奇跡のクリスマス

登場人物:エンゼル 番犬 キラ 他
場所:
オフライン・カフェ
(クリムゾン・キャッスル)


※この物語はセリフ劇場「クリスマス・プレゼント」の続編になっています※




番 犬 「楽しそうだな エンゼル」


エンゼル「おう 最悪だ てめぇの君主はまったくタチが悪りぃ 今更だがよ
       てめーが美少年ばっか構ってるからだぜ 番犬?
       どうせなら 俺に美少年のお守をさせろってんだよ」
番 犬 「美少年に鞍替えか?」

エンゼル「アホか 俺に面倒な方を押し付けんなって云ってんだよ」
番 犬 「お前じゃ キールが怖がるからな」
エンゼル「そっかぁ? お前と付き合ってる時点で クリアだろ」

番 犬 「エンゼル お前がキールに招待状を出してくれるとは 思わなかったぜ」
エンゼル「まぁな… まぁ たまにはクリスマス・プレゼントだよ」
番 犬 「そうか 悪かったな」
エンゼル「へ!?Σ( ̄□ ̄) たまげたな お前に礼を言われるとは思わなかったぜ
      お前が他人のことで 感謝を表すようになるなんざなァ
      やっぱあの美少年と付き合うようになって 腑抜けになったかよ?」
番 犬 「キールは関係ない お前に気を遣わせたかと思っただけだ」

エンゼル「ハァ〜 クリスマスの奇跡だな キラの野郎にはキスされるし
      地獄の番犬には 感謝されるし 散々だ こんな奇跡はいらねぇよ」
番 犬 「感謝して嫌がられるとは テキストには書いてなかったがな」
エンゼル「フン テキストだぁ? これだからガッコウへ行ってるヤツァ
      気にくわねぇんだよ 犬が学校なんかに行くかよ やめちまえって
      なぁ そんなことよりだ あいつ…キラなんだけどよ」
番 犬 「なんだ」

エンゼル「キラの奴 どっか変だぜ今日? いつも通りに見えて 妙に違う気がすんだよ
      なんつーか うまく言えねぇけど… 最近 何かあったか?」
番 犬 「どういう風に違う?」
エンゼル「だから言葉で言えれば 苦労しねぇよ ただな なんかわかんねぇけど
      あいつの態度に落ち着かない …とでも言っとくか」
番 犬 「別に何もない あいつは 心理戦が好きだからな
      わざと気を引く行動を起して 他人を惑わすのが得意だ
      長年あいつとつきあってて 手管にまんまと嵌るのは お前くらいだ
      トリ頭 キラは普段通りだ お前がキラの心配とはな
      それこそ お前がどうしたんだ」

エンゼル「トリ云うな!! 別に心配じゃねぇよ! 言っとくけどな
     俺はお前より キラとの付き合いが長げぇんだよ …悪い方向にだがな
     だから てめーにわかんねぇことが 俺には分かる …かもしんねーだろが」

番 犬 「キラといる時間は 俺の方が長い 計算してもいい」
エンゼル「あ〜そうかよ お前とそういう議論は無駄だったな!
      もういいぜ 忘れろ 忘れてくれ キールのとこ 行ってやれ」
番 犬 「エンゼル」
エンゼル「なんだよ?! まだ何かあんのかよ!」

番 犬 「キラに 惚れるなよ」
エンゼル「はぁ?! 誰に何だって? そりゃ聞き捨てならねぇ冗談だな」
番 犬 「冗談じゃない キラに惚れるな 簡単なことだ
      あいつに取り込まれるな あいつの言動を気にかけるな
      さっきみたいな ふざけたマネは 二度とするな
      今度 お前がキラに触れようとすれば 俺はその腕をねじりあげる
      以前みたいにな 俺に仕事をさせるなよ エンゼル」
エンゼル「何なんだよ? キラの護衛を俺に頼んだのは お前だろが
      信用してくれてたんじゃねぇのかよ」
番 犬 「信用じゃない お前が一番 この中で妥当だっただけだ」
エンゼル「あーそうかよ… で なんだって?
      今後 キラ様の顎に手をかける時は お前の許可がいるってわけかよ? ああ?」
番 犬 「俺じゃない ボスの許可だ」

エンゼル「なんだそりゃ 過保護か キラが嫌がってなきゃいいだろが」
番 犬 「キラは」
エンゼル「あ?」
番 犬 「お前に手を出されても 叫び声をあげなかった」
エンゼル「おいおい 手を出すって… 人聞き悪いこと言うなって
      ただ顎に触れただけだろが 咄嗟のことで ビックリしたんだろ
      そういう顔してたぜ?」

