灰色の朝 Dismal Day
02


登場人物: マック/レイジ
場所:マックのマンション





マック「……ひとい。なんて酷いんだ、全部が、仕組まれてたことだったなんて―――。
    レイジは結局、極悪人の詐欺師だったんだ。俺のことなんか、まったく、ぜんぜん、ちっとも、
    気にかけても、いなかったんだ、利用されてただけなんだ。酷いよ、レイジ……ひど過ぎる」




レイジ「なんだって?」

マック「……ううううう。酷い、こんなの酷過ぎる。思えばオカシイとは思ってたんだ。
    完全に、二人に騙されてたんだ俺は……。茅野も悪魔の化身だった。レイジは悪魔の親方だ。
    田舎者だからバカだって、それで俺をターゲットにしたのかよ……ヒドイよ」

レイジ「あのな。何の話なんだ。どこからどう突っ込めばいいんだ、マック?
    うなされてるから起こしてやれば、今度は泣き出して挙句はおれに意味不明な怨み事か。
    紳士なおれを極悪人の詐欺師で悪魔の親方呼ばわりするとは、いったいどんな夢を見たんだ」

マック「夢? 夢だったのか、あれ。……本当に? 嘘だ、夢なもんか!」
レイジ「おまえが寝ながらどこかへ行ける秘密の道具さえ持っていなければ、それは夢だな」
マック「マジで。ネコ型ロボットいたかな。でも……やたらとリアルな、夢だったんだ。本当に夢なのか?」
レイジ「だから、どんな夢だよ?」
マック「レイジと茅野が俺を騙してて、共謀して暗黒街の森に俺の死体を埋める算段をしてたんだ。
    やっぱ本気だろ。ううう、怖ぇ……埋められる……闇の組織に抹殺される……消される……」

レイジ「バカなのか。バカなのか?」
マック「何で二回言うんだよ」
レイジ「おそらくバカだろうが、礼儀として二度目は一応の確認だ。
    暗黒街の森のどこがやたらリアルなんだ? 設定がもう始めからオカシイだろ。
    どんな三流ノワール映画を見たら、そんな爆笑コメディみたいな内容になるんだ」
マック「爆笑コメディじゃねぇよ! ミラーズ・クロッシング並みの世界だって!
    マジでヤバイ取引のために俺を利用して、森の奥で射殺するんだ!!」
    
レイジ「どうやったらバンドでただベースを弾いているだけの男を、おれの商売取引に利用できるんだ?
    そんな変わった商法があるなら、是非おれの方が聴きたいね」
マック「そうだ……俺なんて、ただのバンドでただ楽器を弾いてるだけのただの冴えないヤツなんだ」
レイジ「そこまで言ってないけどな」

マック「レイジに相応しいわけがないよな……そうだよ、どうかしてたよ……レイジはやっぱり、
    茅野が好きなんだ……茅野とまだ切れてないんだ……騙されてたよ……」
レイジ「また何を云い出すんだ。なんなんだ、いったい。夢の話だろ? いい加減にしろよ。
    おれを疑ってるのか? おれが嘘をついて騙してると思ってる?」
マック「思ってる」

レイジ「即答か。おまえはそんなふうに思ってたのか―――」
マック「だって!! もの凄い恐い夢だったんだ!!
    レイジは騙されてる俺のことを、茅野と一緒になって笑ってたし、茅野ともまだ寝てたし、
    めっさエロいことして茅野を愛してるって、あんたはそう言ってたんだからな!!」
レイジ「夢の話をされてもな……。どうしろっていうんだ。
    今日は……日付が変わったから4月1日だ。四月の、エイプリルフールだな? 
    まさかそういう嘘の話じゃないだろうな? 寝ながら騙すなんて酔狂はしないよな」
マック「え、今日ってエイプリルフール? マジで? 夢で騙すなんて、そんなの有りかよ?
    エルム街の悪夢だ。いや、茅野ならやれるかも。フレディと親友なのかも。
    あいつ、本当に魔法使いか黒魔術師かもしれないからな……呪いかも。そうだ、呪いだ。呪詛だ!
    とにかく、俺の嘘じゃねぇよ、本当に見た恐ろしい悪夢なんだよ!!」

