Heat☆Wave


01
クラブ・アルーシャ
インターバル


登場人物:サワ/玲子(アルーシャの常連客)




サ ワ「玲子さん、いらっしゃい。今夜も踊りキレッキレだね☆」

玲 子「キャー!! サワァ〜♪
    君の華麗なツイストには勝てないケドね、フフフ! 超クール!!
    サワのアースって本当、サイコ―よねぇ。ホント、アルーシャの夜って愉しいー!!」
サ ワ「光栄の至り。心を込めて今夜も愉しい気分に貢献するよ。楽しんで行って」
玲 子「ありがと。ねぇサワってさ、昔からイケイケ派だけど、特定の彼女作らないよね?
    バンドマンって、そんなもの?」
サ ワ「なに、突然?」
玲 子「ん、ちょっと確認?」
サ ワ「そうだな。別に作らないわけじゃなくてオレ、彼女にすぐ振られちゃうんだよね」
玲 子「それって二股かけるからじゃないの?」
サ ワ「やだなー。そんなことないよ。三股以上かな?」
玲 子「キャー、悪い子ねwww」

サ ワ「嘘だよ。オレとつきあってみる、玲子さん?」
玲 子「えー、どうしようかなぁ? 君、熟年キラーよねぇ。私そこまで老いてないケド?」
サ ワ「あ、ひでぇ。オレ、熟女が好みなんじゃなくて、素敵な女性が好きなんだよ☆」
玲 子「そーゆーこと云って口説くんだねー。おばさま達は若いイケメンホスト風には弱いもんね」
サ ワ「素敵な女性って年上が多いだけさ。玲子さんは中でも一番若い、ステキな女性だ」
玲 子「そ。悪いけど私、貢がないわよー」
サ ワ「そっか。じゃ、口説くのやめよ♪ アルーシャで精一杯、愛想ふりまくよ」
玲 子「ウフフ、ゲンキンでヒドイ男のサワってイカス♪」
サ ワ「お誉め頂き、ありがとうございます」

玲 子「そういえばさ、シックスティーズのリン? 最近、女の子はべらしてないらしいじゃん」
サ ワ「はべらしてない? そういう認識? アイツってオレみたいな酷い男キャラじゃないだろ?」
玲 子「そんなことないわよ。サワとはまたタイプが違うけど、爽やかドラマーは、取り巻きの女の子との派手な噂、
    かなり満載だったわよ。最近ちょっと噂が無いから、ついに全部喰い尽したのかって云われてるけど。
    それからあと……」
サ ワ「あと?」
玲 子「本命ができて、今はそのコにメロメロだからもう遊ばないって噂があるんだよね」
サ ワ「へぇ。ホント?」
玲 子「それでねぇ、そのコにどうやら騙されてるんじゃないかって」
サ ワ「騙されてる? どういうこと」
玲 子「さぁ? 詳しくは知らないけどクリスマスのシーズン前にね、友達がリンを見かけたのよ。
    なんと、すっごい艶のある美形の男と一緒に、貴金属のショップにいたらしいの!
    ほら、リンてナルセとも噂あるから、もしかして本物の彼氏出現かと疑って傍で聴き耳たてたんだって」
サ ワ「あいつ、バイじゃないよ」

玲 子「そう? そしたらさ、どういうのがいいかな、何が合うかなとか、
    その連れの美形へのプレゼントじゃなくて、どうも他の誰かへの贈り物で、
    選ぶアドバイスを貰うのにつきあって貰ってたらしいのよねー」
サ ワ「どうしてその誰かってのが本命って解るんだ?」
玲 子「リンはファンの子に、貴金属はぜったい贈らないらしいのよ!」
サ ワ「にしてもそれが本命へのプレゼントなんて、やけにざっくりした想像じゃない?」
玲 子「知らないけど、たぶんそれらしい他の会話も聴いてたんじゃないの?
    とにかく、その贈り物の相手はぜったい本命よって核心的に言うのよね」
サ ワ「じゃ、それが騙されてるって噂はどこから?」
玲 子「それは簡単な友達の想像。今年になっても、一向に特定の女性といる姿は目撃されてないし、
    結局クリスマスにプレゼントした彼女にリンは振られたか、騙されたかよねって話よ」

サ ワ「なんだ。それじゃまったくの憶測の妄想ってことだな」
玲 子「そーよー。憶測だけよ。全部、ウ、ワ、サ。バンドマンの真実なんか解らないじゃない。
    親しい友達でも無けりゃさ? 周りでは解らないからこそ色んな噂が渦巻いてるのよ。面白いわよ〜。
    サワはリンと仲良かったわよね? 前はよく飲みに行ってたじゃん? ライブなんかも一緒にしてたし。
    ちょっと軽くそのへん、聴いて見てよ、サワ」
サ ワ「どうかなぁ。最近、プライベートでは会ってないからなぁ。お互い忙しいし……。
    むしろオレたちって、こんなふうにお客さん側から色々な情報が入ることの方が多いんだよね」
玲 子「ふうん。それじゃ、もうひとつの疑惑。その連れの美形とのツーショット目撃談が最近よく入るそうよ。
    だから実はショップでの会話はフェイクで、やっぱ本命ってその美形か、もしくは相手は本当に噂通り……。
    やっぱりナルセが本命、なのかしら?」