番 犬 「あいつは 人に触れられることに 敏感だ
      お前に それを許したのは ―――意外だった」
エンゼル「な… だッだからナンダよ?! てめぇ 変だぞ番犬!!
      もしかして おまえ …妬いてんのか??」

番 犬 「妬く? 何故 俺が妬く? どういう意味だ」
エンゼル「どういう意味って つまり キラに触った俺に 嫉妬してるってことだろ…
      いや…何言ってんだ俺は ありえねえよな けど
      とにかく なんだか 妬いてるように見えるぜ」
番 犬 「俺にそんな感情はない」
エンゼル「…だろうけどな てめぇこそ キラに惚れたりすんなよなッ 番犬」

番 犬 「――なんだと 俺が? キラにか」
エンゼル「そうだよッ って なんなんだこの展開は… なんでこんな話になってんだ?」
番 犬 「ありえないな」
エンゼル「ありえねぇか だよな 分かってるさ 薄笑いすんなって こえぇから
      俺が悪かったよ ありえない話だったな そうだろうな
      けどな ありえねぇことってのはな 特に恋とか愛とかの類には
      起こりやすいもんなんだぜ 覚えとけ」
番 犬 「…経験談か?」

エンゼル「人の受け売りだよ!! うるッせーな! どうせ俺は経験値低いよッ!
      失恋キングだよ! だから何だよッ 文句あっかよ!」 
番 犬 「…覚えて おこう」

エンゼル「ケッ! 感じわりィんだよ てめぇはよ!! 番犬が笑いやがって…クソ
      あ〜〜 お前なんかに惚れるキールの気持ちがわかんねェよ〜ッ!」
番 犬 「キールは 俺に惚れてるわけじゃない
     互いに利用できるものを 共有しているだけの関係だ」
エンゼル「ハァ?! あ〜〜〜これだからな… ガキかよ
      だっっっから お前はガキだってんだよ!!
      ったく 突っ込みどころが わかんねぇよ!!」
番 犬 「…ガキじゃねぇ」

エンゼル「そこに拘るなっつーの キールがお前に 惚れてないだぁ?!
     そんなのは 色恋に疎い俺だって おかしいと思うぜ!」
番 犬 「お前に 人が恋愛というものをしているか していないか
     見ただけで わかると言うのか お前には無理だろう エンゼル」

エンゼル「…てめェ それは俺が MB生まれだから 無理だって言ってんのかよ?
     ああッ?! どうせ俺に心情なんか分かりっこないってことかよ
     てめぇなァ 親しき仲にも礼儀ありって…」

番 犬 「待て エンゼル …その話は また今度だ」

エンゼル「…なんだよ? どこ見てんだ またキラかよ?
      てめぇのキラ様が口説かれでもしてんのか? なんで分かるんだ
      眼ン玉いくつ付いてるんだ 後ろにもあんじぇねぇのか?」
番 犬 「二つで 前だけだ 毛等の違うヤツがひとり 混ざってるぜ
      ここはセキュリティが甘いな さっさと退散するべきだった」

エンゼル「ああん?」




男 「やぁ キラって君? 噂よりずっと 美少年…だね…?
   今日は噂のボディガードは いないのかい? なんだっけ? ポチだっけ?(笑)」

キラ「あんた 誰」

男 「俺? このチームに友達がいてさぁ 混ぜて貰ったんだ 一般人なんだけど
   ハッカーチームのクリスマスパーティに 参加できることなんて
   滅多にないからね♪ だから実は ちょっと浮かれててさ♪」

キラ「そう」

男 「ん〜〜? なんかイメージ違うなぁ〜? 噂と違って大人しいんだねぇ?
   天才美少年ハッカーのキラって もっとクールで生意気な小僧だって
   聞いてたんだけどなぁ 噂は噂か? まだ子供じゃんか
   ねぇ? あっちで俺と ゆっくり話しでもしない?」

キラ「しない」

男 「つれない一言だなぁ 傷ついちゃうよ 俺は別に 危険なおにーさんじゃないよ?
   なぁ いいじゃん? せっかくクリスマスなんだし お近づきになろうよ
   さぁ 一緒にあっちで―――」


番犬「おまえ キラに触るな」


男 「!!――――ヒィッ!…うわァ!! なッなんだよッ お前…!」


キラ「何を 勘違いしてんのか 知らないけど アンタ」

男 「え…?」


キラ「このオレ様に 簡単に声をかけられると 思うな
   まして 触れられるなんて 思うなよ
   番犬はどこからでも見てるぜ
   ケルベロスの噂は アンタの棲む世界では 中途半端なのかな?
   一般人までには 正確な噂は届いてないんだ?」

