星に願いを
When You Wish Upon a Star

06
June

登場人物: レイジ/マック/リン
場所:ピアノマン




レイジ「舌まで、入れたのか」

リ ン「はい……。なんとなく生温かな感覚に痺れてしまい……ああ、どうかしてたんだ」
マック「どういうことね、それ。えーと、リンはアレですか、そのー、実は……」
リ ン「違うんだ。違うって。いい加減な回答だと思うけど、俺はさ、違うんだよ。
    全然これっぽちも、サワにそういう気持ちは、持ってないんだよ」
レイジ「だったらその場の空気に飲まれたか? それともサワが無意識に誘った?」
リ ン「いやぁ。そういうんでもなく……。サワは誘ってなかったよ。本気で痛がってたし。
    ただなんとなく本当にオキシトシン効果で、サワの痛みが軽減されたらいいなと思ってさ」
マック「それでサワにキスする必要あるか? 背中をさすってやるだけで良いと思うけどな?」
リ ン「それはそうなんだけど、サワがマックとキスした話をしてたから……」

マック「おいおい、その前置きいりますか? ヤブヘビ出さないでくれないか」
レイジ「いいじゃないか。話を聴こうぜ、リンさまのキスした気分を?
    サワと小僧がキスした話は、おれにはまったく興味ないがな」
マック「全く無いってキッパリ云われるのも、どうだろう……」
リ ン「それで、そういや長いことキスも誰ともしてないなって、思ってさ。
    それでなんとなく、軽〜い気持ちで悪戯にキスしてみたら、思いのほか気持ちが良かったっていうか……」
マック「つい、舌まで入れて、もぐもぐしちゃったと……。なにそれ。相手サワでもそんな気持ちになるのか?
    その後、変なムードになっただろ? 何もなかったのか? ないことないだろ?
    最後までいっちまったのか? ついにリンも、初体験しちゃったとか?」
リ ン「するわけないだろ、サワは怪我人だぞ? 決定的に男だし……」
レイジ「キスだけで済んだのか?」

リ ン「そう。その、だけどわりと長い間、チューしてて、チューだけだぜ? ホントなんだって。
    もし女の子が相手だったら、その先に進む展開には絶対なっただろうだろうけど、相手はサワだから、
    そのままお互い、なんとなく、キスし終わったら、寝た。いや、寝たって、眠ったって意味だよ?」
マック「本当かよ? 嘘だろ?」
レイジ「生殺しだな、サワのヤツ。気の毒だ」
リ ン「いや、サワも意外に大人しくて、黙り込んじゃって。マジ、びっくりしたんだと思うよ。
    俺にからかわれたと思ったんだろうな。ちょっと傷つけたかもしれないよな……。
    そういうつもりじゃなかったんだけど。サワは誰かにするみたいに誘ってなんか来なかったんだって」

レイジ「それで?」
リ ン「それで? って?」
マック「そのあと、どうしたのかってさ」

リ ン「ああ、朝になって、何事もなかったようにチェックアウトして、バイバイ、またなって別れた」
レイジ「本当かよ? 嘘だろ?」
リ ン「嘘じゃないんだって。マジ、信じられない? 相手、俺だぜ? そうなんだって。本当に」
レイジ「わかった。その話を信じるとして、それでリンは何を、悩んでるんだ?
    それからサワのことが気になって仕方ないとか、サワが意味深なアクションでも起こして来たとか?」
リ ン「いや……あれから、会ってないんだ。一度も」

レイジ「連絡もしてないのか? かなり経つだろ?」
リ ン「メールもないよ。してないし、来ないし……」
マック「あーー、友情の終わりか! そうなんだな? 確かに悩むな!
    つまり、一夜の過ちで失くした友情を、リンは憂いているということか!」

リ ン「そんなこと言うなよ! 俺はまだ、ダチのつもりだよ!」
マック「えー。べろチューしたのに? サワはそう思ってないかも」
リ ン「それは、だって、マックだってさ、サワとしたじゃん」
マック「いやだから、その話を出してくるなよ」
リ ン「出すさ。だって、同じことだろ。お前、サワと友人やめたのかよ? 絶交したか?」
マック「やめてないけど……。でも、今後、消滅してもしょうがないとは思ってるけどな」
レイジ「そりゃ、おまえはサワを弄んだんだもんなァ」

