恋はみんなのもの
07


登場人物: レイジ/マック
場所:マックのマンション







レイジ「あっはははは、そいつはケッサクだったな。礼をしたいってか、豪が?」

マック「何で笑うんだよ。ウケる話、ひとつもしてねぇんだけど、俺」
レイジ「ウケるだろ? おまえの空気読めないMCより、よっぽどウケるし、笑えるな。
    あの荒野の豪をそこまで怒らせるなんて、前代未聞だ。ナルセに何をしたんだ、おまえ」
マック「何もしてません。するわけねーじゃん!! ナルセがふざけてたんだ。
    なのにいきなりボディ・ブローだぜ? 内臓破裂で死ぬとこだったわ。
    何が荒野の男だよ。めちゃめちゃあっつい情熱大陸男じゃんかよ」
レイジ「大袈裟だな。そんなにすごいパンチだったのか?」

マック「マジ、ボクサーかっての。重々しいパンチ出しやがって。ギタリストの癖に拳、大事にしやがれってんだよな。
    本当にミュージシャンか、あいつ? あっちでNYギャングにでも入信してたんじゃねぇのかよ」

レイジ「でも大したことなかったんだろ? 元気そうじゃないか。本当に食らったのか? 見せて見ろよ?」
マック「大したことないって? 見てくれよコレ! 青たんだよ! 酷いだろ?!
    運よくこの鍛え上げられた鋼鉄の腹筋に命中してなかったら、ナルセのイカレタ彼氏はお縄になって、
    今頃は刑務所の檻の中だぜ?」
レイジ「確かにひどい痣になってるな。痛むのか?」
マック「痛いに決まってるだろ! ひどい打ち身だよ。内出血なんだ・・・・あいたたたッ、痛いって、レイジ!
    触らないでくれ、めっちゃ痛いんだって……なんか去年からこんなんばっかだな」
レイジ「もろに喰らうとは情けないな。ケンカ慣れしてるんじゃなかったのか、やんちゃなボウヤは」
マック「そんなん若い頃の話ですよ。暴力反対。平和な世の中、万歳。
    ボカァ、今はステージライトにしか当たってない、色白ヒョロっこのモヤシくんなんですよ」
レイジ「・・・ふーん。もやしクン、ね」

マック「こんな暴力沙汰、まっぴらだよ。去年はビール瓶で殴られるわ、今年は早々、ボディブローだわ、
    ナルセに関わるとロクなことにならねぇよな。つーか、ビール瓶のはナルセを庇って出来た傷なんだから、
    俺は彼氏に礼をされるなら、本当に菓子折り持ってくる方のやつなんじゃないのかよ? ほんとに。
    なんなんだ、この仕打ち。マジ、ハラタツよな、あのヤロー、やっぱ殴り返せば良かったかな」
レイジ「まぁ、しょうがない。おまえはナルセと寝たんだから、寝取られた恋人が報復したって、道理じゃないか」
マック「そうだけど……そんなん、当初は知らなかったし……」
レイジ「ナルセがフリーだと思ったか?」
マック「・・・・・いえ思っていません」

レイジ「だったら、確信犯だよな」
マック「ちえ……。腹立ったんだろうな、彼氏。まぁ、殴りたい気持ちもわかるよな……。
     レイジのことに関しても、なんだか怒ってた様だったし、俺は何にしても悪者扱いだよ」
レイジ「豪は今までナルセの浮気には放任で、黙って目を瞑ってたんだ。その度に幾度も別れたりはしてたけどな。
     だけど、ナルセが真剣に浮気をやめて、考え方を変えた直後だったから、つい抑えきれなくなったんだろう。
     いつもはドライで、いぶし銀な男なんだぜ、豪ちゃんは。許してやれよ。恋の成せる仕業だ」

マック「・・・この間の乱闘があったときに、リンから少し聞いたよ。リンがその昔、乱闘大好きだった頃、
    よく客と揉めては豪に止められてたってさ。手を掴まれたら、鉄扉みたいにビクとも動かないんだって言ってた。
    で、冷静になれって、低い声で言われてスッと血の気が失せたってな。本当に強い奴は、あんまり騒がないよな」
レイジ「そうだな。強さをあからさまに見せつける奴は、たいてい根は臆病者の小者だ」
マック「だから俺は殴り返さなかったぜ? まぁ、ナルセと寝たのは事実だし、これで貸し借り無しかなと思ったんだけどな」
レイジ「借りができた筈だぜ、豪にはな。ナルセをビール瓶から守って貰ったんだからな」