レイジ「知るか。自分の夢に騙されたんなら、犯人は自分だろ。おれは関係ないからな。
    キョウもそんなアホな呪いをかけるほど、暇じゃないと思うぜ。フレディも友達じゃない。
    そういえば、おれが夏頃にやたらと怖い夢を見ておまえにそれを話したら、
    そんなこと自分に言われても困ると相当おまえは怒ってなかったか?
    おれに対して、不機嫌極まりなかったよな?」
マック「……そうだっけ? ああ、えーと。でも、あれとこれとはぜんぜん違うだろ」
レイジ「全然違うとは思わないな。まったく一緒だ。同じ例だ。
    あのとき、おれは冷たく突き放されたよな。そうだ、思い出したら腹が立ってきたな」
マック「そんなことで怒るなよ、レイジ。大人げないな。ただの四月バカな夢の話じゃんか」

レイジ「どの口が言ってるんだ。貴様のその身勝手な口を一度まつり縫いしてやろうかよ」
マック「器用なんですね。さすが暗黒街はやることが丁寧で細かいよな。
    でも俺の口を塞ぐなら、もっと色っぽい方法にしてくれねぇかな……。な?」

レイジ「そんな気分になれるか。誤魔化しきれると思ってるのか?
    おまえは結局、おれを信用してないんだろ」
マック「そんなことねぇよ。エイプリル・フールだよ、実は。驚いた?」
レイジ「嘘つけ。さっき気が付いたくせに」

マック「あのさ……レイジ。
    結局、夢ってさ、自分の無意識の部分の拘りが、そんな夢を見せる原因なんだよな?」
レイジ「さぁな。潜在意識と関係があると言われてはいるが、本人の預かり知らない予知夢の例もある。
    実際、不思議な凡例は報告されてるし、夢を見る構造のほとんどは、まだ解明できていない」
マック「予知夢……だとマジ怖いけど。でも、おれの気がかりなことなんだよ、きっと」

レイジ「おれがまだキョウと寝てると、おまえは無意識に思ってるのか?
    それともマジでそんな取引に、自分が利用されてると思ってる?」
マック「……どうかな。表面上は思ってないけど、そうなのかな。茅野に騙されてる気がするし、
    あんたは、本当は身体的にも茅野と切れる気がないんだと、俺は思ってるのかな」
レイジ「おれがおまえとの話を、キョウにできないでいるせいだな。
    おまえは実際、無意識にそのことが小骨みたいに引っかかって気になっているんだろう」
マック「そんなちっさい男じゃねぇよ。そんなん気にしてませんよ。違いますよ」
レイジ「本当に、おれがキョウとまだ寝てると思ってない?」

マック「……寝てるのか?」

レイジ「寝てない。ゆっくり雑談もできないのに、セックスする時間なんかあるわけないだろ」
マック「じゃ、やっぱり真実は、闇の暗黒街の取引が実際にだな……」
レイジ「またそこへ戻るのか。暗黒街ファンタジーはもういい。それはただの夢だ」
マック「そう、ただの夢だ。夢だよな。真実じゃない。現実じゃない。四月バカだ。
    そうだよ。そうだよな。……今、何時だ? まだ明け方だな……もう少し眠るか。
    悪かったな、夢見の悪さなんかで起こしてさ」

レイジ「夢の中で、おれとキョウがエロいことしてて、おまえは興奮したか?
    見てたんだろ? おれとキョウが物凄くエロいことをしてた場面を」
マック「はい? ……勿論、興奮しましたよ。夢精こそしてないけどな」
レイジ「本当か? 下着を確認しろよ、粗相して濡らしてないかどうか」
マック「ガキじゃないんですけど。濡れてたらナニ? ちょっと待てよ。別に濡れてない……でも」
レイジ「でも?」

マック「勃起はしてる……。なんだよ、もう。レイジが変なこと言うからだ」
レイジ「じゃ、使えば? せっかくだから……、付き合ってやるよ」

マック「なんだよ、さっきはそんな気分になれるか言ってたくせにさ。えろオーナーさんはもう濡れてますか?
    そうだ、ニノがめっちゃ滑りの良いローション紹介してくれたんだけど、使ってみる?」
レイジ「何でニノとそんな話、してるんだ。バカ」
マック「いやぁ、ステージであんなアドバイスを貰うとは思ってもいなくてさぁ」
レイジ「おまえら最低だな。MCが下品すぎるとメリナとヘミがピアノ・マンで文句を言ってたぞ」
マック「マジで? だけどさ、レイジは俺に嫌々、突っ込ませてるんじゃないよな……」

