Have You Ever Seen The Rain

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登場人物:マック/レイジ
場 所:マックのマンション下



マック「……何でこんなとこに、いるんだ、アンタ!!」

レイジ「早いな、ベーシスト。もっと遅けりゃ、良かったのに……」
マック「冗談じゃねぇ。ガクブルじゃねぇか、マジで凍え死ぬぞ!
    あんた、いつからここにいるんだ、レイジ?!」
レイジ「さぁ、いつかな。部屋に入れてくれ。死に損なった」

マック「な……、何で、おれんちに? 住所、調べたのか?」
レイジ「俺の『ナルセ・ミストレスデータ』の調べは完璧なんだ。
    思ったより良いとこに住んでるじゃないか、Mr.ベースマン。
    前にナルセが言ってたことを思い出したんだ。
    マックと飲むときは安心できる、奴は結構世話女房なんだって」
マック「何をふざけたこと言ってんだ、とにかく、入れよ」    
レイジ「入れてくれるのか? 優しいな……」
マック「こんなまま追い返せるかよ。殺人犯には、なりたくねぇよ」

レイジ「でも不用心だ。俺に襲われるかもしれないぜ?」
マック「そんな凍えた体で何ができんだよ、冷凍プレイかよ」
レイジ「……面白いなぁ、センスないよ、おまえさん」





登場人物:マック/レイジ
場 所:マックのマンション部屋の玄関先




マック「ほら、上がれよ、靴、脱げるか?」

レイジ「いや……無理。手がかじかんで動かないんだ」

マック「はぁ、そっから面倒みなきゃなんねぇのかよ。
    ええと、まず風呂場だ。すぐ湯をはるから、風呂場にいろ」
レイジ「それは助かる……凍死は失敗したけど、
    湯船に入れて放っておいてくれたら、勝手に溺死するから」
マック「ふざけんな。おれんちで溺死しやがったら、締め殺すからな!」
レイジ「絞殺じゃ、自殺にならないだろ。
    殺したくないなら、一緒にいてくれよ……ひとりにしないでくれ」

マック「はぁ?! キャラじゃないだろ、湯気で暖まるんだ、ホラ、さっさとやる!!
    指が動いたら服を脱いで、シャワーする! それから湯船につかる!
    酒を飲んでないのが奇跡だな。 早くしないと服を脱がすからな!」
レイジ「……ホントだ、世話女房だな……フフ……」

マック「なぁ、そんな、力なく笑うなよ。あんたらしくないだろ」
レイジ「そうか? 俺らしいってどんな感じなんだ。
    頼むから温まるまで、風呂場にいてくれよ。ひとりになりたくないんだ……
    放っておいたら、本当に溺死するかもしれないぜ」
マック「―――分かったよ、分かったから、もう、死ぬとか言うなよ」






場所:マックの部屋



マック「暖まったか? これ着替え置いとく……おれのシャツ入るかな?」

レイジ「また生き返っちまったな」
マック「良かっただろ。おれのマンションなんかで死なれたら散々だ」
レイジ「この礼はするよ。何をご所望かな?
    大抵のものは、オジサン買ってあげるよ。なんてな」

マック「……いーよ。ヘルプで世話になったし、チャラにする」
レイジ「欲がないんだな。俺の弱みを握ったんだから、もっと利用しろよ」
マック「弱みなんか握ってないだろ。雪だるまで、笑えただけだ」
レイジ「十分なネタだ。その内容なら鏡夜なんか、毎日脅してくるぜ。
    そうだ、鏡夜の体で払わそうか? あいつはなかなかセクシーだ」
マック「そんな権限まであんのかよ、オーナーって。
    アンタ、店のスタッフ全員に手ぇつけてんのか?
    それとも、茅野だけなのかよ」

レイジ「全員じゃないけど、まぁ、鏡夜ならなんとかなるさ」
マック「あいつは、趣味じゃない」
レイジ「贅沢な男だね。てっとり早く俺の体で払うって手もあるな?
    多少歳はいってるが、ちゃんと鍛えてるし、体力もあるぜ。
    でも今は少し消耗してるかもなぁ……」
マック「そんな礼、いらねぇよ」
レイジ「困ったな。年上も、趣味じゃない?」
マック「おれが性的趣味じゃないのは、アンタの方だろ」
レイジ「そんなこと言ったっけ? いつの話だ? 覚えてないなぁ。
    そんなものは、時と場合によるだろ。
    なぁ……なんでさっきから、そっち向いたままなんだ?」

マック「目のやりどころに困ってんだろ。なんか……落ち着かねぇんだよ。
    この状況が変だろ、たいして親しくもないアンタと、
    おれの部屋に一緒にいるのなんて……おかしいだろ、絶対」
レイジ「五日間も同じ空間にいたのに、それはツレないセリフだなぁ。
    多少、親しくなったと思うぜ? ずっとお隣さんだったし、
    お前ってどんな時でも、音の確認を怠らないな、とか、
    誰よりも熱心に、楽器の調整をするんだな、とかな」
マック「それはアンタの感想で、見てただけだろ。親しくなったわけじゃない」