マック「ナルセはうちのボーカルだから、死守するのは当たり前だろ。それに関しては、あいつには関係ないよな。
    シックスティーズでのセブンレイジィロードのバンド問題だからな。ナルセの彼氏でも部外者だよ。
    菓子折り持って来たら、もちろん遠慮しないで頂きますけどね」
レイジ「お、カッコイイねぇ。豪には関係ない、ときたか。さすが、歌姫も守っただけのことはあるな」
マック「……なにそれ?」

レイジ「言ってたぜ、あのとき。泣き虫歌姫がタクシーの中でな。
     私がトロくさかったから、マックさんの後ろに隠れちゃったんですってな。頼りにされてたんだな。
     だから、おまえはビール瓶を避けられなかったんだ。カッコイイな、ベースマン? さりげなくお姫様のナイト役か」
マック「まっさかー。ハハハ、それは大きいな誤解ですよ。メリナが後ろにいたなんて、全然知らなかったからな。
     あいつ、そんなふうに思ってるのか? へぇー。そりゃ良いこと聞いた♪ 恩着せがましく何かタカろっかな」
レイジ「あのお嬢ちゃんは、おまえが好きなんだな」
マック「まぁ、嫌われてはいないと思うけど、そういう好きかは知らないな。メリナは妹みたいなもんだし。
     でもレイジと会わなかったら、あるいはそういうことも、そのうちにはあったかもしれないけどな」

レイジ「そうか……。マックさんは意外と、おモテになるよな。口は悪いけど優しいし、面倒見がいいからだな」
マック「優しいとか言われると照れますけど。でも意外は、余計だよ。ちゃんとそれなりにモテてますぅ。
    きっと今日のバレンタインだって、俺もチョコのいくつかは貰うと思うよ♪ ナルセには負けるけど」
レイジ「チョコなんか貰って喜んでるあたりがカワイイよな。貰うものの格が違う、ナルセとは。
    ナルセがいつも貰うのは、高価なワインか、仕立てのいいスーツか、ネクタイだ。時計やアクセサリーもあるな」
マック「オーナーさんも、そういうの渡してたんだろ。前にあんたに貰ったネクタイを自慢してたぜ、ナルセのヤツ」
レイジ「そうでもない。当時、ナルセに会った頃の俺は、ただの平凡なサラリーマンだったからな。
    金もないし、プレゼントなんか何もしなかった。ナルセくらいの格になると、俺が買える値段のものなんか、
    逆に恥ずかしくて贈れない。でも何も貢がなくても、ナルセはおれを相手にしてくれたんだ。嘘みたいだった。
    おれは憧れのボーカルとキメられて、夢中になってたよな。ただ、あのナルセと寝れたことが夢のように幸せだったんだ……」

マック「・・・いいな。そんな目で、俺も早くレイジに見つめられたいよ。どれくらい先になるかな」
レイジ「――――おまえは、百年早い」
マック「わかってますぅー。でも、俺だってコトの最中だったら、ぜんぜんレイジを潤んだ熱っぽい瞳にできちゃうからなッ」
レイジ「できるのか? 今夜、その腹で? 内出血が広がるぜ?」

マック「・・・・・・・・無理、かな?」
レイジ「無理だろ。腹筋に力を入れたら相当、堪えるはずだ。
    だいたい、そういう打ち身は冷やす方がいいんだ。暖めると逆効果だからな。今夜は諦めろ」
マック「せっかく、レイジが来てくれたのに……。バレンタインなのに。ナルセの彼氏、怨みたくなってきた。
    今頃、あっちは相当熱くなってるんだろうなぁ。俺はなんで、腹をさすって、こうなんだよ・・・」
レイジ「そんなにしょげるなよ。そんなにイキたいなら、イカせてやろうか? おまえはじっとしてればいいんだ」
マック「!? そんなきわどいサービスされたら、余計コーフンして、悪化する!! やめて!!」
レイジ「なにもキワドイことをするとは、言ってない。普通のだ。おまえ、どんだけエロ脳妄想なんだ?」
マック「レイジにされたら、何もかも、俺には際どくなるんです」

レイジ「バカじゃないのか」
マック「バカなんですよ。俺はすっごく浮かれてるんだ、去年のクリスマスからずっとだよ。
    俺がイベントを一緒にしたことないって言ったから、レイジは大晦日も正月も、バレンタインもこうして来てくれたんだよな。
    レイジと一緒に居れる時間が多いだけで、舞い上がっちゃって、ふわふわして、リアリティがない」
レイジ「・・・何でだ」

