桜 祭 り 

場所:国立植物園 桜公園特別一区

四 

登場人物:/ブラック・ルシアン
(所属:ハッカーチーム「リージョン・オブ・ドゥーム」)
/ラスティ・ネール(ラス)(所属:「電脳タブロイド社」)

ルシアン「よ! マスター 飲んでるかい? 良い花見の宴だなぁ」

ラ ス 「ルシアン おまえも来てたのか 外に出てくるなんて珍しいじゃないか」
ルシアン「まーな バカラ父親の招集じゃ 出ないわけにゃ行くまいよ」
ラ ス 「バカラは本当にガキにモテるな チーム宴会はどうした」
ルシアン「チームの宴会は抜け出してきたんだ なんか色々やって来て騒がしくてな
     マスターは…ひとりか?」
ラ ス 「いや キラがいたんだが…どこに行ったかな」
ルシアン「えッ キラが来てるのか?こんなことに顔出して大丈夫かよ」
ラ ス 「そうだな あいつは出歩くと標的だからな
     でも番犬もついてるし 大丈夫だろう あれが護身に付くせいで
     最近はよくキラも出歩いてるようだしな」
ルシアン「ああ噂の地獄の番犬か クリムゾン・キャッスルで一度見たことがあるぜ
     かなりのご面相だったよな おっかねぇや あれじゃ誰でもビビるな」
ラ ス 「深紅の城で? あそこはおまえらのチームの溜まり場じゃないだろう?
     あそこはマフィア・ボーイズの縄張りのはずだがな」
ルシアン「ガキどもに詳しいねぇ さすがマスターだ
     でも俺らオフカフェには溜まらねぇんだよ それは知らなかったかい?
     俺のチームが集うのは バーチャルのオンラインカフェONLYだ
     だからオフカフェに縄張りはないし どこだって出入り自由だ
     もっともあんま気にくわねぇチームがいることにゃ 行かねぇけどな
     けどマフィア・ボーイズは俺のダチもいるし 深紅の城にはたまに行くんだ 
     あそこは店主のコーラルが遊びに来てってしつこいから な」
ラ ス 「へぇ 美女コーラルからお誘いを受けるとは隅におけねぇな ルシアン」

ルシアン「…別に コーラルには興味ねぇもん 俺…」
ラ ス 「おや 美女タイプには興味ないのか どんなのがタイプだ?
     お前のチームは最近入団したいチームの上位にランキングされてて
     ヘッドの人気も高い筈だ もてるだろうルシアン
     どんな女も選び放題だよな 羨ましいことだ」
ルシアン「よせよ …マスターは どんな女が好きなんだよ」
ラ ス 「俺か?俺は女より男だな 俺の噂は知ってるだろ」
ルシアン「しんねぇよ つか信じてねぇよ 師匠の悪い噂信じる弟子がいるかよ」
ラ ス 「ちょっと仕事を頼んだだけで弟子になるのか お前?」
ルシアン「だって!ラスティネールの仕事だぜ?!今までキラしかやってなかった!
     キラの替わりになんと俺だぜ?すごくねぇ?今の俺の最高の自慢だよ」
ラ ス 「何だか嬉しそうに見えるな」
ルシアン「嬉しいさ! ブラックリスト5位内よりも嬉しいね!」
ラ ス 「ふーん何が嬉しいかね ハッカー小僧の考えることは わかんねぇな」
ルシアン「あんた 自分がどんだけ憧れの的なのか 知らないのか?」
ラ ス 「しらねぇな キラならともかく 俺は単なる淫乱オヤジだよ」
ルシアン「そのキラが一目置いてる人物だ だったら想像はつくだろ
     自分で淫乱なんて言うなよ…あんたは そんなんじゃない」
ラ ス 「…なんだろな お前と喋ってると ちょっと居心地が悪いな」
ルシアン「えッ 居心地悪い?Σ( ̄□ ̄)! お俺なんか気に障ること言った?!」

ラ ス 「まぁ…そうじゃないが お前みたいな正規の正しいタイプには弱くてね」
ルシアン「正しい?俺のどこが? てか弱いってどういう…その あのだな もし…」
ラ ス 「ぞくっとくる感じ 禁断の恋に落ちそうな感じだ ルシアン
     さぁ飲めよ 注いでやる おっさんと一緒に桜見するくらいは いいだろう?」
ルシアン「マスターは 全然おっさんじゃねぇよ… いや注がなくていいって
     俺… もうこれ以上酔うと…すげぇヤバイ感じするしよ」
ラ ス 「若者が何言ってる 飲める口だろ? 今日は本当にいい天気だな
     たまには太陽の下で 健康的に陽の光を浴びるものいいものだぜ?」
ルシアン「いや そういうヤバイじゃなくて …わざとか師匠?」





