☆銀/魂パロディ

夏 花 火


登場人物:銀時/土方
場所/隣町のラブホ

<1>


土方「その日は 夜勤だ」

銀時「えええええぇぇぇ!? マジでか!」
土方「マジでだ」

銀時「ちょ おめー ソレ何の日だと思ってんの?
    祭りだぜ? お祭りですよ? ありえなくね? はぁ?
    夜勤てナニ? 夜のお仕事? 意味わかんねぇわ
    仕事大好き人間コンテストに出たら 優勝する勢いだわ!!」
土方「そっちの方の意味がわかんねぇわ
    祭りと云えば 警備だろうが そんなん一般的に決まってるだろが
    普通に考えてそうだろが 俺を誰だと思ってんだ ボォケェ」

銀時「そんなんサボっちゃえよ 有給取ればいいだろが ボォケェ
    祭りで休んでる隊士も 中にはいるんだろうがァ?」
土方「いねぇよ 俺が許可しねぇからな(ニヤリ)」

銀時「うっわ やな上司だな〜 嫌われるぞ でもおまえんちの
    ドS王子とか先頭きって もうドロンじゃね?
    焼きトウモロコシとか 食ってんじゃね?」
土方「総悟は 休みは取らなかったが サボるだろうな
    あいつなら焼きとうもろこしどころか チョコバナナも食うな」

銀時「だったら!」
土方「だからこそだ あいつに警備任せっぱなしにしといたら
   祭りも大混乱だろーが お前も屋台で たこ焼き食ってて
   車が突っ込んで来たら困るだろうが ちゃんと見張っとく必要があんだよ
   みんなが楽しい祭りに混乱しないようにな」
銀時「ちぇ なんだよ テロの見張りじゃなくて
    ドS王子の見張りですかコノヤロー いいよなァ
    お前ら二人で 花火見れてさ 仕事DEデートですか?
    そうですか 銀さんは どーDEもいいってそういうことですか」

土方「なんでデートだ しょうがねぇだろ
    こんな職業についてて 祭りは無理に決まってる
    お前は 万事屋の連中と一緒に行けばいいだろ
    チャイナは お前と行くのを楽しみにしてんだろ」
銀時「お前さ―― なんか最近 神楽に 気 つかってね?」
土方「なんで俺が てめぇのとこのチャイナに気を遣うんだよ
    気持ち悪いわ 全然使ってないね 結婚式で貰った食器くらい使ってないね」
銀時「だってさぁ 何か お前の誕生日以降 お泊りないだろ?
    一泊は無理だ 帰らなきゃ駄目だってさァ…」
土方「…別に 無理だから無理だと云ってるんだ
    チャイナは関係ねぇ 俺は帰って仕事しなきゃなんねぇ身なんだよ
    別に泊りでなくともいいだろ あんなんご休憩で充分だろ」

銀時「さり気に傷つくこと云った今? 全然十分じゃないけどね
    ご休憩だからあんなん なんだからね? お泊りならそりゃあ
    スッゴイからね もう 銀さんマッドビクトリーだからね
    そっかァ? 気のせいか?
    お前って 変なとこで気ィ遣うからなァ そんなん使うんだったら
    銀さんに お金使って下さい」
土方「ハァ? 何でお前に貢がなきゃならんのだ 冗談じゃねぇわ
    ただでさえ 最近 お前の財布みたいに なってきてるのによ」
銀時「えっ 俺の財布じゃねぇの?」

土方「ちっげーーーわァァァ!!何そのびっくり!たたっ斬るぞ!!」
銀時「あのさ 神楽が云ってたんだ マヨに意地悪しちまったってな
    来るなって そんなつもりじゃなかったってな 気にしてんだろ?」
土方「…別に 何の話だ? 意地悪なんかされてねぇよ?
   なんで俺が意地悪されんだよ おかしいだろ 警察だぞ 俺は」
銀時「ん… まぁ いいや そっか お祭りは無理か 土方クンは」
土方「そうだな 悪いが一緒にはいけねえ 皆で楽しんで来いよ」
銀時「うん 分かった」

土方(――? なんだ? やけにあっさり 引きやがるな?)

