Mr.moonlight
ミスター・ムーンライト

01


登場人物: レイジ/ナルセ/マック
場所:豪の高層マンション部屋




レイジ「これは、Mr.ムーンライトの贈り物かな。
    夢に堕ちたような現実だ……。
    美しい月に、うまい酒、そして横には、おれの最愛のアイドルスター。
    高層のテラス窓からの景観を合わせても、全てが完璧なロケーションだ。
    豪のマンションは、見晴らしも最高だな。良いところだ。
    空きが出たら、おれも買おうかな」

ナルセ「……だろ? アメリカに行ってる間は、俺が留守を任されてるんだ。
    たまには誰かと、このソファで一緒に飲んでいてもいいはずだ。
    ひとりで見るには、もったいない十五夜だからな。綺麗だよな。本当に……」
レイジ「留守を任されてるのに、男を連れ込んでいいのか? ナルセ。
    バレたらタダじゃすまないと思うがな」
ナルセ「レイジなら全然構わないだろ。だって豪はレイジとなら目を瞑るって、
    覚悟を決めて出国したんだからな。どうなろうが、自業自得さ。
    レイジはさ、これから俺とヤバイ展開になりたいと、思ってる……?」
レイジ「ナルセ……。イケナイ子だな。どうして欲しいんだ?
    そんな声で囁かれたら、こんな月夜に、変身しない狼は皆無だ」

ナルセ「レイジ……、俺……」


マック「
ちょっと、ちょっと!! お二人さーん。
    俺がいるってこと、忘れてないか? マックさんも、いますよー
    見えてますかー? ここですよー 背が低いからって舐めんなよ」

レイジ「なんだ。いたのか、マック」
マック「いたよ!! なんで俺がツマミを作ってる間に、二人でいいムードに
    なってんだよ?! ふざけんな、レイジを誘惑すんなよ、ナルセ!」
ナルセ「冗談に決まってるだろ。妬くなよ。それにレイジはお前のじゃないだろ。
    それともレイジは、もうマックのものなのか?」
レイジ「コイツの所有物になった覚えはないよな」
ナルセ「ほらな。だってお前は片思いなんだよ、マック。残念だけど。
    お前はしょせん、俺の代わりだ。可哀想にな、フフン……」
マック「なんだよ。何の優越感なんだよ。ナルセ、お前には豪ちゃんがいるじゃんかよ」

ナルセ「豪がいる? どこに? どこに豪がいる? どこかに隠したのか?
    だって豪なんか、どこにもいないだろ。豪の家なのに、豪がひとりもいない!!」
マック「いや、ひとりもって……。二人も三人も豪は居ないだろ、普通。
    大丈夫か、ナルセ?」
ナルセ「そうだろ。豪はいないんだ。いない。傍にはいない。もう、耐えられない。
    大丈夫じゃない。俺は寂しくて寂しくて、死にそうだ。月の兎だって、寂しいと死ぬに決まってる。
    月で兎は瀕死の重体だ。そんな月を見ていたら、哀しくなってくるだけだ……
    アメリカに行きたい……行って良いか? シックスティーズ、休んでいい?」
マック「ダメだって!」
レイジ「ダメだな」


ナルセ「なんだよ、二人してハモるなよ。酷いな。俺が可哀想だと思わないのか?」
マック「だから二人して、ヤケ酒につきあってるだろ」
ナルセ「そんなの頼んでない。だいたい、なんでお前が居るんだよ?
    寂しくてレイジを誘ったら、もれなく金魚のフンマックもついてくるし、
    豪の電話は繋がらないし……俺は、もう……最悪、だ……よ…… クゥ……」

マック「ナルセ? もしもし? 死んだのか?」
レイジ「殺すな。寝てる。酔い潰れただけだ」

マック「マジでか。メシも食わないで、飲み続けるからだ。
    だからちゃんとしたツマミ、作ってやってたのに。おーい、ナルセ。食えよー!」
レイジ「無駄だ。ストレスが溜まると、ナルセは食えなくなるんだよ。
    相当、参ってるんだろうな。可哀想に」
マック「こんな酔っ払い方をするナルセは、初めてだよな。
    明日のステージは、こんな調子で大丈夫なのか?
    ナルセの泣き言なんて、今まで聴いたことない」

レイジ「そうでもない。ナルセは、豪のことになると、大抵こんなだよ。
    ステージにはきっちり立つが、降りたら硝子ちゃんなんだ。
    いつも可愛く泣いて、俺の気を引こうとする。
    おまえが居なきゃ、朝まで寝かさないで慰めてやれるのにな。
    何でおまえ、来たんだ?」
マック「二人きりにできるか。くっついて来て悪かったな。せめて肩でも貸してやんな。
    肩だけだからな。もちろん俺は、横にお邪魔しますけどね。よっこらしょ……。
    うわ、このソファ、良いクッションだな。わはは、極楽、極楽。
    それにしてもデカイよなぁ〜。男三人座っても余裕のサイズって、
    これさー、絶対、このソファで、……ヤッてるよな? だろ?」
レイジ「そりゃ、ヤッてるだろうな。そのためのソファサイズだろ」

