クリスマス・キャロル
ピアノマン」にて
登場人物:レイジ/アキラ/ナルセ/
他セブンレイジィロードメンバー


レイジ「ラーラーララララー♪ラーラーラーラー♪
     ラーラーララララーラーラー…ラ…」

アキラ「それアメイジング・グレイスですか? もしかして」

レイジ「そう よく分かったな レイジさまの音痴は有名なんだけど」
アキラ「音痴でも ピアノって弾けるんですね」
レイジ「嫌味だねぇ アキラくん
     ところで 細かい話で悪いけど 今日は店やってないんだがね
     煙突もないし 一体どこから入ったんだキミ?
     サンタさんならプレゼント持って来てくれたんだろうな?」
アキラ「サンタにモノねだる歳じゃないでしょう
     まぁちょいとって とこですね 裏技です」
レイジ「不法侵入だな 警察に突き出されたくなかったら
     オレとデートしなさい」
アキラ「いいんですか 警察が来て嫌なのはレイジさんの方でしょう」
レイジ「随分嫌なこというなぁ
     おまえ ナルセに似てきたぞ」

アキラ「レイジさん こんな日に店を閉めるなんて 正気ですか?」
レイジ「オレらしいと思うけどね」
アキラ「そうですね でもらしくないとも言えますよ」
レイジ「何故? クリスマスの飾り付けが完璧にできた店内で
     とってもムーディな明かりに照らされて
     ひとりぼっちのクリスマス・イヴ・ナイトだ 
     ただもう深夜2時だから25日だね メリークリスマス!アキラ」
アキラ「ちょっと酔ってますね?」
レイジ「うん シャンパン空けてね クリスマス乾杯だ」
アキラ「誰もいないのに?」
レイジ「ユーレイが来てるかも お化けのキャスパー
    それとスペシャルゲストに ミスターキリスト&マリア様だ」
アキラ「…幽霊って 亡くなったピアノマンのオーナーのことなのかな」
レイジ「! …ナルセだな アイツ 人の秘密をベラベラと」
アキラ「え 秘密だったんですか? すいません…」
レイジ「いや秘密じゃないよ 今じゃそういう話題は滅多に出ないってだけで
     話したのがナルセならいいさ オレだってあいつのプライバシーは
     あることないこと誰にでも喋っちまうからな
     だからあいつもオレのことを 何でも暴露していいって協定があるんだ」
アキラ「協定ですか」
レイジ「そう ナルセは知らないけどな オレが勝手に決めただけ」
アキラ「それって協定っていいませんよ」
レイジ「いいのさ ナルセのプライバシーに
    オレがズカズカ入ってるのは 事実だ」
アキラ「それ ナルセさん凄く迷惑してますよ」
レイジ「うん 分かってる 手酷くなじられて文句を言われるのが 快感だ」
アキラ「…屈折してますね あの 問題なければ
     オーナーさんの話をレイジさんの口から聞いても いいですか?
     詳しくは 聞いてないんです俺」
レイジ「何を聞きたいんだ? 興味があるのか? いいぜ どうぞ?
     そういえばオレは最近ちょっと 疑いをもってきたんだ」
アキラ「疑い? 何のですか?」

レイジ「本当にアイツは 死んだのかなって さ」

アキラ「!」

レイジ「もしかしたら まだどこか異国で記憶を失って 生きているかもしれない」
アキラ「待ってください…
     遺体を オーナーの遺体を見たわけじゃないんですか?!」
レイジ「…秘境にお宝を取りに行って 事故にあって死んだ
     で 現地で火葬されたんだ 返ってきたのは 骨だけだった」
アキラ「そんな…」
レイジ「だけど今思うと 本当はアイツの骨じゃなかったかもしれない」
アキラ「その確率はあるんじゃないですか? DNA鑑定とかしたんですか?」
レイジ「しなかった あの時は 動揺していたしな なるほどDNA鑑定か…
    年が明けたら 墓参りついでに墓を暴いて骨を盗んでこようかな
    それで 鑑定すれば はっきりするだろ
    ボーンズって海外ドラマで 死体の事故原因を調べる為にも墓を暴いてたし
    骨ってのは雄弁に喋るらしいぜ 笑うシャレコウベって昔話もあったよな?」
アキラ「墓を… 本気ですか?」

