Dear, hateful music The Rose
♪ 02
登場人物:マック/リン/レイジ
場所:深夜のピアノ・マン
レイジ「なんだって? やんちゃな子猫ちゃんたち。
揃いも揃ってアホ面さげて、何を物騒なコトおぬかしあそばすのかな?」
マック「リンが、アンタに頼もうって言うから、来たんだ」
リ ン「マックが、ヤツを殺そうっていうから、レイジを紹介したんだ」
レイジ「あのな。俺は殺し屋じゃありません。殺しの依頼も受けてません。
他を当たってくれよ。そんな用なら、帰ってくれ。
もうシックスティーズのバンドマンはうちの店、出入り禁止な」
リ ン「だって、ヤツのこと殺すって言ったじゃん、レイジ」
レイジ「俺が殺すのと、殺しの依頼を引き受けるのとは、まったく意味が違うだろ。
俺の商売は、セレブご用達の高級クラブのやりくり算段だ。
経営ってのは難しいんだぞ」
マック「裏では何かヤバイことやってるって、聞いてるぜ」
レイジ「おやおや。
おまえ、セブンレイジィロードのベース、マック、だっけ?
いったい何を知ってるって? 妙な風評をたてないで貰いたいな。
名誉棄損で訴えるぞ。もしくは暗闇で手籠めにして犯っちゃうかもな」
リ ン「レイジ、うちのベースを脅すなよ。マックは田舎者なんだ。
会話センスの低さは、大目に見てくれよ」
マック「悪かったな!! イナカ者で!(-"-)」
レイジ「まぁ、殺し屋を紹介してやらなくもないけどな」
マック「うわ! 本当に出てきた、殺し屋だって!! ダークサイドだ!
アンダーワールドだ! マジかよ、すげぇ、やっぱ都会はこえぇな!!」
レイジ「冗談に決まってるだろ。意外とかわゆいボーズだな、おまえ?」
マック「なんだよ、次はガキ扱いかよ。いいだろ、どうせ俺は田舎者だからな」
レイジ「うーん、なんだろうな。この歯がゆいよなイラッとくる間合い。
リン、俺はこの田舎者ベースが、好きかもしれない。意外に」
リ ン「レイジのモノ好きベクトルがマックに向くとは意外だけど、
今はそうじゃなくて、ナルセのことだよ。
そうだ、マック。レイジもああ言ってることだし、
マックが体で払うなら、殺し屋を紹介してくれるかもしれないぜ?」
マック「ええっ!? 俺が?! やだよ。だって俺、コイツに絶対ヤラレル方だろ?
冗談じゃねぇや。大体がヤル方でも、俺は遠慮する」
レイジ「そうだぞリン。誤解するなよ。俺だって別にコイツが性的好みなわけじゃないぜ?
興味があるかもしれないってだけで、抱くなんて言ってないからな」
マック「抱くとか性的とかリアルに言うなよ。あんた、ナルセが大事じゃないのかよ?
ナルセをあんな野郎にやってもいいのかよ?」
レイジ「あいつだって子供じゃないんだ。いずれ分別をつけて、どちらかに決めるさ」
リ ン「どっちかじゃなくて、ナルセは戻ってくるって言ってくれよ」
レイジ「だってもう崇められて、天狗になっちゃって、どうしようもないんだろ?
ナルセの頭が冷えるのは、たぶん、俺の口説き文句があいつのハートに届く頃さ」
マック「だったら、永遠にないな」
リ ン「うん。レイジの口説き文句がナルセに届いたことは、一度もないもんな。
頭が冷える前に、心が冷えるよ。瞬間冷凍」
レイジ「お前ら、自分に刺客を送って欲しいようだな?
だいたい、その――浮気相手の男?って奴は、どういう人物なんだ?」
リ ン「レイジ、調べてないの?」
レイジ「あいにく、俺はそんなに暇じゃないんでな。バンド関係は専門じゃない。
バンドマンなんて乳臭いジャンル、俺が知るか」
リ ン「アイツは業界じゃ有名だよ。悪名高きでね。どっちかといえば嫌われ者だ。
名前は枝間。ロタケスってバンドを主体でやってて、色々な店に顔出してるけど、
つけ刃で場当たりの即席バンドも組んで、安ギャラで店を渡り歩いてる。
サイテーだよ。一夜限りで人を集めるのも速いけど、捨てるのも早い。
箱バンを追い出して、即席バンドで乗っ取ったって噂もある。
アイツが関わると店が潰れるって、クラッシャーだの死神だのと言われてるよ」
レイジ「ははぁ、そんなヤツはいるな、どこの業界にも。
ケチなプロデューサー気取りだ。だけど、店にとってはBADドラッグの始まりだな。
赤続きの店は、安いギャラに手を出さずにはいられないってやつだ」
リ ン「そうさ、ヤツが潰すのは、火が付き始めた店ばっかりだ。
気がついたら、そいつが通った店は炎上して全焼だよ。店は崩落。潰し屋だ。
だけど本当はヤツが潰してるわけじゃない。もうすでに手遅れの弱ったところに、
最後の残飯を漁りにくるんだ。要するに、ハイエナなだけだ」
レイジ「ハイエナね。死神の方が、いくらかカッコイイな。
やっぱ対決するなら、美学も必要だ。コードネームは『死神』でいこう」
リ ン「信じられないのは、それでもその死神と、手を組む奴は後を絶たないってことさ。
だからミュージシャンは、意識が低くて使い捨てだなんて言われるんだ」
レイジ「そんな男に、何故ナルセは関わったりしてるんだ?
あいつが相手にするとは思えないがな。どうかしちまったのか?」
リ ン「だから散々言ってるだろ。どうかしちゃったんだってば!!
助けてくれよ、レイジ。あいつはもう、生きる屍なんだって!
豪に捨てられて、色んなものを見失ってるんだ……そうさ、そうなんだよ。
結局、そうなんだ。ナルセは、完全に見失ってる……誰かが止めないとダメだ。
最悪のタイミングで言い寄られて、崇拝されて、仕事とプライベートを混同しちまってる」
レイジ「弱い男だからねぇ、ナルセくんは……」
リ ン「弱ってるときのあいつは、硝子ちゃんだよ。いつだって、危うかった。
でも、本当に壊れるなんて。豪のせいだ……ちくしょう、豪のヤツ、
なんだってナルセを捨てたんだ。信じられないよ」
レイジ「うーん、豪も捨ててくれるなら、俺の目の前に捨ててくれないとな」
マック「なぁ、ちょっと。あんたら話がまったく進んでないぜ?
それでどうすんだよ、ナルセのことは。
ナルセがガラスちゃんでもカラスちゃんでも、どっちでもいいじゃんかよ。
シックスティーズには、ナルセが必要なんだよ。それだけだろ。
レイジ、あんたが死神を殺せば済むじゃんか。やれよ、さっさとよ!!
ビビってんのかよ? とんだヘタレの暗黒サイドだな!」
レイジ「―――おまえを先に殺っちまうか。いいか? いいよな、リン?(-"-メ)」
リ ン「なぁ、うちの怖いもの知らずで空気読めないベースを亡き者にする前に、
あの死神の方を、黄泉の国へ帰してくれよ、お願いだからレイジ。
そのあとで、マックは好きにしてくれていいからさ。
縛るなり殴るなり、好きにしてくれ。とにかく、ナルセなんだよ」