レイジ「十分知り合えたんじゃないか? おれは道具を大事にする奴は好きなんだ。
     それに、ステージのMCも笑える。大活躍してたとは、知らなかった」
マック「……イヤミだな。どうせいつまでもステージで喋るのは慣れないんだ。
    ほっといてくれ。でもあれが面白いって客もいるんだからいいんだよ」
レイジ「誰もそんなこと言ってないだろ。面白いって言ったのに。僻むなよ。
    そうだ、お互いに共通点はあるだろ。ナルセとヤッた仲じゃないか。
    もし俺がナルセだったら、食らいつく?」

マック「ナルセはうちに来たことねぇよ。大体、そういうのはホテルだったし」
レイジ「ああ、あいつは高級娼婦だからなぁ……なぁ、タバコねぇのか?」
マック「サイドデスクの上にあるだろ。ライターはないぜ。マッチが上の引き出し」
レイジ「シックスティーズの男はタバコの吸い方までレトロだねぇ……。
    しかもラッキーズだと。フゥ……。タバコを吸えると落ち着くな。
    で? ナルセとは最近、どうよ?」

マック「ナルセとは、とっくに切れてるよ。あいつは元ギタリストがいいんだろ」
レイジ「あいつが豪を好きだから、素直に諦めたのか?
    ナルセの浮気相手は、残念ながらまだ山ほどいるぜ?
    おれのナルセ愛人データ帳を見せてやろうか?」
マック「知ってる。つーか、知った。だから二股とかそいうのやっぱ、
    おれの性に合わねぇから、ゲームは降りた」
レイジ「へぇ。真面目なんだねぇ、オタク。その辺、豪に似てるよ。
    でも豪より生意気そうだ」

マック「どうせいい年してガキだって言いたいんだろ。
    おれだって最初は割り切ってたんだ。ナルセがおれみたいな田舎者、
    本気で相手にするわきゃないって、思ってたし……し……?
    ……え。ちょ、レイジ!? なにやってんだよ!!」
レイジ「お。やっと、こっち見た。
    首筋にキスしただけだけど? ココ、弱かった?」
マック「!! ッだけって、じゃ、ないだろ、なんで服、まだ着てないんだよ!」
レイジ「だって、脱ぐかもしれないだろ」

マック「脱ぐようなことしねぇよ!! 大体、泊めるとか言ってねぇぞ!」
レイジ「泊めろよ。いいだろ。もう帰るの面倒くさい。一緒にベッドで寝よう。
    大体、俺が何故、酒を飲んでないと思う? 起たないんじゃ困るだろ?」
マック「いや、ない、ないって!! か、髪が、まだ、濡れてる……! や、やべ」
レイジ「何が? ナニがヤバイ? アララ、勃起しちゃった? 若いねぇ。
    おやまぁ、顔が赤いぜ? かーわいいねぇ、ボウヤ」

マック「ちょ、マジ、いい加減にしろよ、アンタが妙なことするからだろ!!
    やめろってッ!! こういうの、セクハラっつーんだぞ!!」
レイジ「笑わせるなよ、セクハラじゃないよ、小僧。
    このままいけば、立派な強姦だ。お前は犯されるんだよ。
    ちゃんと拒否らないと、後から合理の上だって片づけられるぜ?
    腐女子のBL小説みたいに、結局DVなのに、
    愛してたから抱いたとか、ワケの分からない暴力的なハッピーエンドになる」

マック「はぁ?! 何がハッピーエンドだよ?! 内縁関係でもねぇのに
    ドメスチック関係ねぇよ! 何がBLだ、強姦なんかされてたまるか!」
レイジ「じゃ、俺は逆でもいいぜ? 突っ込まれるのがイヤなら、役割を変わろう」
マック「…………アンタ、それでいいのかよ」
レイジ「あれ? そこに食いつく? 意外だな、マック。
    もしかして問題は、意外と簡単なのか? なんだ、また失敗するとこだった」
マック「失敗?」

レイジ「昔な、俺のことを抱きたいくせに、全然手を出してこないヘタレ男がいたんだ。
    自分から俺のことを口説いてきたくせに、奥手なんだよ。
    待ちくたびれたから、おれの役割が間違っていたのかなと思って、
    そいつを押し倒してケツに突っ込みかけたら、これがケッサク。
    もうホント、ビビッちゃってさ。勘弁してくれって青い顔して謝るんだ。
    タマは委縮してるし、心底怯えてたね。俺の方も萎えちゃったさ。
    もしかしてただのお友達だったのか?って、ガッカリしたよな」
マック「そ、そのヘタレ男とは、結局どうなったんだよ?」
レイジ「どうにもならなかったなぁ。どうにかなる前に、あいつは死んじゃったし」

マック「え……」

レイジ「おれを抱きもしないで、約束も破って死んじゃったんだ。
    ヒドイ奴だろ? あんな店だけ俺に押し付けて、勝手に死ぬなんてね。
    こんなにイイ男を残して逝くなんて、勿体ない限りだよ。
    そう思うだろ? 絶対、俺を抱いたらハマると思……―――――」





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