2013☆年始☆妄想ショート・ストーリィ
電タブシリーズ

10年後のクリスマス・2

※ご注意※
この物語は仮想の将来話であり電タブ本編とは一切関係はありません
これは「10年後のクリスマス」の続編です



登場人物:番犬/キラ
場所:キラのオフィスのカフェスペース




番 犬「おまえ、それで逃げ帰ってきたのか?」

キ ラ「だって!! だって俺、プロポーズされたんだぜ?!
    ありえねーだろ、ちょっと、どう思うんだよ、番犬?!
    まさかエンゼルのヤツ、今さら俺への復讐のつもりか?!
    あのエンゼルの野郎を、お前はどう思うんだよ?!」
番 犬「エンゼルはもの好きだなと思うな」

キ ラ「もの好きで片付けられたら、俺の立場はどうなるのさ。失礼な奴だな」
番 犬「おまえは受けるか断るか、どちらかしかできねぇだろ」
キ ラ「どっちかなの?」
番 犬「どっちかだろ。だいたい何故、おまえはエンゼルなんかとつきあったんだ」
キ ラ「いや、それはさぁ……」



―――ある日、あの男が云ったのだ。


バカみたいにバカ正直に、いつもの調子で。
まさか付き合ってるだなんて、思っちゃいなかったのに。
ただ他人のベッドなのに心地いいとか思っただけなのに。
珍しく肌がまったく拒否しなかっただけなのに。


エンゼル「なぁ……これ、どういう関係だ?」

キ ラ 「これって?」
エンゼル「だからその、この、これだよ。お前がベッドに寝てる、こういう風な感じの関係だよ……」
キ ラ 「お友達じゃねーの?」
エンゼル「ともだち? お前、友達と寝るのかよ……」
キ ラ 「お友達の種類によるけど。たぶんセックスフレンドなら寝るよね。
     むしろそれが目的のおトモダチだよね?」
エンゼル「てめぇ!! おれ以外に誰かと寝てんのかよ?!」

キ ラ 「うわ、ビックリした! 大声出すなよ、なんだよ、いきなり?」
エンゼル「だからっ、おれ以外にこういうことしてんのかって聞いてンだよ?!」
キ ラ 「えっ……エンゼル。まさかもしかして、お前だけだと思ってたの?」

エンゼル「ち、違うのかッ?!Σ( ̄□ ̄)」



―――その驚き方が超絶に可笑しくて、思わず嘘をつきそうになった。
けど、なぜか嘘はつかなかった。

俺は昔からあまり他人に触れられるのは得意じゃない。
大人になっても、それは治らなかった。
ラスみたいに、誰とでもセックスなんて不感症なことはできない。
バカラと番犬とラス以外には、俺の指さえ触らせない。
だからエンゼルは特別。
こうして何十回も、指どころか体を重ねてるんだから。
なぜ平気なのかそれは不明。



キ ラ 「違わない。あんたとしか寝てないけど、俺」
エンゼル「……じゃ、つ、つきあってるって、思っていいか……な?」

キ ラ 「――――?! 〜〜〜ッ(>▽<)/」

エンゼル「な、なに笑ってんだよ?! てめぇ、笑うとこか、ここ?!」
キ ラ 「だ、だ、だって、エンゼル!! ナンダッテ?!
     うわーーッ、可笑しい〜!! 可笑しいだろッ! つ、つきあってるだって!!
     ぷっくく……ひゃひゃひゃ、ひィ〜〜ッ(>▽<)”” はーっ、苦しい!!
     ヒィ〜ヤメテ、お腹がヨジレルぅ〜!! マジやめて、ひゃひゃひゃ……」
エンゼル「……フン。そうかよ。そんなに笑うような質問なのか。
      なら笑ってりゃいいだろ。そんなにお前には面白いことかよ?」