マック「だからそういう云い方、しないでくれる? サワには確かに気を持たせたけど、
    どうしても応じられなかったんだ。何故なら、俺はレイジさんを愛しているからな!」
レイジ「そのセリフはいらないけどな。サワが何も言ってこないのは、意外だったな。
    だが、俺はリンの反応がよくわからん。悩みはどっちを向いてるんだ?
    友情の喪失でもないなら、いったい、何を、どう、悩んでるって?」
リ ン「俺だって、よく分かんないんだよ。何であんなことをしたんだろ。
    正直言うと、きっとちょっと溜まってた色っぽい欲求はあったと思うんだよ。
    でもセックスはサワ相手にしたいとは思わないから、まぁ、キスくらいの欲求が……」
マック「相手、サワなのに?」

リ ン「……そう。なんか、唇がちょっと色っぽい形だったんだよ……。フラフラっとそんな気に」
レイジ「そうなのか?」
マック「なんで俺に聴くんだよ。知らないって。サワは確かにイケてるだろ。別に一般論としてだよ?」
レイジ「一般論か? 実体験じゃないのか。むしゃぶりつきたくなるエロい唇だったんだろ?
    本当にホテルで何もなかったのか、おまえ? 真実を吐くなら今だぞ」
マック「ないよ! なんで蒸し返すんだ! もしかしてやっぱり本当は、疑ってたのかよ?!」
リ ン「ちょっと、痴話喧嘩はやめてくれる? 私の〜ために〜♪ 争わないでぇ〜」
マック「お前な、リン。茶化してる場合か、本当におまえのせいでヤブヘビ……」
レイジ「冗談だ。小僧がサワと何をしたかなんか、どうでもいいからな。まったく関係ない。
    それで、身体反応はどうだったんだ? 起たなかったのか?」

リ ン「それは、なかったよな……。欲情するっていうのは無かったよ。だってサワだし、男だし。
    やっぱ俺は、ゲイじゃないんだろうな。良かった」
マック「俺だって、ゲイじゃないぜ? レイジが初めてだからな」
リ ン「お前は、がっつり食いついてたじゃないか。
    だいたい、初めての男はレイジじゃなくて、ナルセだろ。マックは充分、素質あるよ」
マック「だから、それは気持ちの問題ですよ。ナルセは、ただの未知への興味。
    俺の身も心も、全て初めてのような気持ちは、レイジだけに捧げています!!」
レイジ「わかった。もういい。それ以上、喋るな、小僧」
マック「なんだよ、さっきから、小僧、小僧って。俺のは小さい象さんじゃないぞー」
レイジ「黙れ、下ネタ小僧」

リ ン「悩んでるのはさ、つまり困ってるのは、俺、サワとぜんぜんセックスしたいと思ってないのに、
    ただ……キスだけは、したいと思うんだよ……。キャー―、云っちゃった!!
    いやーん、恥ずかしいーー! どうしよう!」
マック「なにそれ。女子高生か。まったくそれ可笑しいだろ。
    だから女の子が必要だってのたまってたのか。つまり、欲求不満の解消を図ろうという。
    それならとりあえず風俗へ行け、風俗へ! 欲求不満だ、ただの」
リ ン「行ったよ……」
マック「行ったのか! それで? おねーちゃんとヤッてもスッキリしなかったのか?」
リ ン「スッキリは、した」
マック「じゃあ、あと、なに?」

リ ン「スッキリしたのに、ただ……。サワとキスしたい気持ちだけが、おさまらない」
マック「それ、サワに惚れたってこと?」
リ ン「そんなわけないよ。サワは友達だし、さっきも言ったけど、セックスはしたいと思わないんだ」

レイジ「要するにそれは、セックスする前段階だからじゃないのか?
    次にサワにキスしたら、先に進める。たぶん」
リ ン「先ってなに? ナニすること? いや、無理、無理。俺、そんなの生理的にダメ」
マック「キスは良いけど、カラダはダメよって、まぁーてめぇはどこの生娘なんだよ」
リ ン「だって! 想像できないよ! サワがやられてるとこ見て、興奮どころか、恐怖を覚えたからな!」
レイジ「それは暴力場面だからな。そんなところで興奮してちゃ、おまえの性的趣向を疑うことになる」
マック「まったくだ。ドン退きまくりだよな、爽やかリンくんの名が泣くぜ」
リ ン「だからさ。どうしたらいいんだ、困るよ、こんな感情はさ……」