五 

登場人物:ウオッカ(無所属フリーター)
/キール
(所属:「電脳タブロイド社」)

ウオッカ「キール! 元気だったか?久しぶりだな!」

キール 「!…ウオッカ? 凄く久しぶりだね 俺は元気だよ」
ウオッカ「そうか 良かった 暫く顔見てやれなかったからな
     でも学校も毎日行ってるようだし 学校楽しいか?」
キール 「学校は楽しいよ 心配してくれてたの?」
ウオッカ「ああ 電タブ社にもバイトに行ってるんだろ?
     もう心配はないな クソオヤジが見てる」
キール 「ボスはいつも忙しいよ でもキラとブロンクスが一緒にいてくれる」
ウオッカ「…キラが?」

キール 「うん 学校で俺が苛められないように 学校にいる時だけ
     ブロンクスを貸してくれてるんだ ブロンクスを…知ってる?」
ウオッカ「地獄の番犬だろ 通称ケルベロスだ オヤジがキラにつけた用心棒」
キール 「ケルベロスって どうしてそんな名前がついたんだろう」
ウオッカ「都市伝説さ 最後の武道派ギャング団『ヘルハウス』で
     恐れられていた地獄の番犬だと 誰かが言出だしたんだ」
キール 「それは知ってるけど だってまさか本物じゃないでしょう?
     ヘルハウスのことは 俺だって噂はきいたことあったもの」
ウオッカ「奴等は暴力の限りを尽くす残虐な集団だったし 誰もが怯えてた 
     ハッカー連中は 力でものを言わせるバカな連中だと見下げていたが
     本心は恐怖でいっぱいだったのさ ハッカーは頭脳の拳でないと戦えない」
キール 「でも捕まったんでしょう? ヘルハウスのメンバーて」
ウオッカ「ああ ヘルハウスの門番で まさに地獄の番犬だったケルベロスも捕まった 
     だからヤツが…ブロンクスが キラの用心棒に雇われた頃に
     そのニックネームがついたのさ 本物は捕まってる筈だ
     だけど恐怖の対象が去ったあとは 妙な噂が出てくるもんだ
     キラの後ろで 地獄から這い出てきたよな狂犬が タイミングよく
     警護してるんだ 瞬く間に噂にもなるさ 地獄の番犬だとな
     だが もし本人なら 今頃は檻の中だろう 殺人鬼だって噂だ
     いくら酔狂なオヤジでも そんなヤツをキラの用心棒にはしないだろう
     …多分な」

キール 「そう だよね ブロンクスは 面構えが恐いからね
     そんな噂が立つのも 分かる気がするけど」
ウオッカ「ヘルハウスのケルベロスは 血のような涙を流したって逸話もある
     だからアイツは あんな悪趣味な刺青を入れてるんだろう こけ脅しだ」
キール 「そう?でもあの刺青 カッコイイよね」
ウオッカ「キール 恐くないのか あいつが」
キール 「最初は恐かったけど でも今はあまり恐くない
     俺のこと 学校で庇ってくれたんだ」
ウオッカ「ケルベロスが?!まさか何かされてないだろうな キール」
キール 「・・・・されてないけど …提案はあったよ」
ウオッカ「提案? なんだそれ」
キール 「別に…言いたくない 言ったら多分 ウオッカは怒るもん」
ウオッカ「俺が怒るような提案を あいつにされったっていうのか」
キール 「違う いいんだ 俺だってちゃんと考えてるんだ
     だから 心配しないでウオッカ 怒らないで どう言っていいのか
     わからないんだ でも ブロンクスは悪くないんだ」
ウオッカ「…おまえはすぐ悪いのは自分だと思い込むからな 心配なんだ
     自分が不幸になるのは おまえのせいなんかじゃないんだぜ?」
キール 「分かってる もう思ってないよ ちゃんとウオッカに教えて貰ったし
     わかるようになったよ でも うまく表現できない まだ
     ブロンクスの ことは 俺 何か変なんだ
     お願いだよ 急がせないで ちゃんと勉強して 全部話せるように
     なるから ウオッカは 俺の恩人で 本当に大事な人だ
     でも恋人じゃない それも 分かったんだ」

