More Than I Can Say(4)
登場人物:リン/レイジ
場所:ピアノ・マン(閉店後)
レイジ「おい。ナルセが今日、豪の部屋にいる確率は、何パーセントだよ」
リ ン「さぁね。10パーくらいじゃない?今夜は、山本さんとデートもだん。
もっとも、ヘミも一緒だから、どうなるか分からないけど」
レイジ「ヘミとナルセの同伴か。山本さんも高くつくな。もっともあの二人を連れて
どこかの店に行くんじゃ、さぞ鼻高々で、ご満悦だろうがな。
山本さんは、新条社長のツレだよな確か。うちでも豪遊してくれないかな」
リ ン「山本さんは、いい人だよ。別に二人を他所で見せびらかそうってわけじゃないよ」
レイジ「甘い甘い。そう思ってるのは、純粋バカのお前くらいさ。
俺らの歳になれば、皆そういうクダラナイ見栄が多くなるもんなんだよ」
リ ン「ふーん。さすが年の功だね、レイジ。覚えとくよ」
レイジ「さてと、リンくんはこのレイジ様に、何の愚痴を零そうっていうのかな?」
リ ン「別にないけど。ただ、もう少し飲んでいたいだけだよ。飲むにはツマミがいるだろ」
レイジ「俺はサキイカかよ」
リ ン「アハハ。キャビアって云いそうな店なのに、サキイカっていうレイジ、好きだな」
リ ン「生憎、お前に好かれてもね、リン。お前な、豪が好きなんだろ?」
リ ン「!な、何を云ってんだよレイジ!そりゃ、豪は友達だもん、好きだぜ?」
レイジ「俺がそんなしょっぱい意味で聴いたと思ってるのか?ガキじゃあるまし、
誤魔化しきれるかよ」
リ ン「…レイジは、何でも分かっちゃうんだな」
レイジ「あれま。本気かよ?優良健全のリン青年が、またどうしてそんな世界に。
ナルセの色香に中てられたってんなら分かるが、豪かよ?マニアックだな。
でも、お前、ノーマルだよな?どうしたんだ」
リ ン「そうだよ。自分でも変だと思うよ。でも、正直、分からないんだ。
俺って、豪のこと…本当に好きなのかな」
レイジ「おいおい、今時、幼稚園児でも、もっと直球なセリフを吐くぜ?
お坊ちゃまは、純愛から始めるつもりなのか?
この世界にデビューしようってんなら、レイジ様が手取り足取り教えてやるぜ?
つまり、男での筆おろしな」
リ ン「やめとくよ。レイジは悪い男って感じだから、初めからじゃ怖いよ」
レイジ「俺はマジメな男なのよ。知んねーかも知れないけど」
リ ン「レイジが真面目な男なら、ナルセは聖女じゃん?」
レイジ「お前も云うねぇ。つまり、デタラメってことだな」
リ ン「豪は、ナルセの恋人じゃんか。俺、ナルセのことは好きなんだ本当に。
そういう意味じゃないぜ?あいつの親友だからさ。
だからこんな気持ちは、おかしいと思うんだよなぁ…」
レイジ「理屈じゃねぇからなァ、そういうのは。具体的にどう豪が気にかかるんだ?
豪と寝たいってわけなのか?」
リ ン「そんなことないと思うけど…俺、男なんて経験ないし、憧れなのかな。
多分、憧れが強くなって、そう勘違いしてるのかもしれない。
豪とナルセを見てるとさ、どうしたって豪の忍耐さがクローズアップされるだろ?
いっときナルセの味方をして、理解を示せって、豪を言いくるめたこともあるよ、俺。
でもさ、ナルセは度が過ぎるだろ?酷いよな。なのに豪は、ケンカしたって絶対
戻ってる。なんかスゲー忍耐力だなと思ったら、ナルセが羨ましくなって、
豪のことが、気にかかってきてさ…」
レイジ「ああ。それは憧憬だな。愛されてるナルセに嫉妬してるんだ。
きっと、あいつらが別れたら、まったく気にならなくなるさ。
お前が好きなのは、ナルセに惚れ込んでいる豪、だからな」
リ ン「そうなのかな」
レイジ「そうさ。でも二人が別れたら、俺がナルセを貰うから、お前は豪を射止めろよ。
これ、密約な。悪魔の契約」
リ ン「何云ってんだよ。そんな約束できないよ。レイジのそれでいったら、
俺は二人が別れたら、豪から興味を失うんだろ?」
レイジ「そうじゃなければ、本気かもしれんから、アタックしてみろって」
リ ン「無駄だと思うけど」
レイジ「そうだな。たぶん無駄だな」
リ ン「どっちだよ。レイジは適当なんだからホント」
レイジ「豪は、ナルセと別れたら当分は誰とも付き合わないと思うぜ。賭けるか?」
リ ン「賭けないよ」
レイジ「だよな」
リ ン「ナルセは、どうすると思う?本当に豪に振られたらさ」
レイジ「俺と心中する」
リ ン「殺すなよ、ナルセを」
レイジ「俺はいいのか?酷いなリン」
リ ン「レイジの死にたい病は、いつもだろ。
失恋で弱ってるナルセを道連れにするのかよ?」
レイジ「名案だと思うが。待てよ。あの世でケンカになるかな?」
リ ン「エトーさんとナルセで、レイジの取り合いになるって云うこと?