男 「え… ケルベロス… って ヘルハウスの 噂の番犬…? ほ 本物…?」

キラ「こいつはね ペットじゃない 俺を護る 番犬だ
   必ず仕事はする 舐めないで貰いたい
   あまり一般人が オフカフェで大きな顔をしない方がいいぜ
   異人さんは家へ帰りな でないと あんたの友人は
   恥をかくどころか こっちの世界に 二度と居られなくなるぜ?」

男 「―――――」

キラ「今後 俺の近くをうろついたら お前の喉元を この番犬が噛み千切るぜ」

番犬「脅しじゃない 気をつけて 歩け」

男 「…ヒィッ! た 助けて……!!」


エンゼル「おいおい てめぇら 人んちのシマで 物騒なことほざいてんじゃじゃねぇよ
      一般人 脅すなっての 番犬! つーかな… あーもう 面倒くせぇ
      オイ!! 
誰だァ!? 外の人間なんか 入れやがったのはッ!!
      
いいか 誰とは聞かねぇ! 客人には今すぐ帰って貰え!
      …あんたもな いい気になって 別世界なんかには 近づかねぇことだ
      俺らには ルールがある それを知らねぇヤツァ どんなヤツでも
      この『深紅の城』には 出入りできねぇんだよ 分かったか」

男   「は はい… すいませんでした…」

エンゼル「おい! 誰でもいい 客人を玄関までお送りしろ!!」



エンゼル「ったく お前らが来ると マジろくなことになんねぇな!
     さっさと帰ってくんねぇかな? 俺の神経がもたねぇからよッ」

キ   ラ「ねぇエンゼル 教えてよ? おまえらのルールって 何?」
エンゼル「うっせーな! ハッカーであることだよッ!」
キ   ラ「うっわ!! ベタベタ!てか
     エンゼルのチームなんてさぁ ハッカーですらないじゃん?
     あんたらのお粗末スキルっていったら 一般人にも負けてんじゃない?
     なーんだ そんなルールかよ ケッサクゥー!!」

エンゼル「〜んだとォォ!! てぇめぇ!! ホントもう帰りやがれ!!
     俺が暴れんうちになァッッ!!帰れぇーーーー!」

エレナ 「まぁまぁ ヘッド! クリスマスにそんなに怒らないの!
      もういいじゃない あっちで 乾杯しようよ♪ ねッ
      そうだ リージョン・オブ・ドゥームのルシアンが来てるのよッ♪ ヘッドに挨拶したいってさ」
エンゼル「なんだって? マジでブラック・ルシアンか?!
      誰なんだよ そんなレベルの高い奴を 呼んだのは… しょうがねぇな」





キラ「あ〜 面白いなァ…
   クリスマスパーティって こんなんだったんだ 愉しいなァ♪
   もっと早くに来れば良かったなぁ〜 毎年来ようかな」

番犬「啖呵だけは冴えてたな お前」

キラ「何だよ 仕事させてやったんだから 感謝しろっての
   本当は番犬なんて ただの腑抜けだっていう 噂が流れても良いのかよ?」

番犬「お前はその方が 良いんじゃないのか」

キラ「でもおまえはイヤだろ ヘタレだぜ? ヘタレ番犬だ
   前にも一回あったよな キールにやられた時だ あの時のヘタレ噂が
   まだ消せてないのかな?」

番犬「別に嫌じゃない お前の挑発には慣れた 怒らせようとしても無駄だ
   ヘタレ噂でも 俺は全然構わない
   それが本当か嘘かは お前に近づいてみれば分かることだ
   分かった時に後悔しても もう遅いがな」
キラ「おや 大した自信家だこと 恐れ入るね
   まぁせいぜい俺を 護ってくれよ 地獄の番犬さん
   本物だって信じてない アホな刺客らも まだ沢山いるからな」

番犬「お前は 俺を 信じているのか キラ」

キラ「――何?」

番犬「必ず俺は仕事をすると そう言っただろう お前
    本当に そう思っているのか」

キラ「そうじゃないのか?」

番犬「いや そうだ 俺は仕事はする」
キラ「だろ じゃあそれでいいじゃん 何よ?」
番犬「お前が そう言うとは 思わなかった」
キラ「は? 別に啖呵だもん ハッタリだろ
   まぁ お前がペットに見える奴は いないとは思うけど
   それくらいは言っておかないと また襲われるかも知れねぇからな」
キラ「ハッタリか 本当は信じてはいないと云うことか」

