Little Devil
登場人物： リ ン／鏡 夜
場 所：ピアノ・マン
０４
リ ン「ハロウィン・パーティ？ ピアノマンで？」
鏡 夜「はい。海外のお得意様主催のシークレットパーティなんですが、
ぜひともセブンレイジィロードの方々を招待して欲しいと云われてまして。
みなさんで来て頂けますか？ 時間はそちらのステージが終わってからになりますので」
リ ン「行く行く！！ 行くに決まってるよ！ みんなで来ていいの？
だけど何で俺達？ あ、それとも出演依頼かな。ステージをやるとか……」
鏡 夜「いいえ。そうではありません。
セブンレイジィロードの皆さんには、客人として楽しんで頂きたいんですよ。
以前、シックスティーズで皆さんの演奏を聴いて、とても気に入られたそうです」
リ ン「へぇー、そのお得様って誰？ 海外の会社のひとなの？」
鏡 夜「それはシークレットなので申し上げられません。すみません」
リ ン「ほほう。ま、どうせ聞いても俺らには解らないけどな。どっかのセレブなんだろきっと。
レイジがたまに連れてくる、その時の誰かなんだろうね。とにかく光栄だ。
みんな喜ぶと思うよ。ご招待ありがとう。当日、主催者にお礼くらいは言えるのかな？」
鏡 夜「そうですね。ただし、すべてのお客様には名前を秘密にして頂きます」
リ ン「名前を云ったらダメなの？」
鏡 夜「はい。自己紹介も他者紹介も、可能なのは本人の肩書のみです」
リ ン「肩書？ 何々会社の課長です、みたいなの？」
鏡 夜「ええ。リンさんならシックスティーズのドラマーだとおっしゃって下さい。
職種がはっきりしていた方が、話し相手としてもすぐ打ち解けられるし楽になります。
時間をかけて気の合いそうにない人物と話す時間は、無駄で勿体ないでしょう？
親しくなれた方との名刺交換は、最後の別れ際ににして頂いても構いません」
リ ン「ふうん。ちょっとビジネス的なパーティでもあるんだな？
それで、やっぱり仮装はして行くのかな？」
鏡 夜「マスカレードパーティになっていますので、入口でお渡しする仮面をつけて頂きますよ」
リ ン「え、仮面をつけるの。お互い顏も分からないんだ？ ますます面白そうだなぁ♪
リンくん、そういうの大好き♪ あ、でも危ない系のパーティじゃないよ……ね？」
鏡 夜「もちろん違いますよ。ピアノマンはドラックは禁止ですし、今回のはその他の類のでもありませんよ」
リ ン「その他、ってのがあるんだ。怪しいよね……その他って、色っぽい系とか？」
鏡 夜「そういうパーティにご興味がおありですか？ 一度、ご案内しましょうか？」
リ ン「いやいや、まさか。やめとくよ。聞いたらもう引き返せない世界とか、嫌だからさ。
マックじゃないけど、ちょっとピアノマンやレイジは危険な匂いがするしね……」
鏡 夜「賢明ですね。リンさんは、健全なままでいて下さい。あなたと話しているとほっとします。
私もその方が、ずっとこうして楽しく他愛のないお喋りが続けられますから」
リ ン「何かさらっと恐ろしげなことを云ったね？ 茅野さん」
鏡 夜「リンさんだから云いますけど――――。
世の中には知らずにいた方が良いという世界があります。
もしも知ったなら、忘れて深入りはしないことです。踏み入れてしまったなら、後戻りはできません。
……なんて、ほんの冗談ですけど(笑)」
リ ン「いやいやいや〜！ 茅野さんが云うと、ミステリすぎてジョークに聴こえないよね！！」
鏡 夜「そうですか？ 本当に冗談ですよ。本気にしないで下さい。
いかがわしいことは、ピアノマンにはありませんよ。
オーナーは古いものを扱っているし、店が高級なので他所では少し妙な噂はありますけど、
それは噂です。この店はクリーンですし、裏の仕事は変な仕事ではありません。
扱ってる内容が、ただ耳慣れないだけなので、オーナーは裏と表現しているだけです。
後ろ暗いことなども何もないですから、どうか安心して下さい」
リ ン「うん。そう思ってるけどね……。仕事の話はどう聞いても分からないからさ。
レイジも本当は誰かが思ってるような、暗黒街の顔役じゃないと信じてるよ」
鏡 夜「暗黒街の顔役ですか？ 本当に楽しい想像をするひとですよね、マックさんは。
ぜひ、セブンレイジィロードの皆さんでいらして下さいね。
この招待状を、それぞれの方に渡して頂けますか？ 人数分あります。
中にも記載してありますが、パーティの必須ルールは二つだけです。
名前を云わぬこと、そしてマスクをつけることです」
リ ン「分かったよ。みんなに渡しておくよ。楽しみだなぁ♪」
鏡 夜「では、お待ちしておりますね。愉しいハロウィン・ナイトを――――」
photo／Ｒ
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