レイジ「バーカ 本気なわけないデショ?
    ピュアピュアちゃんだねぇ アキラは
    そこまでは いくら変人なオレでもしないだろ
    でも ただな このシーズンになると

    そう 思うのさ

    何でかなぁ

    神様に 手が届くと

    思うのかな… 本当にね」


アキラ「レイジさん…」

レイジ「ふふん なーに湿っぽくなってんだよ!
    冗談だよ冗談!!
    何? アキラはクリスマス・イヴに店を閉めてるオレを心配して
    慰めにきてくれたのか? なんとおまえは優しいねぇ
    見習えナルセといいたいぜ よぅし
    それじゃあ二人で クリスマス・ナイトコースといきますか
    もちろんコースの最後はベッドでネ♪ 最初でもイイけど」
アキラ「残念ですけど…それはありえませんね 実は…
    ここに来たのは 俺だけじゃないんですよね
    表で待ってるんですけど… ある意味 俺はサンタですよ」
レイジ「はぁ? 待ってる? ナルセか?」
アキラ「レイジさんがこんな日に店を閉めてるって
    ベースのナオトさんが お客さんから聞いて
    みんながそれは変だって 楽屋でちょっとした騒ぎになったんです…」
レイジ「みんな?」

アキラ「だから店が終わってから 有志で来たんです 
    ここの ピアノマンの店の鍵は ナルセさんが合鍵で開けました」
レイジ「…ッたく なんなんだ一体 オレは今夜ひとりで過ごしたいんだがね」
アキラ「豪さんだって 来てるんですよ」
レイジ「結構 あんなの全然来なくていい」
アキラ「でも…ヘミさんも来てますよ 今日のドレスは
    真っ赤なイブニングドレスで すごく綺麗です」
レイジ「何してるアキラ 是非みなさんに入って頂きなさい」


☆☆☆

ナルセ「メリー・クリスマス!レイジ!」

リ  ン「レイジ!クリスマスの飾りつけを手伝わせといて
     店を開けないってのは どういうことだよ! ふざんけんなよなぁ!」

ナオト「そうそう 俺たちさっきまでクリスマスライブで もう性根尽き果ててんですよ?
    一番高いシャンパンを もちろん開けてくれますよね?」

豪  「…俺は ついでに来ただけだ」

ジュウリ「ねぇレイジ 食料の仕入はしてあるんでしょ!
     厨房借りるわよ 美味しいピザを教えてもらったのよ
     試食してみてよね?」

ヘ ミ 「レイジ その手を離さないと ヒールで踏みつけるわよ」



アキラ「あっという間に 賑やかになりましたね」

ナルセ「こんな夜に ピアノ・マンを貸切とは贅沢だな」
アキラ「でもナルセさんは 豪さんと 二人きりでクリスマスを
     今夜は過ごしたかったんじゃないんですか?」
ナルセ「うん? いいさ別に こんなことはあまりないからな
     豪だってレイジがクリスマスイブに店を閉めてるって聞いて
     あれでも結構心配してるのさ」
アキラ「でもレイジさんは 豪さんの恋敵でしょう」
ナルセ「豪の恋敵だって? アキラの恋敵にはならないのかい」
アキラ「…からかわないでください 本気にしますよ」
ナルセ「豪は見てたんだよ 知ってるんだ
     レイジが ウツになってた時のことをね」
アキラ「それなんですけど…
    オーナーの遺体 確認したわけじゃなかったんですね
    でも だったら もしかしたら
    生きてるかもしれないじゃないですか」
ナルセ「レイジがそう言ったのか?」
アキラ「ええ まぁ 生きてるかもしれないってのは
    俺の意見ですけど レイジさんは返ってきた骨が
    本当に本物だったかどうか 最近疑うようになったらしいです」
ナルセ「そうか」
アキラ「年が明けたら 墓から骨を堀り出して
    DNA鑑定しようと思うって…冗談でしたけど
    本気かも知れない雰囲気はありましたよ」
ナルセ「あいつなら やりそうだよな」

アキラ「俺 思うんですけど オーナーは何かに巻き込まれて
    表向き正体だけ隠したのかもしれないし…
    記憶を失くして 今もどこかで生きてる可能性ってないですか」
ナルセ「スパイ映画じゃあるまいし」
アキラ「冗談抜きで本当に骨を鑑定してみたらどうですか?
    はっきりさせれば レイジさんも諦めがつくかもしれないし
    今のままじゃ 悔いが残っても当たり前じゃないかな」

