電脳タブロイド
チェリーブロッサムの秘密
〜その後のチェリー〜
※この物語は「チェリーブロッサムの復讐」の続編オマケです
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登場人物:キ ラ/エンゼル
場所:キラのマンション部屋の外
エンゼル「じゃぁな。ちゃんと家までは送ったからな。
とっとと中に入って、鍵を閉め忘れて暴漢に惨殺されろ!」
キ ラ 「あのさぁ、前にも聴いた捨てゼリフ言わないでくれる? せめて新作を言えよ。
ボキャ貧なんだよ、このひよこアタマが」
エンゼル「なんだとぉ?! おまえは、ホンット嫌な野郎だッ。俺の天敵だ。まったく好きになれねぇよな!」
キ ラ 「お互い様だろ。だけど生憎、あんたは俺の敵レベルでもねぇよ?
頭の悪い奴は、大嫌いなんだ。おこがましいぜ、エンゼルごときが。
おまえは雑魚の暇つぶしだよ。敵なんてレベルにはほど遠い。相手になんかまったくしてない」
エンゼル「けッ。相手にしてくれないなら大助かりなんだよ。潰すヒマのあるヤツはいいよなァ。
嫌な悪魔小僧だぜ、まったくな。このままだと、ろくな大人になんねぇぞ」
キ ラ 「笑わせるぜ、エンゼル。おまえが大人ぶるなよ? てめぇもまだ成年にはまだ足りてねぇくせに」
エンゼル「18からはもう大人なんだよ。俺はすでに大人二年生だ、うん。まだてめぇだけが子供だ」
キ ラ 「はぁ? ナニそれ。だっさーい。実は中2なんじゃねぇ?(笑) 俺が笑い死ぬ前に帰れよ、バカ」
エンゼル「―――キラ」
キ ラ 「まだなんかあるのかよ」
エンゼル「二番目のナイトの話なんか、俺はテッドにもしてねぇぜ」
キ ラ 「……二番目? そんなこと、言ったか? 聴き違いだろ」
エンゼル「かもな。もしくは、おまえはどこかできっとその情報を入手したんだろうな。
……そう思っとくぜ」
キ ラ 「俺に知らないデータは無いんだよ、エンゼル。
どんな秘密の情報も、俺の元には開けっ放しのドアのように簡単に見えるし得られる。
だからどこにいても、せいぜい用心してな。キラさまは、見張ってるぜ」
エンゼル「デバガメ小僧め」
キ ラ 「失敬な。違うよ。俺は神さまなんだよ〜だ」
エンゼル「ケッ」

散りゆく桜の花びらを、一緒にみながら、
夢の中のチェリーが、俺に言う。
「エンゼル、キラを見つけてね。待ってるから」
その昔、チェリーが俺に言ったのは、私を見つけてだった筈なのだ。
なのに、何故だかキラに置き換わっている。悪夢だ。
キラを見つけるのは、無理だよ、チェリー。
だってキラを知っているつもりで、
俺はキラの、何も知らないんだからな。
無表情のときでも、キラの目は同じMB児のそれとはまったく違う。
あんな目をする他のMB児は、まわりにいない。
そんなのは見たことも、感じたこともない。
そして感じないのは、俺が同じMB出だからだ。
感情を表現し、読み取る能力の欠如。
それがMB出生の欠陥的副作用だ。
深い色合いのキラの目。
「何か」が、見えそうで見えない。
そこに宿るものは何だ?
キラの瞳は、まったく俺たちとは違う。
その目を覗き見るのは、恐ろしい気がするんだ。
ネットで女を演じるキラは、何人も、何十も、何百人もいて、
パズルの1ピースのように、次々とそれらが、キラを形成しているのか。
完全にそれらが全て揃うとき、キラの姿を知ることができるのか。
それは偽りのキラか。
それは本当のキラか。
出来あがったキラの絵は、どんなものなのか?
俺はそれを知りたいと思うのか?
見たいと思うのか?
そのピースを知り、正しい位置に置くのが、恐いんじゃないか?
だが正しい位置などあるのか。
でたらめに置いているのに、何かの絵になっていくような感覚。
それは俺のただ都合の良いだけの絵なのか。
俺はキラのピースを、集めようとしているのか?
それを見るのが恐いと思う俺の不可解な感情は、
何かしらの変化があるんじゃないか?
まさか。
意識的にじゃない。
じゃあ、無意識にか?
まさか。
そんなものは、望んでない。
キラは、俺を地獄に叩きつけようと嗤っているだけだ。
ただ意志とは関係なく増えていくそのでたらめなピースが、
何かしらの絵になっていくことに、気がついた時、
心がざわつくようになったのだ。俺は。
憧れた深い感情を持つ人間に近づくとき、
俺は得体の知れぬ恐怖を感じつつある。
チェリーの正体を、俺は知りたくない。
知りたくないのに、俺の中でキラの目に見えるような「何か」が、
無意識に激しくそのドアをたたく。
ふと番犬の忠告が、腹に落ちて行くとき、
全てが変ってしまう恐怖を、俺は予感するのだ。
俺はただ策略に捕り込まれているのか?
ただ愚かしいだけなのか?
この不明なものが、植物園の桜の花びらのように、
最後のひとひらまでも、落ちて腐って無くなる日を、俺は切に望んでいる。
桜はなかったと。
だが、木々が、枝が、そこにはあるのだ。
花が咲けば、桜だと、皆言う筈なのだ。
心など邪魔なだけだと、キラはいつか言った。
そう思うのは嫌だった。
だが、どこかで肯定している自分を認めるのも、
それはそれでイヤだと思うのだ。
キラは、あの目で何を見てきたのだろう。
いつかチェリーに会えれば、聴けるだろうか。
俺は、チェリーにキラのことを聴くだろうか。
「チェリーは、キラなのか?」
夢のチェリーは、可愛く微笑むだけで、答えはしなかった。
何がこの天使を、あの悪魔に変えたのだろうか。
それともこの天使は、すでにもう悪魔だったのだろうか。
俺は、差し伸べた手で、何をしようとしたのだろうか。
なぁ。
答えを、探してくれよ、チェリー?
次の季節の、桜が咲く前に。
☆END☆