サマータイム・ブルース

・・・4
マックのマンション部屋






マック「…………で?」

レイジ「で? とは?」

マック「だから、ナルセに告白された夢を見て、それでわざわざ俺に報告しにきたのか?
    わざわざ二日連続で? こんな夜中に? 俺、さっき寝たとこなんですけど……」
レイジ「起こせっていっただろ? だから起こしたんだ。おれは間違ってないよな。
    目覚めた時の、おれの虚脱感とがっかり感がおまえにわかるか?
    ナルセが本気で告白してきたのに、夢オチだぞ? もう少し夢が長かったら、抱けたかもしれないのに。
    この世のものとは思えない虚無感だ。どんだけ期待したと思ってるんだ。
    それもこれもおまえのせいだからな。おまえが昨日、ナルセにとってもおれが特別とか愛してるとか
    云うから、こんな夢を見たんだ。とんだぬか喜びをさせられた」
マック「……そりゃ残念でしたね。ナルセを夢でも抱けなくて」
レイジ「おまえのせいなんだから、責任取れよ」

マック「責任て、どんな……。 ったく……。
    なんだってそんなことをいちいち俺に云うんだと訊いたら、レイジは
    『死人が訪ねてくる夢も、ナルセが告白してくる夢も、すべておまえが悪い』
    て言う。俺んちに来た理由を訊いたら、レイジは『そこに鍵があったから』 だ。
    俺はどうすりゃいいんだ、サマータイムブルース、だよ」
レイジ「真夏の憂うつだな」
マック「全部、俺のせいかよ……この猛暑も俺のせいですか」

レイジ「機嫌が悪いな、マック。まだ寝不足なのか?」
マック「イイわけねぇだろ!! フキゲン極まりねぇよ! あんた、結局、来なかっただろ、店に」

レイジ「約束はしてないだろ。よく考えたら1日からナルセが夏休みだと云っただろ?
    それじゃ、行く価値が下がると思ってやめたんだ。どうせ、お笑いライブだしな。
    おれはああいうのは好きじゃない」
マック「そうかよ……だったらメールくらいくれてもいいだろ。待ってたんだ」
レイジ「来なかったくらいで、拗ねてないよな?」

マック「拗ねてない……と思うのか? この状況でそんな話を聴かされて、
    笑ってああそうですかって言えねぇよ、俺は!! 大問題だよ!」
レイジ「ガキじゃあるまいし。大げさだな。なんだよこの状況って」
マック「……なんだって? わからない? 何なんだ、あんた!!
    昨日は夢が怖かったから責任取れって俺んちに来て、
    今日はナルセに告白されたのが夢だったから責任取れって?
    何なんだ、ホント俺はどうしたらいいんだよ?
    あんたが勝手に見た夢のことまで文句言われて、知るわけねぇだろが!?」

レイジ「何を本気で怒ってるんだ。落ち着けよ。睡眠不足のイライラか?
    マッサージでもしてやろうか?」

マック「俺は……!! いや……本気で怒ったりしてませんけどね……。
    はぁ……。バカみたいだよな。……なぁ、あのさ……レイジ」
レイジ「何だよ」
マック「ナルセとギターの彼氏が本当に別れたら、あんたナルセと付き合うのか?」
レイジ「そうなってもおかしくはないだろうな。おれはナルセが好きだし、
    ナルセがあの夢のようなことを云ってくれば、可能性はゼロじゃない」

マック「茅野はどうするんだよ?」
レイジ「キョウは相手がナルセの時点で潔く身を退くだろうな。
    いくらあいつでも、ナルセに勝てるとは思ってないからな。
    ベーシストは別だけど」
マック「じゃ、俺は? 俺はどうなる? 俺は愛人のまま据え置きか?
    それともこっちも終わりか?」
レイジ「……さぁな。夢の話だったんだから、そんなことを考えたって仕方ないだろ。
    ナルセが豪と別れるわけはないんだ。仮にもしそうなったら、据え置いて欲しいのか?」

マック「欲しくない。ナルセと二股なんて願い下げだ」
レイジ「愛人をやめる? おまえも相手がナルセだと、無理だと思う?」
マック「いいや、俺は退かない。でもあんたがどうかなと思ってさ。
    レイジの方が俺に未練があるんじゃねぇの。俺とのセックスを手放したくないんだろ?
    でなきゃ二日連続でアホな夢の話をわざわざしになんか、来ねぇよな?」

