Little Devil


登場人物: レイジ/マック
場 所:マックのマンション部屋

09






マック「……あのさぁ、レイジさん?」

レイジ「なんだよ……。眠い……。だるい。痛い……久しぶりだってのに。加減、しろ、バカ」
マック「俺のマンションの下に来てるなら来てるって、早く言えって話だよな?」

レイジ「通りがかったんだ。街中で、おまえに電話してた。もちろん行くつもりじゃなかった。
    でもおまえの話がやたらと無駄に長いから、部屋の近くまで行き着いたんだ。不可抗力だ」
マック「こんな夜中に? 偶然、おれのマンションの付近を通った?」

レイジ「そうだ。散歩をしてたんだ。この付近しか、おれは歩いたことはないからな。
    去年のバカ寒い冬、安物ワインを持ったおまえに連れ回された。トラウマになりそうな出来事だ。
    そういや、もうじきそんな時期か。来月はもうクリスマスだな。一年は早いよな」
マック「そんな悪夢を見たのに、また同じところでよく散歩する気になったもんだな?」
レイジ「歩いたこともない場所を選んで、迷子になると困るだろ? 人迷惑なことは、もう卒業した。
    おまえを見習ってたまには夜中、健康のために散歩することにしたんだ」
マック「へぇ? ほんと。そうなんだ。納得のいく理由だね」

レイジ「おれは帰っても良かったんだぜ。だけど、おまえがいきなり勝手に降りてきて、
    無理やりおれを部屋へ連れ込んだんだ。しょうがない。
    お蔭でもうじき出張しなきゃならないのに、立てないほどダメージだ」
マック「あんたも相当、溜まってたじゃんか。外ですぐに抱きついてきて、情熱的なキスなんかして、
    誰かに見られてたらどうするんだ。レイジが激しくねだるから、俺はもう……イテッ」
レイジ「前回したのは八月だろ。三ヶ月ほど前だ。長すぎる。単にやりたかったんだ。生理的な現象だ。
    もう満足したからいいって言ったのに、しつこく要求してきたのは、おまえだろ」
マック「だってレイジが! 俺に今すぐ会いたいなんて、ビックリすること言うから張り切ったんじゃん!
    そんなん云われたら、おれの頑丈な理性の糸も、そりゃ切れるってもんだよな?」

レイジ「何が頑丈だ。微々たる衝動でキレっぱなしじゃないかよ。蜘蛛の糸より脆いくせに。
    おれを振りまわすなって云ったよな? おまえの反省は口先だけだろ。
    おまえが――― そう言ってくれというから、云っただけだ。でも今すぐ会いたいとは言ってない。
    会ってもいい、と云っただけだ。完全な聴き違いだ。きっと携帯で電波が混線したんだな」
マック「ソレ、百歩譲ってもいいけどさ。だけど本当に言うなんて、まさか思わないものボク」
レイジ「だったらそんなこと金輪際、頼むな。会いたいなんて、言ってないけどな」

マック「違うよ、嬉しかったんだ。思いがけなかったんだ。嘘でも言ってくれるなんて。
    いや、俺に嘘は言わないって云ったよな? だったら、つまり……嘘じゃないってことかな」
レイジ「きっとそれも聞き違いだな。実はおまえには、山ほど嘘をついてるんだ。騙される方が悪い」
マック「俺、また地獄のクリスマスを過ごすのかと思ったよ。去年、度重なる危機を回避できたばっかなのに、
    一年を持たずにまたレイジと別れてケンカしたまま、クリスマスになったら最悪だった」
レイジ「そういうのを成長がないって言うんだよ。おまえはどれだけ繰り返したら成長するんだ。
     生まれて死ぬまで、黄色いひよこのままなのか」

マック「ずっとぴよぴよ言ってて悪かったな。……俺だけのせいかよ、それって?」
レイジ「勿論だ。別れ話のきっかけは、今まで全部おまえのせいだろ。違うか? 違わないよな?
    他にまずくなる原因があるか? おれは言うことは言ってある。それ以上は言えない。
    あとはおまえ次第だろ。おれを信用してないから、他人の言葉に惑わされるんだ」
マック「あんたがひとこと、俺のことを愛してますって言ってくれたら、解決する問題ですけどね。
    そう言ってくれたら、嘘でも100パー信じますけどね?」
レイジ「嘘は、言いたくない」
マック「ああ、そうですか。正直者の愛人がいて幸せですよ、ほんと」

レイジ「ひとつだけ、おまえが喜びそうなことを云ってやろうか。
    おまえのそばで寝ると、おれは良く眠れる気がする。なんでだかな。よく疲れるせいかもな」
マック「―――ほんと? 確かにそれは、嬉しいセリフだ。俺って単純な」
レイジ「歓んで貰えて良かった。じゃ、……おやすみ、マック。もう寝かせてくれ。マジで眠い……。
     おまえのせいで、いろいろと疲れた。仕事以外に面倒くさいのはうんざりだ」

マック「いろいろ? 分かった。ええと、なんだっけ、テ・アーモ、ミ・アモール……レイジ」

レイジ「―――なんて言った?」

マック「フフフ。驚いたか。ラディスに教えて貰ったんだよ♪
    スペイン語で、おやすみって意味だろ?
    なんかちょっと、エロい響きだよな。発音、おかしかったか? 練習しようかな」

レイジ「バカじゃないのか。知らないってのは、最強だな」

マック「え? まさか……違うのか?! おやすみじゃない? ひょっとして騙された?」
レイジ「だいたい、悪魔に教えを乞うおまえのバカすぎる天然さが、そもそも問題だよな。
    騙されるべくして騙される。カモネギだ。面白い玩具だと認識されたぞ、おまえ」
マック「マジで? あいつ、本当に悪魔と契約してたのか? あんたの周りって、悪魔ばっかだな。
    じゃあ、なんて意味なんだ? テ・アーモ、ミ・アモール?
    テ・アーモ、ミ・アモールって、もしやあんたを殺すとかそういう物騒なこと?」
レイジ「何回も云わなくていい。まぁ……似て非なる、だな。
    …………いや。おやすみって意味だな。ちゃんと、合ってる。
    でも発音がおかしい。これは追加サービスだ。今回だけ教えてやる。よく聴いておけよ?
    二度はないからな。ただし覚えても、他所で言うなよ? 恥をかくだけだ。いいか……

    ” Te amo, mi amor ”  Mac……」


マック「……スペイン語、お上手ですね。本物みたいだ。ちょっとゾクゾクした。
    でも甘ったるい響きのおやすみで、なんだか僕の下半身がオヤスミできなくなった感じだけど……」
レイジ「そうだな。……おれもだ。たまにスペイン語を言うと、疼くな」

マック「え、レ、レイジ?? なに? ちょっと、ええ? どしたの。スペイン語で、は、発情した?」
レイジ「……した」
マック「うそ、マジで。だって、いいのかよ………………レ、イジ」
レイジ「実はさっき言ったことも嘘だ。おまえがそばにいると、ぜんぜん眠れない」


マック「――――レイジ。 おれ、あんたを、悪魔たちには譲らねぇから。あんたが、……すきだよ…………レイジ―――」











photo/R

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