Smoke Gets In Your Eyes
煙が目に沁みる

01




街のショップウィンドウは、クリスマス仕様の飾り付けだらけ。
空気が冷えきった外から覗くクリスマスの窓は暖かで明るく、
店内はすっかり冬装束のお洒落な女性で込み合いはじめていた。
ちょうど時刻はアフターが始まったばかりの金曜日。

そんな中を、お洒落もせずに俺は今から出勤タイムだ。

重たいベースを背負ったくたびれた男などまったくの場違いで、足早にその窓から離れて進む。
なのにどんなに急いで歩けども、行く先のあらゆる窓は次々とクリスマスまっさかりだ。
そもそもハロウィンが終わった次の日からすぐこの街にはクリスマスがやって来ていた。
都会は気が早い。猛スピードだ。それにしても速い。早すぎる。
気のせいか段々早くなる気がする。毎年。そう思うのは俺だけ? 歳なのか?
どうしてそんなに皆、早々に浮かれてるんだ?
秋の立場くらい肩身の狭い惨めな俺の呟きは元気な女史たちの声に掻き消され、
羨ましげに窓の装飾を眺めながら、諦めてゆっくりと歩く。

ふとアンティークを扱っているらしい店で、センスのいいランプが目に入った。
立ち止まって見つめる。急にレイジの家で見たランプを思い出した。
ステンドグラスの傘がついた小ぶりのランプ。
ランプの灯りってなんだか暖かいよな。
あれを見たのは、いつだったのかな。
随分、昔のような気がする。

レイジ。

まだ、レイジと会えた頃―――。なんだか懐かしい……。









photo/真琴さま

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