レイジ「なんだ。分かってるんじゃないか。だったら、こんな話をする時間は無駄だろ?
    どんだけ時間をかけたらその気になるんだ? おれをからかってるのか?
    せっかく訪ねてきてやっても、おまえときたら寝不足だの、朝起きてからだの、後回しばかりだ。
    いい加減、おれは欲求不満になる。今から寝なおす気なら、鍵を置いて帰るからな」

マック「……マジかよ。だったら、言葉にして言えよ。そう云ってくれよ? わかんねぇだろ。
    たまには、あんたからねだってくれてもいいだろ。おれだって聴きたいよ」
レイジ「なにが?」
マック「何がじゃねぇよ。云ってみせろよ。俺のが欲しいって。俺に抱かれたいって、突っ込まれて喘ぎたいって、
    なんかもう恥ずかしい陳腐なセリフでもいいから云ってみせろってんだよ!
    云ってくれねぇとわかんねぇよ……頼むよ。どうすりゃいんだ。本当に眠かったんだよ、昨日は。
    なぁ、言えよ。俺にどうして欲しいか、プライド捨てて云ってくれよ。聴きたいんだ。
    怖くて眠れないから、おれに抱かれて寝たいってそう云ってくれたらいいんだ……」

レイジ「バカなのか。そんな下等な誘い文句が聴きたい? おれに言えって?
    プライドを捨てて、エロ小説のようなことを? 本気か? マジでバカなのか」
マック「だって……!! 俺だってなァ!」

レイジ「マック。そんなもの、わざわざ言わなくたっていいだろ?
    やり方次第で、すぐにどんなセリフでも聴けるはずだ。そうじゃないか?
    おまえの望む声があるなら、そういうふうに出させりゃいいんだ……簡単だろ?
    おれを鳴かせるのはおまえには簡単だよな? なのに無粋な誘い文句なんか必要あるか?
    ないよな。 ――――そうだろ、マック……。いつも、そうだろ……」








レイジは囁くようにそういうと、俺の寝間着かわりのシャツの胸元を掴み、
強引に唇を割って、口の中に熱い舌を押し込んで来た。

瞼の裏で光がスパークする。
それで一気に、ことの状況は激変。
俺の中は真夏のゲリラ豪雨と、雷鳴が響くみたいな壮絶な状況。

全身は落雷にあったみたいに反応しまくる。
必死になって応戦してると、レイジは冷笑してほらみろという目をした。
(うう、ちくしょう……必死で悪いかよ)
ただ、そんな余裕の冷笑も長くは持たないことも知ってるけど。

次第に漏らす、甘い声。
本来レイジはほとんどこういう声を出さないけど、
時々俺の機嫌を損ねると、俺を興奮させる声を出す。一応サービスのつもりらしい。
確かに効果は絶大だけど。
単純な色仕掛けの俺用対策は、レイジにとって簡単なことなんだろうか。

でも無意識にせがむ色っぽいしぐさや声の方がもっと俺にはぐっとくる。
きっとレイジは知らないので言わないけど。
レイジにそうさせるのは、俺なのに。
こんな声やしぐさ、だれも知らないよな?
でも所詮、また俺の負けだ。

惚れてる弱みで、俺には負けしかない。
何を云っても全然有利に立てる日なんか、こない。
一生、勝てない。

レイジの体をこんなに熱くできるのに、勝った気持ちが全然しない。
余裕のない俺に比べて、茅野は俺など相手にもしてませんて涼しい顏をする。
この間、ピアノマンで顏を合せたら、何の余裕か目を合せて笑ってみせた。
俺がレイジと浮気してても、全然余裕でまるで本妻の風格だ。
(ううう、ちくしょう……。もう、泣いちゃおうかな)

この上、ナルセまでライバルになったらどうしたらいいんだ?
この夏はすでに死体のエトーまでがずうずうしく参戦してきて、
ひょっとするとコロンビア人のなんとかって奴も、
どさくさに紛れて、参戦する気なのかもしれない。

真夏のホラーバトル・ストーリィ。

レイジは人気で地獄の釜の蓋が開いたら、熱愛勧誘がやってくる。
みんなレイジを欲しがるんだ。
俺はいったい、どうしたらいいんだ?
どうにもならないサマータイムブルース。



真夏の憂うつ


どんな暑い夏の夜だって 俺はレイジに敵わない

真夏の俺の憂うつ

サマータイム・ブルース……





だけど、嘆いてみせて盛り上がるのも、サマータイムブルースだよな?






・・・END・・・




サマータイムブルース
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補足:咲子の妄想日記2013.08.03付

photo/真琴さま

⇒オマケ?