ナルセ「必要ないよ」

アキラ「でも」

ナルセ「アキラ
     レイジは 毎年このシーズンになると
     同じことを言い出すんだよ」

アキラ「えっ」

ナルセ「おまえ 担がれたんだよ レイジに」

アキラ「…嘘 なんですか??」
ナルセ「嘘だよ もしくは―――
     レイジは本当に どこかおかしくなってるのか だ
     ま 心配しなくても そのどっちかだから」
アキラ「どっちかだからって そんな暢気な口調で言ってていいんですか」
ナルセ「レイジが普通か狂ってるかなんて 見ため分からないだろ
     だけど レイジは毎年 エトーさんが
     ああエトーさんというのが ピアノマンのオーナーなんだけど
     彼が生きてるかも知れないって 誰かに言い出すんだ
     事情を知らないアキラみたいな誰かにね
     ただ相手の反応を楽しんでるのか
     本気でそう言ってるのかは分からない
     DNA鑑定は 今年のオリジナル脚本だな
     そんなわけで みんなそのことには突っ込まないんだ」
アキラ「遺体は… 見たんですか? 返って来たんですか」

ナルセ「見たよ あいつは火葬場に行っても
     いつまでも焼却炉を見てた
     炉の扉が開くまで ずっとそこを離れなかったんだ
     魂はもう 一緒に焼かれたんだという感じだったよ
     聴いたことある? 焼き場のあの ゴウゴウという音を
     魂も焼き尽くすくらい重くて悲しい音だった
     俺は 生前のエトーさんに会ったことがあるけど
     多分あれは 本人だったと思うよ 彼の親族も来てたしね」
アキラ「そんな…」
ナルセ「確か去年はジュウリが それを聞かされてたな
     棺の中は実はカラだったんだなんて 真顔で言われて
     びっくりしてジュウリのやつ 本気にしかけてたっけ
     人騒がせなんだよ レイジは
     とにかくレイジは毎年そうやって 生存説を作り上げるのさ
     いつも通りからかってるだけ…だと思いたいけどな」
アキラ「からかってるとは 思えませんでしたけど」
ナルセ「それがあいつの手なのさ 騙されるなよ
     嘘か本当か 正気か狂気か 得体がしれない
     そういう奴なんだ レイジは」
アキラ「厄介ですね」
ナルセ「厄介?どうして? レイジは頼れる男だよ おせっかいだけどね」

アキラ「この時期は 神様に…

    神様に手が届くと思うんだって レイジさん言ってました…

    俺 冗談だったとは思えない」

ナルセ「だったら そうなのさ」
アキラ「ナルセさん…?」

ナルセ「そうなんだろう きっと どっちでもいいさ
     俺たちは レイジが必要だし
     ピアノマンはいつまでも レイジにやってて欲しいんだから」






レイジ「キミたち! そんなとこで何を不景気な面してんだ?
     今日はメリー★クリスマス!だよ!
     奇跡があるかもしれない聖夜に☆乾杯!!」

ナルセ「…メリークリスマス レイジ 奇跡に」


☆☆☆☆

アキラ「レイジさん」

レイジ「楽しんでるかい 俺のサンタくん
     みんなが押しかけてくるクリスマス・ナイトも悪くないね
     オレの人徳がモノを言うってワケだ」

アキラ「エトーさんて どんな人だったんですか?」

レイジ「誰ソレ?」




 …いつか そのうち レイジさんが 話したい時に 俺
  ピアノマンのオーナーの話を 聞きたいです

 死んだ人間を思い出せるのは
 生きている人間にしか できない芸当だと思いませんか
 レイジさん

 エトーさんは あなたが生きている間は
 永遠に存在し続けますよね

 会った事のないこの俺でも
 出会わなかった時間を 元に戻せるんですよ
 エトーさんのことは レイジさんを介して
 いつだって
 知ることが できるんですから


 メリー・クリスマス…

 今年は
 神様に祈ってみることにします


 『毎年 貴方の苦しみが
         少しづつでも 和らぎますように…』



☆END☆
photo/真琴 さま (Arabian Light)

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