そして。

あまりに真面目な声で不機嫌になってしまったので、笑いが止まってしまった。


キ ラ 「……や。なんだよ? 何で笑えねーの? 笑うトコじゃねぇの?
     なんでそんなにマジな顏してんの? 可笑しいだろ。笑えば?」
エンゼル「笑うよな話はしてねぇよ。マジで聴いてるんだ。
      なんでお前、ここにいるんだよ。おれと。結構もう長いよな。
      つきあってもなくて、何故毎回おれんちに来て、服を脱いで寝てんだよ?
      お前は男娼かよ? 違うだろ、金なんか払ったことねぇだろが」
キ ラ 「なんでって……なんでかな。だってお前が脱がすからじゃない?」
エンゼル「えっ、おれのせいなのか?!」

キ ラ 「うん? そうなんじゃないの?
     毎回あんたがおれを脱がせて、えっちなことするからじゃん」
エンゼル「んなッ……?! そうか、そうなのかよ……? 別に無理強いしたとは思わないけど、
      だったらもうやめる。悪かったな。嫌だったとは全然思わなかったしな。
      もう二度とお前としないし、もうお前も明日からここに来るなよ」
キ ラ 「えっ。なんでそうなるの? 別に嫌だなんて言ってないじゃん。
     つきあってないと寝ちゃダメなのかよ? ラスなんかあれ、全部遊びの相手なんだぜ?」
エンゼル「知らねェよ。おれは遊びではしない主義なんだ」

キ ラ 「―――あんた、ひょっとして、俺としかしてないの?」
エンゼル「はぁ?! 当たりめぇだろ!!」
キ ラ 「それって、あんた、俺と遊びじゃないってこと?」
エンゼル「……当然だろーが。おれがそんなに不誠実に見えるか?」
キ ラ 「それって、本気ってこと?」
エンゼル「本気に決まってんだろ! ふざけてんのか!」
キ ラ 「……ええと。それ、どういう意味だっけ」

エンゼル「どういうって……だから!!
     おれは本気でお前と向き合ってるってことだろ!」
キ ラ 「向き合ってるって、どういうこと?」
エンゼル「だからッ、なんだよ、もう、お前のことが、おれは、す、す、す、す―――」
キ ラ 「―――き、なの?」

エンゼル「そう! だよ!! いちいち、ッズカしくてんなこと云えるかぁ!!(ー″ヘ ー〃)」
キ ラ 「マジで? あんた、俺といるといちいち怒ってばかりいるけど、
     それでも俺のことスキだって言うの? 昔のこと全部チャラにするわけ?
     あれだけバカにされて、怨んでないの? それともバカ過ぎてやられたこと忘れたのか?」
エンゼル「忘れてねぇよ。怨んでねぇと言えば嘘になるけど、別に……もう良いっていえば良いんだよ。
      もうガキの頃の話だし、今はもう、そんなん関係ねぇだろ。もうチャラだよ。
      そんな話、いまさら持ち出すなよ」
キ ラ 「マジにマジで? 全部あれがチャラになるくらい、俺が本気で好きなわけ?」
エンゼル「そ、そうだよッ!! そうじゃ悪いかよっ」

キ ラ 「あのさ。だったら尚更、お前、全然ちゃんと言えてないよ、さっきから?
     そんなんで俺に告白した気にならないでくれよな。キラ様はモテるんだぜ。
     しっかり言葉に出して言っておかないと、他の奴に盗られるぜ? いいの?」
エンゼル「う”ッ。……じゃあ、ちゃんと言うから、しっかり聴いてろよ……。
      ゴホン、い、い、いいか?! いっかいしか、いっかいしか云わねぇからな?」
キ ラ 「だから一回でも言ってみれば。ホレ、いいなよ。言えるなら言ってみせれば」

エンゼル「くそ。……キラ!! おれと、つ、つきあってくれ、お前がすすすす、好きだ!!
      結婚を前提におれと付き合ってくれませんか!! ……以上ッ!! おわり!!」

キ ラ 「えっ……(・.・)ケッコンヲ ゼンテイニ ッテ イッタ?