そうかな。逆にナルセにエトーさんを、盗られるんじゃないかな」
レイジ「微妙に不愉快だが、正解だ。ナルセを道連れにするのは、やめておこう」
リ ン「レイジも、死ぬなよ」
レイジ「ありがたいね。俺はついでか」
リ ン「真剣に止められたら、死にたくなるんだろ?
ナルセがそう云ってた。だから適当に止めておけって」
レイジ「あいつ、本当は俺に惚れてるよな?可愛いけど憎たらしいな。犯してやりたい」
リ ン「レイジの口からは、本当のことって絶対出ないんだろうな。ちょっと寂しいよな」
レイジ「心外だ。俺はいつも本音で喋ってるのに。寂しいなら、俺のベッドに招待するけど」
リ ン「あっそ」
レイジ「まぁ、豪なんかに惚れたって、いいことなんかひとつもないぜ。あんな堅物、やめておけ」
リ ン「やめようと思ってやめられるならいいんだけど、このモヤモヤした想いって、
ずっとあるのかな。ヤダよな…」
レイジ「そうだなァ。やめようと思って、気持ちを止められるなら、本当にいいんだろうがな。
いっそ豪に云って、振られてみろよ。そうすれば、ハッキリするかもしれんぜ」
リ ン「そういうこと云って、面白がってるだけだろ、レイジは」
レイジ「そうだけど?」
リ ン「そんなことしたら、ナルセも豪も、ビックリするじゃんか!
しかも本気かどうか、当の本人が分かってないのに。無責任だよ。
なんか自分の気持ちが分かる、テストみたいなものないかな」
レイジ「荒野の豪ちゃんと、寝てみろよ」
リ ン「そんなのありえないよ。ナルセに殺されるし、豪だって、嫌がると思うよ」
レイジ「なら、それが答えだ。関係を崩す気がない程度の淡い憧れの恋みたいなもんだ。
お前は、二人にまとめて恋してんだよ。
やれやれ、リンはお子様だと常々思ってたが、本当にガキだったんだな。
いい歳して、ビックリするぜ。こんな幼稚な相談をするのは、俺だけにしておけよ?」
リ ン「レイジに相談なんかしてないじゃん。勝手に聴いてきたくせに…」
レイジ「でも誰かに言いたかったんだろ?俺が適任じゃないか。
それでもモヤモヤするなら、レイジ様が抱いてやるから、いつでも云いなさい」
リ ン「…遠慮しておくよ。なんかレイジにハマると、もっとヤバそうだもん。
ナルセより、きっと数段ヤバイ気がする。俺、フツーに戻れなくなるよ」
レイジ「聴いたセリフだなぁ。そういう逃げ方か。
でも、なんか俺もまんざらじゃないってふうに、聴こえるな」
リ ン「だってレイジ、カッコイイじゃん。見ためもいいし、若く見えるし、セックスアピールあるし」
レイジ「なんだ、急におだて作戦か。高価なボトル、入れといてやろうか?」
リ ン「レイジは、興味がないから、知らなかったかもしれないけど、
セブンレイジィに居た時、ファンの子、すごい多かったんだぜ?老いも若きもメロメロみたいな」
レイジ「それは知らなかったな。今度、若きたちの方を紹介してくれ」
リ ン「今はナイトクラブのオーナーとしても人気で、渋くてクールな若きオーナー目当ての
紳士淑女が、毎夜ピアノ・マンの扉が開くのを、うっとり待ってるって噂だよ?
なのに全然、誰にも見向きもしないで、ツレナイって聴いてるけど」
レイジ「もう、お前、帰れ。本当に嫌がらせの仕方が、ナルセに似てきたぞ」
リ ン「レイジ、けなされるのは好きでも、誉められるの苦手だよな」
レイジ「本当にイイ子だから、帰んなさい。頼むから帰ってくれ。お店、オジサンはもう閉めたいの。
あんまり調子に乗ってると、シックスティーズのハウスバンドは出入り禁止にするからな!」
リ ン「へーい、分かりました。可哀相なリンくんは、ひとり寂しく帰りますー」
レイジ「ガキは動物のぬいぐるみでも抱いて、寝てりゃいいんだよ」
リ ン「レイジ」
レイジ「なんだよ」
リ ン「サンキューな。危険なレイジには、惚れないようにするよ」
レイジ「はいよ。渋くてクールな狼ちゃんと話したくなったら、いつでも来な」
photo/真琴 さま (Arabian Light)