マック「レイジ、どうしたらいいんだ?」
レイジ「とにかく。もう店を閉めたいから、お開きだな。帰れ、二人とも」
リ ン「えええ!! 相談に乗ってくれるんじゃないのかよ? レイジ!?」
レイジ「そんなふざけた相談に乗れるか。おれの回答はひとつだ。サワに会えよ。以上、終わり。
    はい、解散、解散! 出てってくれるか、もうピアノマンは閉店だ」

マック「俺も出て行く?」
レイジ「そう。おまえもだな」
マック「今夜、うちに来ないのか? レイジ」
レイジ「無理だな。書類整理が残ってるんだ。今夜は朝までリンの寝言でも聴いてやれ。マック」
マック「……そうだな。友情も大事だからな。リンを放っておけないよな。
    良かった。マックって俺の名前、忘れたのかと思った」
レイジ「バカ」

リ ン「レイジー、俺、いっそマックで試してみようかなー?」
レイジ「おー、そうしろ、そうしろ。ケツに突っ込めるか、マックで試してみろ」
マック「俺、まだ処女なんですけど? ってそんな問題? そうだ、そんなことなら茅野に頼もうぜ!
    あいつなら、最適だろ。サワと似たような美形だしさ。そうだ、リン、試すなら茅野にしろよ!
    上手く行けば、付き合えるかも! 一石二鳥!」
リ ン「なんで俺が茅野さんと、付き合うんだよ。一石二鳥って、お前の都合だろ、それ」
マック「そんなことねぇよ。奥にいるんだろ? 呼んで来る。おーい、カヤノさぁーん♪」


リ ン「レイジ。ケツは無理だけど、その他のこと、マックで試してみようかな?」
レイジ「……何の伺いだ? おれはどうぞと言ってるぞ」
リ ン「そう? ホントに? サワ相手に嫉妬してたくせに?」
レイジ「嫉妬なんかしてない。でも、おまえとマックは無理だな。できるのなら、すればいいがな」
リ ン「マックは友達思いだから、身をもってなんとかしてくれるかもしれないぜ?
    なんせ、流されやすいからな。キス程度なら、簡単にできるかも」
レイジ「試せば? キスでも無理だろ。サワでも落とせなかったんだ。あの頑固さに勝てればいいがな」
リ ン「やっぱ、マックを信じてるんだな。二人が羨ましいよなー」
レイジ「そんなとこを羨ましがられても迷惑だ。おまえはおれたちの関係を誤解してる」

リ ン「レイジもマックに直接、応えてやってくれよな……。マックは良いヤツだろ。
    なんで言ってやらないんだよ。可哀想だよ。レイジはマックが嫌いじゃないよな」
レイジ「リンに心配されるようなことじゃない。おまえは自分の迷い心の行方を心配をしてろ」
リ ン「迷い心の行方……か。自分のことを考えたくないから、他人の恋路に首を出すんだよ」
レイジ「とんだ迷惑だ。とにかく次にサワに会って、どうなのか確かめることだな。それしかない。
    ただしこの先、恋だの愛だのに発展しても、報告はいっさい要らないからな」
リ ン「そんな冷たいこと言うなよ、見捨てるのかよ〜、レイジ〜、助けてくれよ……」

鏡 夜「お話し中、すみませんが、リンさん。
    この泥酔のベースマンさんを、お引取り頂けませんか?
    おかしなことを言って絡んでくるので、先に眠って頂きました。
    今、タクシーをお呼びしましたから、あとはお願いしますね」
レイジ「キョウ、どさくさに紛れて、小僧を殺すなよ」
鏡 夜「殺してません。落とした、だけです」

リ ン「あー、茅野さん、迷惑かけてすいませんねぇ。連れて帰りますよ。僕ら、悪気はないんですー」
レイジ「そうだ、おまえからも、助言してやればどうだ? 鏡夜。
    サワのことなら、多少は嗜みがあるだろ? キツネ狩りの成果を話してやったら?」
鏡 夜「……リンさんが、私の助言を必要でしたら」

リ ン「え、どういうこと、茅野さん?」

鏡 夜「サワさんは、魅力あるボーカルです。きっとお相手は星の数ほどいるでしょう。
    あなたは、その中のおひとりになるのか、そうではないのか、じっくり考えた方がいいと思います」
リ ン「いや、そこまで考えるようなことでも……」
レイジ「そんな助言じゃなくてだな、もっと赤裸々なエロエロしい体の相性とかの……」
鏡 夜「要オーナーは、黙っててください。
    あまりしつこいと、このベースマンを、箱に詰めてあなたの家に贈り届けますよ?」

レイジ「はいはい、わかったよ。なんだよ、イヤミなヤツだな」





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