マック「だよなー……。豪って意外とえっちそうだよなー。な、レイジ?」
レイジ「はぁ? なに云っ…… ! 」

マック「レイジ……」
レイジ「……ッ…… ン………… 」




レイジ「なんだよ、突然……。ナルセが横にいるから、興奮したのか?」

マック「した。かな。ちょっと、スリリングな気持ちだよ。
    ナルセは寝てる。レイジと二人きり。月夜の晩。ほろ酔い気分。
    刺激的な月光の差し込む高層の窓辺、キスもしたくなるってもんだろ。
    それで極め付け、ひとん家のリビングの豪とナルセがセックスしてたであろう、
    ふかふかのソファだ。……なぁ、このまま、ちょっと、俺たちもしてみねぇ?」
レイジ「はぁ? するって、何を? まだキスしたいのか?」
マック「そうじゃなくて、さ。ええと、ヤベェ、興奮してきた……デニムがキツイ」

レイジ「おまえ、そういう趣味があるのか?」
マック「いや、無いつもりだけど、なんかこう、ムラムラっとね。なるんだよな。
    下だけ、ちょっと解放しようかなって……」
レイジ「バカ、なんて恰好してるんだよ、おまえ、露出狂か?
    ちょっと待て、おれはナルセが横にいるんだ、この体制で、できるかよ」

マック「じゃ、俺に乗っかれば? ならできるだろ? ちょっと下だけずらして、
    腰を……浮かせたらできるさ。来いよ、レイジ」

レイジ「……できるか?」

マック「ちょっと半裸ってエロいよな……」
レイジ「下半身出しがエロいか? 滑稽だろ。変態の域だ。おまえの美意識はオカシイ」
マック「いや充分、レイジはエロいよ。エロシチズムだよ。インモラルだ。危険な情事だ。
    なぁ、レイジ…… 俺のを、挿れてくれよ。もう、漏れそうだ、はぁ……
    レイジ、頼むよ…… これ、生殺しだ」
レイジ「漏れそうじゃなくて、漏れてるぞ。マジか、おまえ。完全に、眼つきが変だぞ。
    月のせいで、おかしくなったか? もうそんなサイズになってるんじゃ、
    おれに入らないだろ。この体制じゃ、先だって無理だ…… ん……ッ…… 
    ……やっぱり、無理だ。もう少し……、下…… 腰を、抱いてくれ……」
マック「レ、イジ…… もももう、ダメだ。な、入ってるフリでいいから、な……
    もう、ムリ、たまんねぇ…… 心臓がヤバイ……ああああ、」
レイジ「……ア ッ、そんな動くなって、おかしな気分に、なる、だろ……
    マック…… アッ……」



ナルセ「あのな」

レイジ「うわッ!! ナルセ!!」
マック「うわー!! ナルセ?!」

ナルセ「嘘だろ。なんてカッコしてるんだよ、二人とも。信じられない。冗談だろ。
    マックはともあれ、レイジが俺の横でインスタントなセックスするような変態だったとは、
    信じられない。ジョークにもほどがあるだろ……呆れて絶句だ」
レイジ「や、なんだ、その、誤解だ、ナルセ。アレだ、つまり―――ええと、
    クソ、……おまえが釈明しろよ、マック、この状況の責任を取れ」
マック「マックはともあれって、どういう意味?」
レイジ「そんなこと、訊いてないだろが!」

ナルセ「もういいよ。分かった。察したよ。
    レイジが冷静さを忘れるほど、そんなにマックを好きだったなんて知らなかったよ」
レイジ「違う! これは、だから、ちょっとしたインモラルなゲームで、だな……じゃない、
    いや、こんなところで、やることはないんだが、なんて云うか…… 悪かった」
ナルセ「悪かった? レイジが言い訳を思いつかないのは、初めてだよな、きっと。
    もっともこれじゃ、間抜け過ぎて言い訳ができる状況じゃないけどな。
    そうだ、この際だから、三人でしようか? マックはやったことある?」

マック「ええッ!! さ、さんぴーデスカッ?!」

レイジ「何を興奮してるんだ。おまえ、ナルセとしたいのか?」
マック「イイイいいえ!! そんなわけあるわけないじゃないですかァ!
    おいらは、堅物な男ですたい。そんなん、興味、ぜんぜんなかと!」
レイジ「……本当か? 怪しいな。どさくさで狙ってたんじゃないだろうな。
    どうでも良いけどおまえ、いい加減、ソレをしまえよ。本当のバカに見えるぞ」
マック「おお。ホントだ。どうりでスースーすると思った。チンコのこと忘れてた」
レイジ「バカなのか。本当にバカなのか」
マック「いつも二回云うの、やめてくれませんか?」


ナルセ「二人で続きをしたいなら、どうぞ? 3Pなんか、冗談に決まってる。
    どうせ三人でしても、俺なんか無視して、二人だけでイチャイチャするんだろ。
    さっきみたいにな。そうに決まってる……」
レイジ「イチャイチャなんか、してないぞ」
ナルセ「してたよ。ぜんぜんしてただろ、レイジ。あんな恰好してて、言い訳できるのか?
    俺が寝てるのをいいことに、マックと濃厚な長いキスをしてたよな?
    そのあと、騎乗位で性交する気だったよな? このソファの上で!!
    おれが寝たふりを続けてたら、最後まで隣でしてただろ?」
マック「んー、あともう少しだったんだけどな……」
レイジ「マック!! だから、してないって!」


 豪 「ひとの家で、いったい何をやってるんだ?」



photo/ako

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