スモール・パラダイス

登場人物/エンゼル  テキーラ



「お前が怒ってる原因は何だ 番犬なしで外出するなんぞ 無用心にもホドだぞ」

「気になる? 俺たちがケンカしてること」

「ケンカってなお互いの同意でできるもんだろが お前が一方的に怒っててケンカでもねぇだろ」
「そんなことないよ 最近ケルベロスも随分レベルアップしたんだ キールのお陰でね
 でもあいつは 怒ってないだろうね 意味わかんないんだよ バカだから
 もっとも騙して出てきたから 今頃はムカついてるかもしれないけどな」
「お前は何を怒ってるんだ」

「エンゼルはいつも怒ってるよね」
「誰が怒らせんだよっ」
「怒らせると相手の気持ちが俺に向くじゃん? だからエンゼルのこと怒らせたいんだ 俺」
「どういう意味だ」
「わかんないかなぁ 鈍いなぁ だから彼女できないんだぜ
 エンゼルが好きだからに決まってるじゃんか」



「…そういうこと言って俺が騙されるとでも思ってんのか
 このクソガキ お前の手管なんか何十回も何百回も経験済なんだよっ
 だいたいな 俺だっていつまでも彼女できないわけじゃねぇぜっ」
「へぇ?誰かいい人いるんだ? そういえば映画に行くって言ってたね
 でも俺くらいエンゼルのこと知ってる人間ていないと思うぜ? 
 チームの誰よりも深いところまで知ってる 心開いてくれるよなぁ…
 俺にくれるラブメールとか バーチャルームでのデートではね♪
 あんまり素直で 俺が騙されてるんだと思っちゃうくらいさ」

「てめぇ! お前なんかに心開いてんじゃねぇや俺は!!不気味なこと言うなっ
 俺はな お前が騙って来るニセモノ女に対して友好的なんだよっ
 初めからお前だと知ってて誰が友好的になれるか!! いい加減ネカマはヤメロ!
 俺以外にも色んなヤツが心病んでド迷惑してんだぞ!そんなに人を騙して何が楽しい」
「俺さぁ エンゼルの口説き文句って全部言えるケド」

「ふ 復唱しやがったら 今すぐ殺ス…」
「でもさ そこまでエンゼルに恋されちゃう俺って
 結局エンゼルの好みってことじゃなんじゃないの?ねぇ? どう?」
「…ゾッとするようなこと言うんじゃねぇよ
 全部嘘っぱちのニセ女でデタラメ語ってるだけじゃねぇか てめぇはよ!」
「本当にそう思うんだ? だけどあんなに密に言葉を交換してたら
 少しくらい本音が出るだろうってことは 思わないんだ?」
「…お前に限ってはな そんなこと思った時には笑われてさらし者だ
 たとえ何百回繰り返したって お前の本音だなんて これっぽちも思わねぇよ!」
「ふうん でも俺はエンゼルの本音も …幼少の悲痛な思い出も知ってるよ」

「…てめぇ 俺を脅す気か この右目のことを晒す気なら曝せよ
 勝手にやりな どの道いつか誰かに話すことが 早まるだけだ」
「話す? アンタは誰にも話すつもりなんかないだろ?
 あの話は俺が巧みに聞き出したに過ぎないからな
 時期が早まるだけって言ったけど どこからか話だけが早まって流れたら
 あんたどうなるの? エンゼルヘッドはどう思って どうなるのさ」

「――どうなるって 何がだよ」

「あんたは 傷つくのかって訊いてるの」

「そりゃ 痛手は追うだろうな」

「それは俺が暴露したことに傷つくのか
 バクロした内容が 皆に知られることに傷つくのか
 その内容を知った あんたの大事な仲間の反応によって傷つくのか
 どれさ?」


4に続く

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