番 犬「結婚を前提に付き合ってたなら、いいじゃねぇか。エンゼルの手順は正しい」

キ ラ「……いや、ただの言葉のアヤだと思ってたんだよ。本気だなんて思わないだろ。
    結婚て何だよ。結婚できるんだっけ、男同士で」
番 犬「できるだろ。今の時代、法的には問題ないはずだ。
     とにかく、結婚を前提につきあってたならするかしないかどっちかだ。奴は本気だ」
キ ラ「何で本気よ?」
番 犬「もの好きだからだ」

キ ラ「あのさ、駄犬と会話しようって俺が間違ってるわけ? 先に進まないんだけど」
番 犬「おまえはどうしたいんだ。いったい俺に何を確認しに来たんだ。
     エンゼルの頭が正気かどうかってことか?」
キ ラ「それでもいいけど……」
番 犬「正気だ」
キ ラ「お前、俺がエンゼルのプロポーズを受けてもいいのか?」

番 犬「……そうだな。エンゼルなら渡してもいい。あいつは俺の親友だしな」
キ ラ「渡してもいいって何? 俺、あんたのモノじゃないんですけど?」
番 犬「俺に聴くからだろ。心配するな。おまえがエンゼルと結婚しても、おまえの傍にはいてやる」
キ ラ「何ソレ。別にあんたに居て欲しくて聞いてるんじゃないんだけど。
    傍に居たいなら勝手にいれば。犬は引っ越すなら飼い主についてくもんだろ。勝手にすれば」
番 犬「じゃあ何故、俺に聴いた」

キ ラ「―――エンゼルは本気かなって確認したかった……のかな?」

番 犬「だから言ってる。奴は本気だ」
キ ラ「……そう、か。やっぱり」
番 犬「受けるのか?」
キ ラ「もし受けなかったら、どうなる?」
番 犬「知ってるか。エンゼルは案外、人気だぜ。MB生まれのわりに人間ができてる。
     元ハッカーの経歴を隠して就職しなかったが、業界でも丁寧で親切な人柄から好感度も高い。
     昔のトレードマークだったタテガミも今やまったく見る影もなく普通の短髪だしな。
     エンゼルは案外いい男になったな。だからおまえが断れば、他の女が猛アタックに来るぜ。
     失恋したエンゼルが一人でいる理由はないからな。いいのか? それで」
キ ラ「……良くない。ムカつく」

番 犬「何故ムカつくのか考えてみろ。
     おまえも結局、ヤツが好きなんじゃないのか、キラ。認めればどうだ」
キ ラ「そんなんじゃない。おれの玩具を他の奴に渡すのは、ムカつくからだよ」
番 犬「いつまでもおまえの玩具じゃないぜ。受けるのか、プロポーズを」
キ ラ「うるさい」

番 犬「好きにしろ。だがエンゼルは良い奴だ。おまえのような性悪と結婚しようなんて、
     度胸のあるヤツは金輪際二度と現れねぇぜ。誰だって暴かれるのは嫌だからな。
     おまえを他に信用しているのは、イカレタ崇拝者だけだ」
キ ラ「あいつは、さんざん俺に暴かれたんだぜ? 一体、どういう変化なんだ」
番 犬「もう暴かれるものが無くなったんだろう。もしくは――」
キ ラ「……もしくは?」

番 犬「だから言ってる。もの好きだとな」

キ ラ「……(ー_ーメ)」

番 犬「疑ってるのか」
キ ラ「……何をさ」
番 犬「騙されると思ってるんだろう。イエスと返事をしたら、そこでエンゼルは嘲笑うとな」
キ ラ「そうかな?」
番 犬「そうかもな。おまえのしたことを思い出せば」
キ ラ「……普通は、そう考えるよな」
番 犬「おまえのしてきたことは最悪だからな。でもエンゼルはこれでおまえにやっと復讐できる。
     奴もおまえに習って、長期戦で信頼を得てきたのかもしれねぇな。
     最後に嗤うためにな」

キ ラ「―――。だったら」

番 犬「冗談だ。そんなことがエンゼルにできると思うか?
     おまえじゃあるまいし、できない。逆におまえはそれができるがな。
     ならプロポーズを受けて、式の当日に嘘だと皆の前で嗤え。そしてエンゼルを再起不能にしろ」
キ ラ「……俺、もうそこまで酷いガキじゃないんだけど。これでも社長ですけど」
番 犬「そのエンゼルを傷つけて、今、一番傷つくのは誰か知ってるか」
キ ラ「……だれ?」

番 犬「おまえだ」



photo/真琴 さま