o^)』
      って云ってたよ?そんなに悪口言うなんて、変じゃない?」


ウオッカ「!!Σ(@◇@;)…地獄に堕ちろ、クソ親父め…。
      いいか、あのな。恋ってのは 自分にさえ騙されるもんなんだよ。
      そういうものなんだ、覚えとけ、キール」



次の部屋を観る