サ ワ「ハハハ、ないない。まぁ、確かにそれだと女の子を連れてないことも辻褄あうけどさ。
    でもリンは本当にゲイじゃないぜ? あいつは女の子が大好きだからな。
    だけど何故そんなに玲子さんが、リンのことを気にするんだ? リン、好きだったっけ?
    玲子さんが情報通だとしても、やけに詳しいよな。もしかして、オレから鞍替えする? ショックだ!」
玲 子「バカね。違うわよ。その目撃した私の友達ってのは、前からリンの大ファンなわけよ。
    私の大事な友達。グルーピーの軽い連中とは違う、純粋で控えめな真剣な片想いのファンなのよ。
    だけど控えめ過ぎて本人に好きアピールはできないの。残念なことに。それでいいんだってさ。
    リンは派手な美人が好きだと思ってるから、絶対ムリって思い込んでるのよね。
    あんな誰とでも寝るような軽薄バンドマンに本気になるなんて、どうかしてるわよ。
    あ、ゴメン。サワはリンの友達だっけ」
サ ワ「ああ、そういうこと。いや別にいいよ。確かにリンはファンに手を出す悪い癖があるよな。
    だけどフーン、そういう奥ゆかしいファンもあいつにはいるんだな……。
    どうしてそっちに気が付かないのかなぁ、アイツ? 遊び相手ばっかり選んで、全部振られてバカだよな。
    余計なとこばっかり気がついて、そういうところだけは鈍感すぎるんだよな。恋愛天然鈍感くんか?
    ところでリンの噂ってそんなにヒドイのか? 爽やか好青年って云われてるはずだけど。
    このオレよりもワル? なんとなくリンより悪評が劣るのは気に食わないなァ」

玲 子「風評を張りあってどうするのよ。子供ねぇ。そこがサワのカワユイとこだけど♪
    爽やかリンは見た目と違って、ファンの女の子に手を出しまくってるって裏じゃちょっと有名よ。
    その割に個々のつきあいが短いから、好青年そうに見えてやることやりたいだけの結局遊びだって言われてる」
サ ワ「あー、それって実際は、振られてるだけなんだけどな。さては悪評が出回って成就しないのが原因か?」
玲 子「どうかしらね。本人は振られたって言ってるの? 自分から振られるような素振りでもしてるんじゃないの。
    女は解るわよね、自分に本気か、心ここに在らずかどうかって。結局、遊びなのよ、たぶん」
サ ワ「玲子さん、痛烈だなぁ。もっと言ってやって♪」
玲 子「別にリンに恨みはないし、彼の演奏も性格も、嫌いじゃないのよ。誤解しないでね。
    リンはワイルドだしイカスしすごく優しいし、確かにもてるわよ。女の子は選び放題よね。
    だからリンとつきあいたがる子はいっぱいだわ。でもなんだか違うって気づくから皆、退散するのよきっと。
    私の友達なんかは、ほんと控えめで見て満足してるだけだから、気づかれないのも無理もないけどね」

サ ワ「そうだな。見られてるだけだとオレたちには解り辛いし、誘ってくれないと手は出せないよ」
玲 子「あら、そういうもの? でも声かけて、遊ばれるだけなら嫌だわよ」
サ ワ「ま、ね。本気の恋に行きつくことは滅多にないよな。最初からどっちも期待してないからじゃない?」
玲 子「私みたいに最初から期待してなきゃ、がっかりもしないわね。
    バンドマンに恋愛の夢なんか抱くのは、馬鹿げてるわよ。デショ?」
サ ワ「身も蓋もなくツレないなぁ。そう云われたらこっちも本気になれないよな。
    でもそういうサバサバしたとこが、いいよね玲子さんは。オレを捨てないでずっとファンでいてくれよな」
玲 子「もちろんよ♪ 今のところはね。サワみたいに超美形でスタイル良くてオシャレでカッコイイ、歌も上手いヴォーカル、
    ナルセ以外にどの店でも、見たことないわ〜♪」
サ ワ「キング・オブ・ミスターオールディーズと比べられるのは、光栄のような微妙な気分だ。
    さすがにこのオレでも、ナルセと張り合う気はないけどね。彼は特別だよ」
玲 子「わかる。ナルセは唯一のキングオブ・ナルセよね。唯一無二。ナルセはナルセでしかないわ」

サ ワ「リンの件だけど、だったらナルセの親衛隊に、彼が新しいアクセをつけてないか確認してみたら?
    いちばん簡単だよ。それはただのリンの親友ナルセへのプレゼントかもしれないだろ」
玲 子「でもナルセの親衛隊、恐いのよねー。シックスティーズは老舗だからさー。貫録が違うわよ。
    ま、サワの熱狂的な親衛隊さんも恐いけどね。ほ〜ら、私のテーブルでサワが長居してると嫉妬の目がいたぁ〜い」
サ ワ「ハハハ。玲子さんはオレの親衛隊からは一目置かれてるから、誰も文句は言わないよ。オレの経歴長いファンだからね。
    でも何かファン同士でトラブルが起きたら、すぐオレに云ってくれよな。玲子さんはオレが護るよ」
玲 子「サワって男前ェ〜♪ まぁ、小娘ごときにピーピー言わせないけどねー」
サ ワ「うん。オレも玲子さんが親衛隊に負けるとはぜんぜん思ってないけどねー(笑)」
玲 子「君もあんまりオイタしないようにね、サワ☆ 根も葉もない噂話が大好きだからお客同士って。
    ホントに有る無し好きなこというのよ。そうそう、今月はバレンタインだし、色んな噂が飛び交うシーズン到来よ。
    人気のサワは、店に入る前に立ち寄るカフェと、この付近のジムではしっかりウオッチングされてるから、
    くれぐれも行動には気をつけてネ♪」

サ ワ「オッケー。ご忠告サンキュー。だから好きさ、玲子さん。これからもヨロシク。
    二股くらいでやめとくよ。お手柔らかに☆」




photo/R

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