ウオッカ「…そうか 悪かったよキール 慌てることはないよな
     心のことは マザーBOX生まれでなくても 難しいもんだからな」     
キール 「ウオッカは 他人の心が分かる人だよ 尊敬してる」
ウオッカ「そうでもないさ 俺はお前が思ってるような人間じゃないんだ 本当はな」
キール 「ウオッカ?」
ウオッカ「引き止めて悪かったな イーブに 会ってくるよ じゃあな」
キール 「イーブ 俺もさっき会ったよ 良い顔してるって 誉められた」
ウオッカ「そうか イーブは良く見てる 俺みたいに何かに捕らわれたりしない」
キール 「どうしたの ウオッカ 俺のせいなの? 変なこと言ったから?」
ウオッカ「違うよ キール 違う おまえのせいじゃない 俺の問題だ
     …キラは 今日の花見に 来てるのか?」
キール 「うん 来てるよ? さっきブロンクスと どこかに行ったけど
     キラは 人気者だから」
ウオッカ「そうだな 良くも悪くもな キラの傍にいるなら お前も気をつけろ」
キール 「平気だよ ブロンクスがいるからね 羨ましいよ キラが」
ウオッカ「ケルベロスは キラと仲がいいのか? まさかな」
キール 「仲は良いのかな…よくケンカしてるけど 不思議な感じ
     ブロンクスは どんなに悪態をついても 必ずキラを守るよ
     キラに触る奴には容赦ないんだ 羨ましいって思うのは変かな」
ウオッカ「キラはケルベロスと……て…るのか」
キール 「え?」

ウオッカ「いや 何でもない 気にすんな 桜に酔ったかな…
     キール タブロイド社の連中をよろしく頼むぜ
     マザーはあっちで男漁りをして迷惑がられてたし
     バカ親父はいい歳して ガキどもと飲み比べをやってる
     連中を連れ戻して大人しく花見させといてくれ 頼んだぜ」
キール 「うん わかったよ またね ウオッカ」

ウオッカ「ああ 随分うまく笑えるようになったんだな キール」





六  

登場人物:/バカラ/キラ/Dマザー/ミモザ
/キール/ラス/ブロンクス(番犬)
(所属:「電脳タブロイド社」)

バカラ「よ〜ぅ! みんなご機嫌さんで やってかぁ?」

マザー「あらボス ずいぶん上機嫌でやってきたみたいねぇ 飲みすぎよ
    まったくフラフラして うちはボス不在で まとまらないじゃないのよ!」
バカラ「俺が居たって まとまってねーだろ お前ら」
マザー「そんなことないわ キールがみんなを探して集めてくれたんだからネ
    だから電脳タブロイド社は ただ今全員 揃ってまーす♪」
バカラ「やっぱり全員フラついてたんじゃねぇかよ
    キールすまんな ありがとよ おまえは人を見つける才覚があるな」
キール「え いえ ウオッカが探してくれて 俺は声かけただだから…」
マザー「あーら バカ騒いでるいい加減な電脳タブロイドのアホ社長を
    探すのだけは 簡単だったわよねぇ キール?」

キ ラ「まぁまぁ バカラもマザーも落ち着きなって キールが困ってんじゃんか
    漸く全員揃ったことだし 電タブ社もひとまず乾杯しますかね?
    ささッバカラ社長♪ 乾杯の音頭をドウゾ〜!!」
バカラ「よっしゃぁ! 今後の我が社の発展とバカ儲けを祈願して
    かんぱーーーい!! そして解散ッ!!」

キ ラ「まーた解散させちゃったよ このひと」
マザー「まったく もう しょうがないわねぇ」
バカラ「楽しんでるかぁミモザ! 今日はいい日だなぁ ウオッカも来てくれたし
    奴の幼馴染のイーブも 悪たれチーム小僧も お堅い奴らも
    同じプレートの上で アホ面下げて呑気にお花見だ
    こんないい日があるかい… なぁミモザ?」
ミモザ「ボスの采配のおかげです みんな喜んでるみたい…」
バカラ「そうか? だったら良かったけどな 俺はなァ
    ミモザが はにかみながら 楽しそうな顔をしてるのを
    見るのが嬉しくてなぁ… 事務所じゃいつも不景気な顔してっからなァ」
マザー「やだボスったら 酔ってミモザにセクハラしないでよね?」
バカラ「セクハラ? セクハラじゃねぇよなぁミモザ ん やっぱセクハラか?」
ミモザ「いえ あの…ボス 私 事務所にいるときも 楽しいですけど…
    もちろん 今も楽しいデス… ボスのことは 好きだし…」
バカラ「だったら尚いいがな 昔よくキラに苛められて泣いてただろう?
    俺はそれが凄く申し訳なくてなぁ あの頃はすまんかったなァ」
ミモザ「それは今も変わってない デス…(涙目)」
バカラ「そうなのか? キラ! ミモザはお姉さんなんだぞ!ちゃんと敬え
    おまえは本当 年上を立てるってことを知らんからなァ
    なんでそんな風に育っちゃったんだろうな」
キ ラ「そりゃバカラの教育方針に問題があったからに決まってんジャン
    俺はミモザは大好きだよ? こんな面白いペット持ってる奴いないもんね♪」
マザー「んまー!!ミモザはあんたのペットじゃないわよッ!
    あたしのよっ!」
キ ラ「いーや 俺のだね そうだろ? ミモザおねぇさま」
ミモザ「Σ( ̄□ ̄)!(びくぅ)!!」