番犬「…だから何なの!! ハッキリ言えよ!
    さきから何だよ!? らしくねぇなァ!! 俺に何を求めてんの!?
    良くやったって 頭でも撫でて欲しいのかよ! はん?!
    お前を信じてるかって? 冗談だろ お前なんか信じちゃいねぇよ!
    ただ 知ってるんだよ!!
    真面目でアホで バカラの言うことを 忠実に聞いて
    一方的な契約をバカ正直に守る バカ犬だってことを 知ってるんだよ!!」

番犬「…バカじゃない」
キラ「だーから そういうとこがバカなガキなんだよ お前は
   スルーしろよそこは 賢いヤツなら普通はスルーするとこなんだよ」
番犬「(ーー)
ムッ

キラ「お前がバカラの命令通りに 俺をちゃんと守るのを知ってるよ
   …それだけだ 何回も言わせんなよ うざいっつーの
   俺もう 帰るわ 結構遊んだし お前はキールと一緒に残っていいよ
   どうせオフだったんだ ハイ! じゃ ここで解散!!」

番犬「できるかアホ お前を家にブチ込んでから 俺は戻る
    別にキールは放っておいても 楽しんでるようだがな」

キラ「放っておくと 悪い虫が付くかもよ?」
番犬「エンゼルがいる 悪い虫ってどういう意味だ」
キラ「エンゼルのこと 信用してるんだ?」
番犬「お前よりは多分な いいか 家に戻ったら 大人しくしてろ
    どこにも行くな どうせお前のウェブカメラは どのパーティでも
    覗き見できるんだろうが」

キラ「フン じゃあ大人しく家で お前とキールのラブラブぶりでも
   観察してることにするよ! …お前の優先順位って どっち?
   キールと 俺のさ」
番犬「おかしなことを聴くな お前に決まってる」

キラ「お仕事だから?」

番犬「そうだ お前の用心棒が俺の最優先だ 他にはない」
キラ「だよね でも今日は本来 キールとデートだったんだろう?
   オフは仕事しないんだろ? なんで今日はつきあったんだ?」
番犬「オフは関係ない お前を護る それが契約だ
   お前が外出するなら 俺は付いて行くだけだ いつでもだ」

キラ「あっそ せっかくの休みの日にお前を借りちゃって キールには悪かったね」
番犬「そう思うなら 最初から参加すると言わなきゃいいんだ ボケ」
キラ「…前言撤回 二人の邪魔できて チョー気分最高〜(ーー〆)」
番犬「お前は 性格が悪いな」

キラ「今更言われなくても 知ってるよ
   これからも せいぜい俺が死なないように 俺を死守してろ 番犬」
番犬「大丈夫だ 俺が側にいれば お前は無事だ それは間違いない」

キラ「期待してないよ」

番犬「でも知ってるんだろ」

キラ「ああ 知ってるよ 知ってるってことは 大きな武器だよ
   もっとも 信用できる情報であれば だけどな」
番犬「信用していい」
キラ「お前の 強さを?」
番犬「そうだ」

キラ「お前は 確かに強いかも知れないけど
   でもさ 結構肝心な時に マヌケだよね お前って だろ?」

番犬「・・・・・」

キラ「あれ 図星だった? あらら 自覚はあるんだ アンタ…」
番犬「お前が 俺を騙して消えるからだ それは俺の責任じゃない」
キラ「俺の手管に簡単にひっかかるお前がマヌケなんだ お前も案外
   エンゼル並みなんじゃないの? でも だけど」

キラ「だけど その方が 人間らしい
   ミスがある方が
   地獄の犬よりも 人間らしいぜ 番犬」

番犬「俺は人間だ」

キラ「だから そこはスルーしろって お前の天然は大概だな
   それじゃ そろそろ帰るか…

   よう! 帰るぜ エンゼル! 今日は激楽しかったよ〜♪
   それじゃあねぇ〜 みんな!! また来年 来るよ!
   今夜は 最悪のクリスマス・イブ・ナイトを 楽しみな!!
   
地獄で会おうぜ BABY!!


「♪キラさーん! ヘルズ・メリー☆クリスマス!!」






キラ「…帰るぜ 番犬 …なぁ?」

番犬「なんだ」

キラ「今日はもう  エンゼルも キールも 全部放っておけよ
   もう 戻らなくていい …戻るな
   俺を 見張ってろ 他に 余所見すんな」

番犬「じゃあ お前の部屋で 続きでもするか せっかくのイブだ
    さっきシャンパンを 貰ってきておいた」

キラ「――くすねたのか? 意外とチャッカリしてんなァ お前…(ーー;)
   まぁ――たまには そういうのも いいな
   地獄の番犬と クリスマス・イブなら お誂え向きのヘルナイトだ」




「帰って 家で 乾杯しようぜ

        メリー・クリスマス―― ブロンクス」



END

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