マック「なんでって。そんなの、わかるでしょ。いや、レイジにはわかんないか」
レイジ「わかるよ」
マック「ホントに? 俺のこんな気持ちがわかるって? 俺さ、すっごい長く待ったんだぜ。
    今も、茅野にレイジが何も言ってないなら、実はこれは無しでしたって、ドッキリだったらどうしようって、
    ドキドキもしてる。レイジに騙されてるかもしれないけど、でもそれでもいいやってくいらいの気持ちなんだ」
レイジ「おまえを騙して、おれが得することは何もないよな。そんな冗談は何の意味もない。
    おまえとセックスできるってことだけなら、今まで通りの関係でもいいんだからな。
    鏡夜の機嫌を損ねることを云わなくて済むならそうしたい。……鏡夜に話してないことが、気になるか?」

マック「気にならないと言えば、ウソになるけど、だけど……それだけ、云いにくいことなのかなとは、思ってるよ」
レイジ「そうだな。言いにくいな。思った以上に言い辛い。どんな顏をして言えばいいか、解らないんだからな。
     途方に暮れるという表現がしっくりくる難解なレベルだ。こんなのは、前例がない」
マック「やっぱ、俺が茅野に言う?」
レイジ「ふざけろ。結婚を申し込みに来た娘の彼氏みたいなふざけた真似をしたら、即、別れるからな。
    これは、おれの問題なんだ。悪いが、おまえには関係あるようで、関係ないんだ、マック」
マック「・・・・・そうなの……」

レイジ「そんな悪いことをして怒られた犬みたいな顏をするなよ? こっちが罪悪感を覚えるだろ。
         関係ないは言いすぎた。おまえありき、だからな。悪いアタマを撫でたくなるから、そういう顏はやめろ」
マック「ワン。遠慮しないで撫でればいいのに。ワタシはあなたのものです、なんちゃって。
    まぁ……云いにくいなら言わなくてもいいんだぜ。本当に。俺とだけ寝てくれなんて言ったけど、
    結局、俺はレイジと離れずに済んで、レイジが俺以外とは寝ないってちゃんと言ってくれたことが、
    俺はメチャメチャ嬉しかった。それだけで安心できたし、充分だよな。あんたはいっぱい譲歩してくれてる。
    ……レイジ……、レイジを独り占めできる時間が、俺には一秒でも一呼吸でも、大事なんだ……」

レイジ「一秒なんかでいいのか?」
マック「じゃ、朝まで夜が明けるまで……だな」
レイジ「マック・・・・おれをその気にさせたら、中途ハンパでは止められないぜ?
    いいのか。青あざが広がっても、知らないからな」
マック「これくらいのダメージでリタイヤしてたら、茅野に速攻、レイジを返せって言われそうだ」
レイジ「バカじゃないのか」

マック「・・・・バカなンだよ。恋なんて、そういうもんなんだ。いくつになっても。
    あんたには、どうせわかんねぇと思うけど」
レイジ「わかるって、おれは言ったよな? おれが一回言ったことは理解して、覚えろよ。
    おまえは、おれが昔飼ってた、覚えが悪いバカな駄犬と一緒のレベルだ。
    いつまでも、尻尾を振るだけで、ちっともおれの言葉を覚えない」
マック「だけど、可愛いってこと?」
レイジ「そんなこと、言ってない。おれはわかると、言ったんだよ、マック・・・・
    シックスティーズの歌にありがちな、バカみたいな安っぽい歌詞を思い出すよな。
    まぁ、いい。これ以上はおれのアイデンティティ喪失に繋がる。
    おまえのその鈍感さは、ジュウリの上を行くだろうな。駄犬のおまえらしくて、いい」

マック「・・・・・・えっ ソレ、どういう……意味ワン? (・.・;)」









♪恋はみんなのもの
(コニー・フランシス Love is me,Love is you)


素敵な恋をしましょう 心がけ次第
どなたにでも出来るのよ 素晴らしい恋が


胸は火照り 甘く燃えて
思い悩む これが恋よ


素敵な恋をしましょう バラ色の恋よ
恋をすればどなたでも 美しくなるわ


胸は火照り 甘く燃えて
思い悩む これが恋よ


素敵な恋をしましょう 世界一の恋
どうせするなら誰にも負けない恋よ


胸は火照り 甘く燃えて
思い悩む これが恋よ


素敵な恋をしましょう 終わらない恋よ
世界中が恋をすりゃ いくさなどはない


胸は火照り 甘く燃えて
思い悩む これが恋よ


胸は火照り 甘く燃えて
思い悩む これが恋よ





http://www.youtube.com/watch?v=KK_ueHsIvnw
(※曲を聴きたい方はコピぺして下さい 参考まで)

 ** END **
参考:咲子の妄想ライブ日記2014-02-02&2014-02-15