キ ラ「!…いッてぇ! 何だよ天才の頭を殴るなよ なんで殴るのぉパパァ」
バカラ「うるせぇパパいうな! お父さんと呼べ クソガキが
    ミモザを苛める奴は俺が許さんぞ ミモザはなぁ うちの紅一点だ
    大事な娘を預かってる俺の信用を失くすようなことは許さんのだ!」
マザー「ちょっと紅二点でしょ? あたしだっているんだからん♪」
キ ラ「マザーはオカマじゃん」
マザー「んまッ それは差別用語よ! 言い直しなさいよキラ
    あんたみたいなのが 弱い者虐めをするのよね この性悪!」
キ ラ「じゃあなんて呼べばいいんだよ マザーは女じゃねぇだろ」
マザー「呼びたければ お姐サマとお呼びなさいな ホホホ」
キ ラ「ぷはッ! あんたはオネェさまだろ この男女が マザーのカマカマ
    ヒステリーオカマ〜!化け物オネェのヒスカマ野郎〜♪」
マザー「こ・のォ〜 キィラァァァ!! もう容赦しないわよッ
    こんのクソガキぃぃぃぃ〜〜!!あんたが腕力無いの知ってんだからね!
    この華奢な足腰! 無駄に綺麗な顔! ムカつくわぁ 覚悟しなさいよ!」
キ ラ「ちょ ちょっと待てよ 待って下さいマザー!やだっ 番犬!番犬!
    おまえな仕事しろ!! 俺を助けろよ!?」
番 犬「今日はオフだ 心配しなくとも危険だと俺が判断すれば 助けてやる」
キ ラ「何ソレ?! 判断すんのは俺だっつーの! クビにすんぞ駄目犬が!
    ややややや止めろってばマザー!!くすぐるの反則…キャーー!!」


ラ ス「何だか浮かれてるな 2人とも」
バカラ「あぁ?毎日毎日 機械の箱と向きあってストレスが溜まってんだろ」
ラ ス「マザーは分かるが …キラは 何だかはしゃぎ過ぎじゃないか」
バカラ「そ−か? 子供らしくて 良いじゃねぇか」
ラ ス「あんたは 本当に気楽なオヤジでいいな
    キラは大人ぶってるのが アイツらしいんだ」
バカラ「難しく考えるのは面倒くせぇよ ほっとけ ほっとけ
    あれもそろそろお年頃なんだろよ 思春期のガキなんか相手に出来るか
    どうだキール?楽しんでるか? 仕事はもう慣れてきたか?」

キール「え あ はい でもまだ慣れないことも多いけど
    ここの仕事は やってて楽しい気がする」
バカラ「そうか そりゃ良かったな 仕事は楽しくやるのが一番だ
    続けていきゃ辛いことも勿論あるが 困った出来事に出くわすのは
    お前がワンランク成長する大事なチャンスだ 逃げずに頑張れよ」
キール「ワンランク成長の チャンス?」
バカラ「自分の体は放っておいても 何か食ってりゃ成長するもんさ 
    だが心はな 雑多な感情を食って成長していくんだ
    楽ばかり食ってちゃ 栄養が偏るぜ バランス良くどんな感情も味見しろ」
キール「ええと 栄養が偏る?味見?」
バカラ「ちっと難しかったか そのうち分かるさ なぁ ブロンクス?
    おまえは いっつも大人しいな 花見は楽しんでるか?」

番 犬「楽しんでる 人の話を聞くのは面白い 理解できなくてもな」
バカラ「そうか 人の話を聞く奴が 人から必要とされるんだ 俺は喋り過ぎだ
    人に必要とされる人間に育てよ少年 ほんじゃ 俺はそろそろ
    お偉いさんとこ行ってくっかな やっと酔っ払ってきたようだしな
    こういうときに 商談持ちかけるのがいいんだよ
    悪ガキ共の姿を目の当りにして 内心ビビッてやがるからな」
番 犬「…仕事の話は無しだって あんた言ってなかったか?」
バカラ「大人の言うことを信用すんじゃねぇよ ブロンクス
    若人は仕事すんな 遊べ 花見をエンジョイしろ じゃあな(^_-)-☆」

ラ ス「アイツは詐欺師の才覚があるな
    あれで呆れるほどいい加減じゃなきゃ もっと儲かるんだがな」