レイジ「それは夢のおれが云ってたのか? 嫌々やらせてやってるってな」
マック「……やらせてやってるとか言うなよ。堪えるだろ。すごいナーバスなんだから、今」
レイジ「嫌々かどうか、自分で確認すればいいだろ。夢の話なんかに負けるなよ」
マック「するよ。もちろん。でも嫌々だとは思ってねぇよ? そんなの確認するまでもないさ。
    そんなん、わかるよ……。レイジが好きなのは茅野じゃねぇよ。それは絶対だ。
    分かるんだ……茅野じゃない……。絶対に違うよ」
レイジ「自信があるんだな。
    さっきの泣き言はどこに行った? おれは何も、そこまで言ってないぜ。自惚れるなよ」
マック「四月バカなら、それくらいのリップサービス言ってくれてもいいじゃん」

レイジ「愛してるぜ、マック……」

マック「!! ホントに?!」
レイジ「嘘に決まってるだろ。サービスだ。そんな顏するなよ、こっちが恥ずかしい。
    そんな単純に顔色変えて騙されてるから、メリナにセクハラ報復をされるんだ」
マック「なんだよ……。関係ねぇじゃん。メリナのヤツ、あのことレイジに喋ったのかよ?
    なぁ、男の前で女のおっぱい触りまくるか、普通? セクハラもホドだよな?」
レイジ「女の胸は、おれより興奮したか? おまえはするよな」

マック「するわけねぇだろ。いや、確かにしますけどね。でもあんたとは比べる土俵が違うだろ。
    ……俺さ、レイジを独占しすぎてるかな? 茅野にちょっとは譲るべきか?
    あまりにその、今年に入ってから一緒に居るときが、かなり多めじゃねぇかな……。
    あいつがあんたと話す時間がない程に……レイジの時間を俺が使い過ぎてねぇかな」
レイジ「ちょっと貸す気があるなら、二度と返さないとあいつなら言うだろうな。
    人に己の大事なものを貸すなら、二度と戻らないくらいの覚悟で貸せよ。それが嫌なら貸すな。
    おれが好きなら、したいだけ独占しろよ。こんなに頻繁に会えるのは、偶然じゃないんだ。
    それとも、おれがいる時間が多すぎる? さすがに嫌になってきた?」
マック「まさか!! おれは嬉しいよ。でも、レイジはたまたま時間があっただけじゃない?」

レイジ「当たり前だ。暇なわけじゃないぞ。期が変わって4月になれば、今より多忙になる。
    今みたいに頻繁には合えないだろうな。だけどおれは過密なスケジュールを調整して時間を作ってる。
    鏡夜と話す時間よりも、おまえのことを優先してるんだ」
マック「そうなの? 茅野から逃げてるだけじゃねぇの」
レイジ「違う。半分はそうでも。おれはこうして努力してるんだから、ここでの時間は一秒でも無駄にできない筈だろ。
    おまえだって、そう言ってたよな? 一秒だって一呼吸だってこの時間が大事だとな。
    なのにたかが夢の話でおれを無駄に責めるのは、間違ってると思わないのか。
    こんな時間が当たり前だと思ってると、あとで後悔することになるぜ」
マック「俺、独占してていい? うざいとか思ってない? 選択ミスしたと思ってない?」

レイジ「おまえ、最近、自分で鍵を開けた回数を覚えてるか?」
マック「え? ……そういや、あんまりないな。帰るとレイジが居るから……」
レイジ「そうだろ。おまえの部屋の鍵を開けているのは、おれなんだ。
    おまえがピアノ・マンに来る時間をわざわざ作ってるか? ないよな。そんな必要ないからな。
    おれがそこまでして会いに来てるんだ、おまえはもっと―――」
マック「レイジ……! 世界一、好きだ!……本気で、本気だ!」

レイジ「世界一って何だよ。なんなんだ、小学生の告白か。幼稚なんだよ、おまえは。
    単細胞すぎる。おれはおまえを好きじゃない。今日は特に全然まったく本気じゃない」

マック「……ああ、ソウですか。ええ、アナタはいつもそうですよね。大人ですしね。
    幼稚な俺なんか嫌いなんですよね。あーあ、むしろ今日はそっちが嘘だといいのになぁ……
    そっか、今日は特に嫌いですか……今日は特にね……。 …………。

    ――――――― ん?」








ビバ☆LOVE♪エイプリル・フールDAY☆
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\(>▽<)/。・。・°★・。・。☆。・。・°
今年は作中で四月バカをお届け!

 ** END **
参考:咲子の妄想ライブ日記2014-03-21