銀時「あのさァ でも 仕事してても 花火は 見えるよね?
   土方クンは どのへんで警備してるの? もう分かってるんだろ?」
土方「さぁな 調べりゃ分かるが…云わねぇよ」
銀時「それくらい教えてくれてもいいだろが ケチ」
土方「配置は警察内部の極秘事項だ 教えるわけにはいかねぇんだよ」
銀時「あっそ じゃあ銀さん すっげー美人とお祭エンジョイしちゃうもんね!」
土方「おーそうしとけ そうしとけ 美人がつきあってくれたらな フッ…」
銀時「んまー! 今 鼻で笑った?! 憎たらしい子!!
   ちょっとでも妬いてくれたら 可愛いものを…
   ホントお祭りとかって 祭囃子の笛の音や 暮れなずむ夏の匂いって
   なんかこう 恋とか欲望とか 色んなもん 芽生えちゃうかも
   しれないんだからな!!」

土方「じゃあ 欲望が芽生えたら こっそり境内の裏 来いよ
   …処理してやるよ」
銀時「えええええええ!! ホ、ホントカ!!Σ(〃 ̄□ ̄〃)!」
土方「んなわけねーだろ 冗談に決まってンだろが アホか
   勝手にサカッてろ バーカ」

銀時「かー!! しんねぇからなァ 本当に浮気しても…!
   銀さんお祭りじゃ 商店街のおねーちゃんらに モテモテだからなァ!!」
土方「したいなら勝手にしろ でも以降は俺に近づくな 以上」
銀時「ええェェー?! なんて高飛車なヤツだよお前…驚くわ
   お前のお高いとこホント容赦ねぇよな どこの超高層だよ
   ブルジュ・ドバイよりも高そうなプライドの高さだよ?
   ワリードビンタラール王子も 高さ競って張り合ってくるからね?
   俺ってさァ ホントに愛されてんの? なんかもう自信ねぇわ」

土方「たかだか祭りの誘いを断ったくらいで 大げさなんだよ
   ふざけろ てめぇの大好きな 綿飴とかリンゴ飴とか 食えたらいいんだろうが
   俺の財布が必要なら 持ってけよ 一緒に行けない詫びだ ほらよ」
銀時「そんな問題じゃ!!…でも財布に罪はないからな うん
   預かっておこう とりあえず ゴホン でもそんな問題じゃないからね?
   銀さん 屋台の甘いものが食えなくて 拗ねた小学生みたいに
   ブチブチ文句云ってるわけじゃないからね?」
土方「でも 財布があれば 大体は解決するんだろう?」

銀時「うん 大体はな…イヤ だから ちげーって そうじゃねーって」
土方「一日目の花火は無理だが 二日目なら なんとかなる」
銀時「え?」

土方「ただし …手を繋ぐとか そういうのは無理だからな
   境内の見回り警備だから 傍にいるくらいなら…許可する」
銀時「許可するって お前どこまで高飛車だよ どんだけツンデレだよ
   でもまぁ それでもいいか 上等じゃねぇの
   祭りはさ やっぱ祭りの雰囲気と一体になって
   一緒に夏の匂いを 体感することが 大事だよ」
土方「そんなもんかね 祭りを楽しむなんてなァ
   近藤さんたちと 田舎に居た時 行ったっきりだな」

銀時「…金魚すくいとかした?」

土方「ああ 総悟がズルばかりしてな 俺もまだ ちょっと意地張ってたから
   総悟にゃ負けられねぇってんで メチャメチャ捕りあいになって…
   近藤さんが 店のオヤジに謝ってたっけな… 懐かしいな」

銀時「楽しそうな 顔 してる」

土方「あ? いや ゴホン ま ガキの頃の思い出だ
   あー誰にだって あンだろ? お前こそどうだったんだよ」
銀時「俺は 祭りは行ったことない 見たことはあるけどな」

土方「え?」

銀時「それじゃな! 祭りの二日目 楽しみにしてるわ!!」

土方「え あ…あァ だから!俺はあくまで一応 警備だっつーの」




夏祭り…

見ていたのと 行ったのでは どう違う?
同じ場所にいるのには 違いはないのに?

皆でワイワイと 参加していた
ただ それをひとり 眺めていた
そういう意味なのか?
祭囃子を懐かしいと 思うのか
ただ
見ていただけのことを思い出して
悔しい 憎い と思うのか

優しい懐かしい記憶を
持つのか

持たないのか

それは 案外 大人になる時に
大事なことなんじゃないのか?

汗が 湧き出る むせ返るような 暑さ
息が 苦しく 熱気に 溺れる

何十もの輪を描くような 蝉の声
意識が朦朧となるほどの 大合唱に
記憶が 飛びそうになる


どこかで 風鈴の音がした

さっと 汗が引き 安堵する



おまえは 夏が終るときの
風鈴の音を 聞いたことがあるか?

銀時―――













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